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第1250話

Author: 心温まるお言葉
数日後、海上の結婚式は無事に幕を閉じた。

白石沙耶香は目上の人から同年代の人まで、一人一人丁寧に挨拶をし、敬意を払い、霜村家の人々は皆、彼女を絶賛した。

他の霜村家の義姐たちが白石沙耶香を褒めているのを聞き、柳愛子は思わず足を止め、船の下に立つ白石沙耶香の方を振り返った。

白石沙耶香が船を降りる霜村家の人々全員に、両手で引き出物を渡しているのを見て、柳愛子は少しだけ口角を上げた。

どういうわけか、たった数日の付き合いで、彼女を見る目が変わってしまった......

全員を見送った後、白石沙耶香は、ずっと付き添ってくれていた和泉夕子の方を向いた。

「引き出物とは別に、もう一つプレゼントがある」

和泉夕子は遠慮なく手を差し出した。「何?」

白石沙耶香は引き出物を渡すと同時に、一枚の写真を取り出し、和泉夕子の手のひらに置いた。「見て、気に入った?」

和泉夕子は写真を受け取り、それを見た。そこには、霜村家と春日家の兄弟姉妹が、屋上のデッキに集まっている様子が写っていた。

そこにいる誰もがお互いの関係を知らないとはいえ、霜村冷司はたった一人で、二つの家の血筋を繋いでいたのだ。

この写真は、とても巧妙に撮られていた。霜村冷司が中央に座り、左には春日家の人々、右には霜村家の人々がいて、両家の人々がお互いを見つめ合っている。

霜村冷司は和泉夕子を見下ろしていて、彼女もちょうど彼を見上げていた。周りには清潔なソファと、どこまでも続く大海原が広がっていた......

その上、隅に座る桐生志越と、ワイングラスを手に霜村凛音を見つめる唐沢白夜も写っていた。全ての光景が、あの夜に止まっている。

少し喜んだ和泉夕子は、その写真を撫でながら、「沙耶香、いつ撮ったの?」と尋ねた。

白石沙耶香は、穂果ちゃんの手を引いてぴょんぴょん跳ねながら前を歩く柴田南の方を見た。「彼が撮ったのよ」

彼らがトランプをしていた夜、穂果ちゃんは柴田南にまとわりつき、あれこれと要求していた。やっと子供を寝かしつけた頃には、賭け事は終わっていた。

柴田南は悔し紛れにカメラを取り出し、この場面を撮影し、白石沙耶香に金塊を要求した。白石沙耶香はそうしてこの写真を入手したのだ。

この写真の舞台裏の複雑な話を聞いて、和泉夕子の喜びは一気に冷めてしまった。「さすが柴田さんだね」

白石沙耶香は優しく
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シマエナガlove
杏奈にしたら迷惑なのでは? 言成と2人でいたいのに 近くにいたいのはわかるけど なくなった後までしつこくするのは 亡くなった人に対して冒涜でしょ
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