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第581話

Author: かおる
「雅臣、まずは顔を拭いて」

清子が差し出したタオルに、雅臣は首を振った。

「俺は平気だ。

それより、星に渡してやってくれ」

清子の笑みが、ほんの一瞬だけ凍りつく。

けれどすぐに取り繕い、星のほうへタオルを差し出した。

「星野さん、どうぞ。

風邪をひいたら大変よ」

星は淡々と受け取り、

「ありがとう」と短く言って、濡れた髪と頬を拭った。

全身が雨で冷え切っている。

タオルなど、ほんの気休めにしかならなかった。

シートに身を沈めた瞬間、体の芯から寒気がこみ上げ、思わずくしゃみが出る。

助手席の清子が、さも気遣うような声をかけた。

「星野さん、よければ私の上着を貸しましょうか?」

星はふと眉を動かした。

――さっき彼女を見たとき、ワンピース姿だった。

上着なんて着ていなかったはず。

ということは、いま身に着けているのは......

星の視線が静かに清子へと移る。

彼女の肩には、見覚えのある男物のジャケットがかかっていた。

星の唇がわずかに弧を描く。

冷ややかで、ほとんど笑っていない笑みだった。

出会ったときは突然の雨に混乱していて、なぜ雅臣がここにいるのか考える暇もなかった。

だが――こうして見ると、彼は清子とワーナー先生を送迎していたのだろう。

その程度のこと、いまさら詮索する気にもなれなかった。

星は柔らかく言った。

「......そうね。

じゃあ、借りるわ」

清子の瞳の奥に、一瞬、濁った光が走る。

それでも表面上はにこやかに微笑み、雅臣に向き直った。

「雅臣、星野さんが寒そうにしてるから......あなたの上着を貸したいの。

いいかしら?」

「構わない」

彼の短い返答に、清子は作り笑いを浮かべながら上着を星へ差し出した。

「星野さん、こんな大雨の中どうしてここに?

ワーナー先生に会いに来たのかしら?

もしそうなら、私に言ってくれれば良かったのに。

私たち、一応顔見知りでしょう?

ワーナー先生への伝言くらいなら喜んで――

万が一、あなたに何かあったら、ワーナー先生にも私にも責任があるわ」

その言葉に、ワーナー先生がちらりと星を見たが、すぐに視線を戻し、沈黙を守った。

星は静かに口を開く。

「......小林さん。

私とワーナー先生が同じ場所にいるだけで、ワーナー先生に会いに来たって
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