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第89話

Autor: 八雲詩乃
「何だって?」

「いつの話だ?」

涼香と宗介は、そろって驚いた。

「きょ、今日です」

二人の反応に怯えた秘書の声は、かすかに震えていた。

まさか、社長は知らなかったのだろうか。

「人事の担当者を呼んでこい」

秘書はすぐに人事担当者を呼びに行った。

ほどなくして、人事担当者が連れてこられた。

ここへ来る途中で、秘書からおおよその事情を聞かされ、彼女もすっかり怯えていた。

宗介も涼香も若葉をあれほど嫌っていたのだから、辞めたと知れば喜ぶと思っていた。機嫌がよくなれば、自分を昇進させ、給料まで上げてくれるかもしれないと期待していたほどだ。

だが、どうやら雲行きが怪しい。

人事担当者は恐る恐るオフィスのドアを開け、おどおどと声をかけた。

「社長、お呼びでしょうか」

宗介は彼女のほうを見ようともせず、いきなり問い詰めた。

「若葉が退職を申し出たのは、いつだ?」

「い、今からちょうど1か月前です」

宗介の目が険しくなった。

若葉が深津市へ戻ってきた日だった。

つまり、戻ってきたその日に退職を申し出たということか。

そう考えると、ひどく苛立った。

「なぜ、誰
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