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第 1247 話

Author: 水原信
梨花の父は下半身に毛布をかけたまま、外で梨花の母が医者と話している声を聞いていた。梨花には、それだけで父が脚をケガしていることが察せられた。

けれど、それを自分の目で確かめる勇気はなかった。

気づけば、彼女の涙は止めどなく流れ、毛布を濡らしていた。

病床にもたれかかりながら、梨花は初めて自分のわがままさをこれほどまでに悔いた。

――どうして、もっとちゃんとお父さんの言うことを聞いていなかったんだろう。

「お父さん、ごめんなさい……本当にごめんなさい!」

その時、頭の上から張りのある声が聞こえた。

「何泣いてるんだ。死んだわけでも、足が無くなったわけでもない」

その声に梨花は呆然と目を見開き、顔
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