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第988話

Autor: かおる
星と怜央が契約書に署名を終えると、彼女は仁志を連れて部屋を出た。

今回は、雲井家の人間も、怜央たちも、誰一人として引き止めなかった。

廊下は静まり返っている。

赤い絨毯の上を、高いヒールが踏みしめる鈍い音だけが響いていた。

仁志は星の隣を歩きながら言った。

「昔から、彼らはああいう扱いだったんですか?」

星は、彼の言う「彼ら」が雲井家の人間を指していることを理解していた。

「だいたい、あんな感じよ」

昔は、彼女も、翔や忠たちも若く、言葉を選ぶこともなく、物の言い方は、もっと直接的で、容赦がなかった。

態度は相変わらず今も変わらない。

ただ、そこに薄っぺらな体裁と、白々しい建前が加わっただけだ。

しばらく歩いたあと、星はようやく口を開いた。

「仁志。

あなた、本当に証拠を持っているの?」

仁志が答える。

「今になって、それを聞きます?

遅すぎないですか」

「遅くないわ」

仁志は彼女を見た。

「もし、僕に証拠がなくて、あの場ではったりをかけただけだったとしたら?

それでも、本気で創業株を売るつもりだったんですか?」

星は微笑んだ。

「売らないわ。
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