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第4話

Author: 梨ちゃん
家族の食事会に向かう時、私は父の遺灰を持っていった。

食事会の後、遺灰を海に撒くつもりだった。死してなお、父が自由に天地を歩けるようにと願って。

でも、まさか早織まで来るとは思っていなかった。

景吾と早織は並んで座り、こちらに目もくれない。

私は骨壷をテーブルの上に置いた。景吾の顔色がさっと変わる。

先に口を開いたのは早織だった。

「美知留さん、遺灰なんて持ってきて、誰かを呪うつもり?

川村おばさんが普段どれだけあなたに気を遣ってると思ってるの?死人の骨なんて持ち込んで、わざわざ不快にさせるなんてひどすぎるわ」

景吾も眉をひそめた。

「美知留、今すぐそれを捨てろ。今なら見なかったことにしてやる」

私は口元を歪めて、皮肉な笑みを浮かべた。

「悪いけど、それは無理ね」

景吾の声が一段高くなった。

「最近のお前、どうかしてるぞ。これ以上わがままを続けるなら、本当に離婚するぞ!」

彼はまだ、私が結婚にしがみついていると思っている。でも、私はもうとっくに吹っ切れていた。

私は静かに彼を見つめながら、骨壷をテーブルの中央に押し出した。

「川村おばさんのこと、あまりにも軽く見てない?」

「もうやめなさい、景吾、早織。せっかくの食事会なんだから、皆が嫌な思いをするのはよくないわ」景吾の母が口を挟んだ。

「美知留が何を持ってこようと私は気にしない。あなたたち二人こそ、余計な口出しはやめなさい」

早織の顔が気まずそうに歪み、不満げに口を閉じた。

景吾は眉をひそめたまま、何かがおかしいと感じているようだったが、それが何なのかは分からず、頭を抱えていた。

食卓では、早織が何度も景吾の母に話しかけようとしていたが、すべて無視された。

早織が600万円も出して買った絵は、景吾の母に足元へ無造作に置かれていた。

一方、私が手作りしたお守りの数珠は、景吾の母の手首に巻かれており、その顔には満足げな微笑みが浮かんでいた。

「美知留、あなたの贈り物は心がこもってるわ。誰かさんみたいに、汚いお金で適当に選んだものとは違うのよ」

その言葉はあまりにも露骨で、早織の笑顔が固まった。

「これからの生活、一人でもうまくやっていけるようにね」

景吾の母が私の手を握る。その手のひらの硬いタコが、父の手を思い出させた。

私はうつむき、目に浮かんだ涙を隠した。

景吾が口を開いた。

「母さん、その言い方はひどいよ。まるで俺が死んだみたいじゃないか。俺は美知留の夫だ、ちゃんと支えるつもりだよ」

景吾の母の声が低くなり、冷たい目で彼を睨んだ。

「どうやって支えるって?愛人のベッドに潜り込んで支えるの?」

それは、景吾と早織の不倫を、景吾の母が初めて公然と糾弾した瞬間だった。

隠してきた醜い現実が、ついに白日の下にさらされた。

早織の顔が一気に青ざめ、目には涙があふれた。

「おばさん、私と景吾はもともと両想いだったんです。美知留さんが無理に割り込んでこなければ……」

彼女は悲しげな顔で景吾の胸に顔をうずめた。景吾はそれを見て、もう座っていられなくなった。

「母さん、あなたの顔を立てるためだけに、俺は五年間も美知留と仮面夫婦を続けてきたんだ。

でも、もう限界だ。俺の本当に愛する人が、差別や偏見に苦しむのを黙って見ていられない。

早織は愛人なんかじゃない。俺は美知留と離婚して、早織と結婚する。彼女に正式な立場を与える!」

景吾の声には確信が満ちていた。早織は泣くのを一瞬止め、満足げに微笑んだ。

その言葉の後、景吾の視線が私に向けられた。

「いつか分かるさ。家族の食事会にわざと遺灰を持ち込んで人を不快にさせる美知留より、心を込めて贈り物を選ぶ早織の方が、母さんの嫁にふさわしいってことが!」

彼の目には嫌悪が滲み、手を伸ばして骨壷を片付けようとした。

私は反射的にそれを止めようとしたが、景吾に強く突き飛ばされた。

もみ合いの中でバランスを崩し、骨壷が落ちて中身が床に散らばった。

張り詰めていた心が一気に崩れ、私は叫んだ。

「やめて!」

足に力が入らず、その場に崩れ落ち、這うようにして骨壷に近づいた。

涙が次々とこぼれ、粉に染み込んでいく。

「お父さん、ごめんなさい……ごめんなさい……!」

その様子に、景吾は体を強張らせた。視線が私と景吾の母を行き来する。

「美知留、いい加減にしてくれよ。数日前、早織がお父さんから電話を受けたばかりで、体調は回復してきてるって……この遺灰、ネットで買った偽物だろ?人を騙してるだけじゃないか!」

景吾は早口でまくし立て、不安を隠すように言い訳を並べた。

私は涙を拭い、立ち上がって景吾の胸ぐらをつかんだ。

だが、私の拳よりも早かったのは、景吾の母の平手打ちだった。

鋭い音とともに、景吾の顔が横に吹っ飛び、唇の端から血がにじんだ。

「なんで私が、あんたのような息子を持ったんだ!」

景吾の母の目には、深い失望が浮かんでいた。

「七日前、あんたが早織といちゃついて、そのことが世間に知れ渡った夜、美知留のお父さんは、ショックで亡くなったのよ!」
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