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夫の億万長者の叔父の子を身ごもって
夫の億万長者の叔父の子を身ごもって
作者: London Bridge

第1章

作者: London Bridge
last update publish date: 2026-09-13 12:28:27

「アルダマ夫人、おめでとうございます。妊娠2週目ですよ」

妊娠2週目……

その言葉が、スカーレットの頭の中で何度も激しくリフレインしていた。妊娠している。自分の体の中に小さな生命が宿っているのだ。だが、その子の父親は、夫ではない。

診察室を出た彼女の手は、検査結果の紙を握りしめたまま震えていた。膝から崩れ落ちそうになり、突然突きつけられた絶望的な衝撃に脳の理解が追いつかない。

4年間付き合った彼氏と結婚して、まだたったの1か月。それなのに、あろうことか結婚当日の夜、彼女は彼の浮気発覚という事実に直面した。彼のスマホには、見知らぬ女との親密な写真が大量に保存されていたのだ。

受け入れられるはずもなかった。胸を抉られるような激痛だった。自分だけを愛すると、生涯の唯一の女性にすると誓ってくれたはずなのに。彼はその約束を、あっさりと裏切ったのだ。

悲しみに暮れた彼女の足は、その夜、会員制のバーへと向かっていた。浴びるようにお酒を飲み、泥酔した挙句、間違ったホテルの部屋に入り込んでしまった。翌朝目が覚めると、隣には見知らぬ男が横たわっていた。

暗がりの中で、その男の顔はほとんど見えなかった。覚えているのは、息が詰まるほどの圧倒的な存在感と、自分を飲み込まんばかりの広大な部屋の記憶だけ。恐ろしさと激しい後悔に苛まれ、彼女は振り向きもせず静かに部屋を抜け出した。まさか、たった一度の過ちで、見知らぬ男の子どもを身ごもることになるなんて、夢にも思っていなかった。

どうすればいいのか、完全に途方に暮れていた。不安と焦燥感に押しつぶされそうで、一刻も早くこの状況から逃げ出したかった。もし他の男の子どもを妊娠したなんて知られたら、取り返しのつかない大騒動になる。

携帯電話のバイブレーション音が響き、彼女はハッと現実へと引き戻された。夫のトビアスからのメッセージだった。

「ハニー、病院の外で待ってるよ。もう終わった?」

スカーレットは画面をじっと見つめた後、携帯をポケットに押し込み、無言でエレベーターへと向かった。

ここ数日、熱っぽくてめまいが続いていたが、ただの体調不良だと気に留めていなかった。だが耐えきれなくなって病院を訪れた途端、この青天の霹靂とも言える知らせを突きつけられたのだ。

建物の外に出ると、真っ先に路上に停められたトビアスの黒い車が目に入った。彼女は深呼吸をひとつして、足早に駆け寄った。

トビアスが車から降りて、ドアを開けてくれた。パリッとした黒のスーツに身を包んだ彼は、憎らしいほどハンサムでスマートに見えた。

「医師は何て?」と彼が尋ねた。もし彼が裏でやっていることを知らなかったなら、その心配そうな声に胸を打たれていただろう。

「別に何でもないわ。ただの胃炎だって」彼女は感情を押し殺した声で答えた。

「だから辛いものは食べるなって言っただろ。少し控えなきゃダメだ。体に悪いんだから。もっと僕の言うことを聞いてくれよ。君が体調を崩すのなんて見たくないんだ」

スカーレットはただ小さく頷いた。助手席に乗り込むと、すぐに微かなフローラルの香水の匂いが鼻をついた。紛れもなく女性物の香りだった。トビアスが芳香剤の類を使わないことは分かっている。つまり理由はひとつしかなかった。直前まで、この車に別の女が乗っていたのだ。

トビアスが手を伸ばし、彼女の髪を優しく整えた。「家まで送るから横になりなよ。僕はそのあとオフィスに戻らないといけないんだ」

「ええ」彼女は短く答えた。

赤信号で車が止まっている間、トビアスは着信音に気づいて電話に出た。

スカーレットが少し体を動かすと、手が柔らかいものに触れた。手を伸ばして引き出すと、それはピンクのシルクのスカーフだった。

その生地を見つめる彼女の目が細くなった。偶然にしては見覚えがありすぎる。トビアスのスマホにあった写真の1枚で、確かにこれを見た記憶があった。

通話を終えたトビアスが、笑みを浮かべて振り向いた。「ハニー、先に君を送り届けたら、僕は――」

「私、こんなスカーフ持っていないわよ、トビアス。これ、誰の?」彼女は言葉を遮り、スカーフを宙に掲げた。

トビアスの目に一瞬だけ動揺が走ったが、彼はすぐに作り笑いでそれを胡麻化そうとした。「あ、それ……さっき乗せたクライアントのじゃないかな? 急いで降りたから落としていったんだと思う。明日返しておくよ。大事なものかもしれないし」

彼が手を伸ばして受け取ろうとしたが、スカーレットはそれをかわした。彼女は喉を鳴らして固唾を呑み、必死に感情を抑え込んで取り乱すのを踏みとどまると、彼の目を真っ直ぐに見つめた。

「トビアス……離婚して。もう終わりにしましょう」

トビアスは呆れたように失笑した。「スカーレット、ただのスカーフじゃないか! 一体どうしたんだよ? なんでそんな大げさに騒ぐんだ? 軽々しく離婚なんて言葉を使うなよ。僕たちが何年一緒にいたと思ってるんだ。いつも話し合って解決してきたじゃないか」

スカーレットは鼻で笑った。まだ嘘をつき続けようとする彼に、呆れ果てていた。「いつまで嘘をつき続けるつもり? 結婚式の夜、あなたが私を置いてあの女のところへ行ったのを、私が知らないとでも思ってるの?」

トビアスは固まり、本気で困惑した表情を浮かべた。「ハニー、あれは急なミーティングが入って……君の誤解だよ。彼女のために君を置いて行ったりなんてしていない」

だが、スカーレットにとってもうどうでもいいことだった。彼は裏切り、そして今、自分は別の男の子どもを宿している。自分たちの婚姻関係は死んだのだ。どれほど修復しようとしたところで、この破綻した関係が元に戻ることは絶対にない。

「これまで一緒に過ごした時間に免じて、穏やかに終わりにしましょう、トビアス」彼女は冷ややかに告げた。

返事を待つことなく、彼女はドアを開けて車を降りた。トビアスは運転席で固まったまま、ハンドルを握りしめる拳の関節を白くさせていた。直後、彼がハンドルを激しく殴りつける重い音が背後から響いた。

彼女はタクシーを拾い、無言のまま自宅へと向かった。リビングに入ると、壁の中央に飾られた結婚写真が真っ先に目に飛び込んできた。二人とも、幸せそうに満面の笑みを浮かべている。今となっては、それは残酷な皮肉にしか思えなかった。

結婚式の夜、彼女はトビアスのスマホで、ヴィヴォリー・タグルという女性との過激な写真を見つけてしまったのだ。たった一度のその出来事が、彼女の世界を完全に打ち砕いた。4年間の誠実な愛が、何の意味も持たなくなった瞬間だった。

スカーレットは床に崩れ落ち、胸を抱きしめながら、これまで溜め込んできたあらゆる痛みを吐き出すように激しく泣きじゃくった。大粒の涙がとめどなく溢れ落ちていく。

床に伏して泣き続けるうちに、時間の感覚すらなくなっていた。後に残ったのは、ぽっかりと空いた虚無感だけ。彼女はもう、何も感じなくなっていた。

その夜遅く、トビアスが帰宅した。スカーレットはベッドの中で彼に背を向け、横になっていた。背後から、彼の手が身体を包み込んでくるのが分かった。彼の手は優しく肩を撫で、ナイトシャツの滑らかな生地の上を滑り落ちていく。

「ハニー、もう喧嘩はやめよう。君と喧嘩なんてしたくないんだ。怒らせてごめんよ。もう二度としないから。愛してる」彼は耳元でそう囁き、頬にキスを寄せた。

スカーレットは身を翻し、彼の手を冷たく振り払った。

トビアスは余裕めかした低い笑い声を漏らした。シャツを脱ぎ捨てると、彼はスカーレットのほうへとじわじわと這い寄ってきた。

「なあ、スカーレット……子どもを作ろうよ。そうすれば無意味に嫉妬することもなくなるだろ? それに、そろそろ僕たちにも子どもがいていい頃だと思うんだ」

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