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3.その時の色々視点

Author: satomi
last update Last Updated: 2025-08-28 19:10:08

 ヘレナはアンジェリカがいなくなってスッキリとしていた。

おねーちゃんの婚約者であるクリフトン様と婚約することにも成功。クリフトン様は元々侯爵家だし、傷心のおねーちゃんを追い出すことにも成功。お父様の病気、アレはクリフトン様と画策した物なのよね。病なのはそうだけど、感染性ではないと思う。でもまあ、私の思い通りに家も婚約者も手に入って最高!

「クリフトン様ぁ、式はうんと豪華にしましょうねぇ」

 私はクリフトン様の腕に抱きつき上目遣いでおねだりをした。

「そうだな。国中の貴族が祝福をくれるようなそんな式だ。ああ、式を挙げるのが待ち遠しいよ」

「いやだ、クリフトン様。式の日の夜が待ち遠しいんでしょ?」

「それは否めないな。でもウェディングドレスを纏った君の姿をこの目に焼き付けるのもたのしみだけれどな!」

「あらそうなんですか?脱がせやすいデザインのウェディングドレスにしましょうか?」

「淫らな娼婦のようでははしたないぞ!」

 クリフトン様は指で私の額をつつくけれどもそんなのは平気。

 二人でこの先の幸せな未来を笑いあった。

***************

 騎士団長、グレイ=オールディントンは不審に思っていた。

「おかしい…。シアースミス侯爵家には令嬢が二人いたはずだ。だというのに今、ただ一人の令嬢。それも後妻の連れ子。彼女は今、婚約者と堂々とシアースミス家の邸で生活をしている。婚約者は、クリフトン=マクファイル。マクファイル侯爵家の次男。シアースミス家の長女と婚約していたはずだが?いなくなった令嬢は長女では?そして、後妻の連れ子の次女と婚約。どういうことだ?シアースミス家の当主は何を考えているんだ?次女にシアースミス家の血が流れているのだろうか?もし違うのであれば、ただのお家乗っ取りという事になるが?今後もこの家について注視していこう」

**************

「はははっ、アンジーの初期の状態を酒の肴にしようってのかい?まあ、それも一興だねぇ」

「女将さんっ!」

 うわーっ!あの事言うのかな?あの事かな?なんかたくさんあり過ぎてどれだかわかんないよ。

「今でこそ、『しっかり者のアンジー』だけれども最初はどこのお嬢様かと思ったね。もうそれは酷かったよ。そうだねぇ。床を拭く雑巾で、テーブルを拭こうとしたよ。寸前で止めたよ。アレは間にあって良かった」

 騎士様がテーブルに置いていた手を一瞬上げたのを私は見逃さなかった。

「全部言ったらつまらないだろう?今日はこれだけ!聞きたかったら、また明日おいで下さいな」

「まったく、女将さんは商売上手だなぁ」

 ちょい出しで話していくのか、それも商売としてはいいかもね。全部聞いたら明日からお客さんいなくなったら困るし?それはないだろうけど、ここは料理も美味しいし。

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buchi
ヘレナは、姉アンジェリカを追い出してクリフトンと結婚式の打ち合わせか。一報で騎士団長は、アンジェラの実家に疑問に思うか。後妻の令嬢がクリフトンと結婚して、侯爵家を都合としている。では、情報の姉は何処に行ったのか!一報、アンジーは何時もの酒場でお仕事。女将さんは、働き初めた時のアンジーの令嬢チックの失敗話しをしてお客様を盛り上げるか!
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