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012.母と息子

Author: 小嵩 名雪
last update Huling Na-update: 2025-10-23 18:00:40

「あなたが泣く事じゃないわ…寧ろ不甲斐ない親でごめんなさい…」

友莉子と怜は互いに互いを慰め合い、お互いの心が落ち着いた頃、途中で止めていた話を進めた。

「怜…きっと私と慎二は遠くない未来に離婚をするはずよ…いえ…今回は絶対にしてみせる…」

「今回は…?」

怜は友莉子のこの決意に、現在凛に調べてもらっている件が関わっているかもしれないと考え、思い切って正面から聞いてみる事にした。

下手に遠回しに聞いてもはぐらかされてしまう気がしたからだ。

「母さん…その…疑問に思っていたのだけど…」

「なぁに?」

怜は言葉を一度きり、どのように言葉を紡ぐか悩んだ。

そしてそんな怜が言葉を発するのを友莉子は優しい眼差しを向けて静かに待った。

「母さんは父さんと離婚したかったわけだよね?…なのに何で今まで離婚をしようと思わなかったの?母さんはきっと前から父さんの裏切りに気づいていたよね?」

「……」

友莉子は怜の質問にどこから答えようか一瞬悩んだ。

「そうね…私が知ったのは二年前…あなた達が海外に行ってからすぐ後に、梓さんとその娘の彩葉ちゃんが家にやってきて、暫く泊めて欲しいと慎二に言われたの…だけどその前に…梓さんから慎二との…行為の動画が送られてきてね…最初は衝撃だったし、信じないようにしていた…きっと慎二が好きで私に嫌がらせをしているだけだろうと…でも彩葉ちゃんの顔立ちは…本当に慎二にそっくりだったの…」

友莉子は目を閉じながら二年前のあの辛かった時期を思い出す。

「だからこっそり調べたら…出生届けの父親の欄に慎二の名前があった&helli
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