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第 993 話

Author: 水原信
星月はファラオの実験室で治療を受けているので、安全だと信じていた。

しかし州平は違う。海咲は5年を経て、生活技能や護身術を身につけ、彼を足手まといにしないと決めていた。彼女は、命を共にする覚悟を決めていた。

州平は海咲の頭を優しく撫でながら、「いいよ」と言った。

三日目、モスは耐えられなくなった。

州平と海咲は時間も忘れて彼を見張っていたが、モスにはその余裕はなかった。今、あちらでは多くの者がS国を狙っている。

彼は一国の大統領、こんなに長い間自国を離れるわけにはいかない。モスは州平に解毒薬を渡した。

「お前の二人の兄は、大統領の座を欲しがっている。それなのに、お前はそれを放棄するなんて、州平
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