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第823話

Author: かおる
「どうして間違いのすべてをお前が背負って、雅臣だけが綺麗に身を隠していられるんだ?」

清子は、握っていた電話をぎゅっと強く握りしめた。

そうだ。

離婚を切り出したのは雅臣自身で、別荘もアトリエも彼が自分の意思でくれたものだ。

彼が嫌だと言えば、誰も強制できなかったはず。

なのに、今こうして悪名を一身に背負うのは自分だけ。

仁志は続けた。

「清子、Z国を出る前に、一度くらい雅臣に思い知らせてやりたくないのか?

どうせ出ていくんだ。

何を怖がることがある?」

報復――?

清子の血の気が、すっと引いた。

雅臣の権勢は、彼女が敵に回せるようなものではない。

彼女はためらいながら言った。

「星を報復するほうが......雅臣よりは簡単よ。

彼女を狙ったほうがいいんじゃない?」

仁志は言った。

「星のそばの護衛は優秀だ。

俺でさえ近づくのは難しい。

清子、もしお前が彼女への報復に失敗したら、即座に刑務所送りだ。

それを雅臣が利用して、星への忠誠を示すためにお前を牢の中で殺したとしても......俺にはどうにもできない」

清子は身震いした。

「じゃあ......どうすればいいの?」

仁志は言った。

「雅臣と星はお前の仇だ。

Z国を出るとしても、奴らに幸せな思いなんてさせるわけにはいかない。

今回の件のあと、雅臣は必ず星を追いかけて、再婚しようとする。

お前が今までやってきたことなんて、あいつらの関係を試すに利用されただけだ。

結局は徒労ってわけだ。

そういえば──」

仁志は何か思い出したように言った。

「星がお前の情報をネットに流したのは、雅臣がわざと俺を貶めたせいなんだ。

金持ちの女に囲われてるとか星と不適切な関係だとか、そんな嘘を広めた。

それに星は激怒して、雅臣を懲らしめるつもりでお前の情報を公開したんだ」

清子は強く歯を噛みしめた。

あの件が起こる前から、雅臣は再婚のことばかり考えていた。

あんな大騒ぎの後なら、なおさら彼は星を取り戻すために必死になる。

そうだ。

仁志の言うとおり。

たとえ自分が去るとしても、雅臣と星を幸せにしてなるものか。

心が巡り、清子は決意を固めた。

彼女は仁志に言った。

「仁志......もう少し待ってて。

あの二人へ復讐してから、一緒にL国へ行きましょう」

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Kazuyo Kasuya
どこまでも、果てしなく愚かな女
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