ログイン「理想の結婚相手がいないなら、私が一から育てればいいわ」 三百年の時を生きる最強の『黒夜の魔女』ヴェラ。 彼女の夢は、愛する人と寄り添い合う「普通の夫婦」になることだった。 しかし、強大すぎる力と恐ろしい悪名のせいで、婚活はお見合い百連敗中。 人間の男たちは皆、彼女をバケモノと恐れて逃げ出してしまう。 そんなある日、ヴェラは路地裏で息絶えかけていた戦災孤児の少年・アシュを拾う。 誰も恐れず、私だけを愛し、絶対にそばから離れない男がいないなら。 純白のキャンバスのようなこの子に、食事を与え、魔法を教え、愛情を注ぎ、「最高の夫」へと作り変えればいい。 魔女の狂った合理性から始まった、異常な『婚活(いくせい)』
もっと見る王都が恐怖と胃痛の夜会から立ち直る間もなく。 大陸全土を揺るがす未曾有の凶報が、世界中を駆け巡った。 ――極北の防衛要塞国家『フロストヘイム』の完全沈黙。 永久凍土の過酷な環境にありながら、屈強な北方騎士団と堅牢な氷壁に守られていた小国家。 それが、ある一夜を境に、外部との一切の魔導通信を途絶させたのだ。 異変を察知した周辺国が放った先遣調査隊が目にしたのは。 国家の滅亡などという言葉では到底言い表せない、あまりにもおぞましい『世界の変貌』だった。 白銀の雪原は消え去り。 城壁も、民家も、針葉樹の森も、すべてが原形を留めぬほどに溶解。 見渡す限りの大地が、まるで巨大な生物の内臓のように赤黒く脈打ち、天を突く無数の半透明な触手がうねり狂う――地獄の繭と化していたという。 人間も、魔獣も、誰一人として生きて戻ってこない。 ただ、巨大な肉塊の海が、呼吸をするようにドクン、ドクンと音を立てて広がり続けている――。 大陸中の国家が「古代の邪神が復活したのではないか」と恐慌に陥る中。 その凶報は、我がノクス辺境伯爵邸のリビングにも届いていた。 ◇ ◇ ◇「……そ、そんな……! シルヴィアが……!?」 私は、アルファが差し出してきた最新の魔導通信の記録用紙を取り落としそうになりながら、青ざめた顔で叫んでいた。 フロストヘイム。 そこは、私の旧友であり、『絶対独身同盟』の盟友でもある『白銀の魔女』シルヴィアの研究塔――『氷嶺の牙』がそびえ立つ地だ。「ヴェラ様、落ち着いてください。お体に障ります」 私の背後から、温かい両手がそっと伸びてきた。 アシュが私の肩を優しく抱きしめ、心地よい魔力のぬくもりで私の強張った身体を包み込んでくれる。 けれど、今の私にはその温もりを呑気に楽しむ余裕すら
「あ、あぁっ……はぁっ……。 ルミナ……ルミナぁっ……。もっと……っ、もっとそれを、私に……っ」 かつて『氷嶺の牙』と呼ばれ、絶対零度の理性を誇った研究塔の最上階。 今、その部屋を満たしているのは、むせ返るような甘い媚薬の匂いと、あられもない水音、そして魔女の堕落しきった喘ぎ声だけだった。「んっ……あむっ……ちゅ、じゅるるるるっ……!!」 私は、シーツの上で四つん這いになりながら。 目の前に差し出された、ルミナの腕から伸びる太い触手の先端に、まるで飢えた獣のようにしゃぶりついていた。 触手の先端の亀裂から、トロトロと溢れ出してくるのは、極彩色に輝く高濃度の【神経溶解媚薬】。 それを一滴たりとも逃すまいと、私は自ら舌を絡ませ、喉を鳴らして飲み込んでいるのだ。「んぐっ……んく……っ、ぷはっ……! あ、ああぁ……っ、これ……っ、これだ……っ。 脳髄が……ドロドロに溶ける……っ、最高だ……っ!」 媚薬が食道を通って胃の腑に落ちた瞬間、爆発的な熱が全身の血管を駆け巡る。 視界がチカチカと明滅し、指先から足の先まで、すべての神経が『快楽を受信するだけの器官』へと強制的に書き換えられていく。 陥落の朝から、どれだけの日数が経ったのか。 もはや私には、時間の概念すら曖昧になっていた。 ただ一つ確かなのは、今の私が、この無口なメイド――ルミナの分泌する『体液』なしでは、一秒たりとも正気を保てない身体になってしまったということだ。「…………(ニコニコ)」 私の口内に媚薬を注ぎ込みながら、ルミナは恍惚とした表情で微笑んでいる。 彼女のメイド服はすでに脱ぎ捨てられ、白く滑らかな素肌の至る所から、無数の触手がうねり、私の身体に絡みついていた。 じゅちゅ……、ぬちゃ……っ。「ひゃあぁんッ!? あ、ああっ、ルミナ……っ
ピピッ、ピピッ、と。 研究用の魔導時計が、無機質なアラーム音で朝の六時を告げた。「…………っ」 いつもなら、この音が鳴る三分前には完璧に意識を覚醒させ、冷徹な思考回路を再起動させていたはずの私。 だが、今朝は違った。 ベッドから上体を起こそうと腕に力を込めた瞬間、ビキリと全身の筋肉が軋み、力が入らずにシーツの上へと崩れ落ちたのだ。「はぁっ……、あ……」 口から漏れたのは、自分でも信じられないほど熱っぽく、だらしない吐息だった。 全身の骨の髄まで、ドロドロに溶かされてしまったかのような極度の倦怠感。 腰から下は完全に感覚が麻痺し、微動だにさせることすら難しい。 そして何より――私の下腹部の最奥が、まるで内側から熱病に侵されたかのように、ジンジンと狂おしく疼き続けている。 重い瞼をこじ開け、自らの身体を見下ろした。「……っ!」 息を呑む。 月光の下で見た光景は、決して夢などではなかったのだと、白日の下に晒された私の肉体が何よりも雄弁に物語っていた。 透き通るようだった白銀の素肌には、赤黒い斑点――いや、無数の『吸盤の痕』が、首筋から胸元、太ももの内側に至るまで、びっしりと刻み込まれていた。 シーツには、私の愛液と、あの半透明の触手が分泌していた高粘度の『快楽体液』が混ざり合い、生々しく乾いた染みを広げている。 溶かされてしまった軍服ドレスの残骸が、床の片隅に無惨に散らばっていた。「あれは……現実だったのか……」 震える両手で顔を覆う。 昨夜の光景が、脳裏にフラッシュバックした。 ベッド全体を飲み込むような、不定形の肉塊と触手。 私の強固な魔力結界を一切意に介さず、絶対零度の氷槍すらも吸収してしまった、圧倒的なまでのバケモノ。 そして――その触手を生やし、私に覆い
「……ん……っ? ……あ……?」 泥のように重く、甘い熱の底から、私の意識は急速に現実へと浮上していた。 おかしい。 私の思考回路は、常に冷徹で、規律正しく、朝の六時に寸分の狂いもなく覚醒するように完璧に調整されているはずだ。 なのに、今のこの異常な覚醒は何だ? 頭の芯がジンジンと痺れ、下腹部の奥底が信じられないほどの熱を帯びて激しく疼いている。 全身の皮膚という皮膚が粟立ち、心臓が早鐘のように胸腔を叩いていた。 重い瞼を、力を振り絞って押し開ける。「……っ!?」 青白い月光が差し込む寝室。 視界に飛び込んできた光景に、私の息が完全に止まった。 ――そこは、私の知る厳格な寝室ではなかった。 ベッドのシーツ全体が、黒と紫が混ざり合ったぬめり気のある肉塊のように脈打ち、私の両手首、足首をガッチリと拘束している。 私の軍服ドレスは影も形もなく、晒された全裸の肢体の上を、無数に枝分かれした半透明の触手が、じくじくと音を立てて這い回っていた。「な……なに、が……っ!? 悪夢……!? いや、幻術の精神干渉か……!?」 混乱する私の脳髄に、下半身から突き上げられるような、暴力的なまでの快楽が直撃した。 ぐちゅり、ぐちゅるるるるるっ!!「ひぎぃッ!?!? あ、あぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」 叫ばずにはいられない。 私の秘所の最奥――子宮口に吸盤を張り付かせた太い触手が、容赦のない速度と圧力で、内壁を抉るようにピストン運動を繰り返していたのだ。 さらに後方の孔(アナル)からも細い触手が潜り込み、前後の壁を挟み込むように微細な振動を撒き散らしている。 熱い。痺れる。 触手の表面からドクドクと注ぎ込まれる謎の体液が、私の粘膜から血管へと侵入し、
朝。 さんさんと降り注ぐ陽光が、ダイニングルームを明るく照らしていた。 私は淹れたてのミルクティーを片手に、王都から取り寄せた新聞に目を通していた。 「……あら」 一面の大きな見出しを見て、私は思わず声を漏らした。 そこには、先日この屋敷にやってきて、私に不躾な態度をとった男の名前が踊っていた。 『バルバトス伯爵、深夜の屋敷で突如発狂! 当主の座を退き幽閉へ』 『不正蓄財と密輸の証拠も多数発見! バルバトス家、取り潰しの危機か』 記事には、伯爵が何かに酷く怯えた様子で「化け物が来る」「俺の目を潰しに来る」とうわ言を繰り返し、精神を病んでしまったと書かれてい
アシュを拾ってから三年。 十五歳の彼は、私の想像を遥かに超える速度で成長を続けていた。 「――そこまで」 私が声をかけると、中庭に響いていた激しい金属音がピタリと止んだ。 「はっ……はぁっ……」 荒い息を吐きながら木剣を下ろすアシュ。 彼の足元には、私が魔法で創り出した『泥人形(ゴーレム)』が、文字通り木端微塵になって散らばっていた。 ただの泥人形ではない。 大理石ほどの硬度を持たせ、一流の騎士三人分の動きをインプットした、実践用の高度な魔法生物だ。 それを彼は、たった一人で。 しかも魔法を一切使わず、剣術だけで圧倒してみせたのだ。 「素晴らし
彼を拾ったのは、純粋な合理性からだった。完成された理想の男がいないなら、真っ白な子どもを一から育て上げればいい。三百年間生きてきて、なぜこんな簡単なことに気付かなかったのか不思議なくらいだ。「……っ、おい、どこに行くんだよ」路地裏から引きずり出された少年――アシュは、私の手を振り払おうと必死に抵抗していた。だが、ひ弱な少年の力で、魔力で身体強化をしている私から逃れられるはずもない。「どこって、私のお家よ」「はなせ! 俺をどうする気だ! 奴隷商人か!? それとも怪しげな儀式の生贄か!?」「嫌だわ。そんな野蛮なことしないわよ」私はふふっと笑いながら、彼の灰色の髪を撫でた。泥と
「愛」というものが、私にはよくわからない。三百年間生きてきても、その正体だけは一向に掴めなかった。ただ、目の前を歩く老夫婦を見ていると、胸の奥がわずかに疼くような気がする。シワだらけの手と手をしっかりと繋ぎ、同じ歩幅でゆっくりと石畳を歩いていく二人。合理的ではない。手を繋げば片手が塞がり、いざという時の防御行動が遅れる。歩幅を合わせるのも、身体能力の低い方に合わせるという非効率な行為だ。けれど。「……とても、暖かそうね」カフェのテラス席で紅茶を傾けながら、私はぽつりと呟いた。誰かと寄り添い、共に老い、最期まで隣にいる。そんな『普通の夫婦』というものに、私はずっと憧れてい