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第565話

Author: かおる
清子の目がかすかに揺れた。

けれど、その視線はなおも明日香の耳元に釘づけになっている。

「明日香さん......

もしよければ、そのイヤリング、少し見せていただけませんか?」

その頼みは、社交の場では明らかに無礼だった。

しかし清子は、もう周囲の視線を気にする余裕などなかった。

明日香はちらりと雅臣の様子をうかがい、彼が特に止める様子を見せないのを確認すると、穏やかに微笑んだ。

「ええ、構いませんわ」

彼女はイヤリングを外し、そっと清子の手に渡した。

清子は指先で慎重にそれを撫でながら、食い入るように見つめた。

翡翠を丁寧に削り出して作られたイヤリング。

繊細な花文が刻まれ、左右の模様がぴたりと対称を成している。

だが、完全なコピーではない――

一つひとつの線が、わずかに異なる職人技の跡を残していた。

――間違いない。

清子の喉が、ごくりと鳴った。

彼女は心の底から、偽物を用意しなかったことを安堵した。

あの夜、仁志が取り出したイヤリングを見た瞬間、これがただの装飾品ではないと悟ったのだ。

翡翠そのものの質も、細工も、どれもが常軌を逸していた。

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