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2.アンジェリカはアンジーになる

Author: satomi
last update Last Updated: 2025-08-28 19:09:44

 人間やればできるもので、私は‘アンジー’という名前で下町の居酒屋で住み込みで働かせてもらっている。

「アンジー!2番テーブルのオーダー取ってちょうだい!」

「アンジー!4番テーブルを片付けて!」

 など、忙しいけどやりがいがあって、体を動かしていると嫌なことを忘れられていい。

「ラストオーダーの時間だよ。オーダーはないかい?」

「2番テーブルにエールを2つ!」

「5番テーブルにもエールを!」

 平民というものはよく飲むものだと思う。

「ふぅ、今日もよく働いた。アンジーはもう上がっていいよ。アンジーが来てから店の売り上げが右肩上がり!アンジーは美人だからねぇ」

 そんなこと初めて言われた。いつも義妹と比較されてたからかなぁ?

「ココの居酒屋に来る連中は皇立騎士団の連中かな?そこらのゴロツキより安全でいいよ。明日もあるんだ。ゆっくりお休み」

 とはいえ、女将さんはまだ仕事するんじゃないかなぁ?と様子を見ていると、店の掃除に余念がなかった。

「やっぱり通うならキレイな店の方がいいだろう?」と、厨房にいるスタッフに話しかけていた。 厨房の方も明日のための仕込みを今日のうちにしておくらしくまだまだ働いている。私だけが休むことに罪悪感が…。体力をつけて役に立つようになろう。

*********

「へぇ、ここが俺の部下たちがお世話になっている店か…」

「いらっしゃいませ!…って騎士団長様!どうぞごゆるりとなさってください」

「俺の肩書とか気にしないで?ココのオススメは?」

「今日だと、仔羊の煮込みスープとなっています。騎士団長様のお口に合うかどうか…」

 騎士団長様は元は伯爵家みたいだけど、嫡男ではないから騎士を志したらしい。って昔聞いた。もっと年上の方だと思っていたんだけどなぁ。

「ココで給仕として働いております。アンジーと申します。以後お見知りおきを。って図々しいですね。私の事なんか忘れてくださってかまわないですよ?」

「アレ?君は平民だよねぇ。どっかで見たことある気がするんだよなあ」

 多分、王家主催の夜会とか?警備をなさっていたのかしら?顔を覚えられてたの?騎士団長としてレベルが高いわ。

「団長!アンジーちゃんは皆のアイドルなんですから、独占して口説かないで下さい!」

「そうですよー。みんなのアンジーちゃんですよ!」

 私は私のモノなんだけどな…。

「アンジーは最初は全く使えない子だったんだけど、キチンと覚えてねぇ。今じゃ潔癖みたいにきちんと店の掃除までしてくれるよ」

「皆!アンジーちゃんがキレイにしてくれた店を汚さないようにしよう!」

「「「おー!!」」」

 なんか妙な結束が出来たけどいいのかな?女将さんを見ると結果オーライみたいな顔をしてるからいいのかな?

 それまでは店を閉めた後に、掃除のしがいのある状態だったのに、その日からなんだかキレイにして帰ってくれるようになりました。それでも掃除はするんですけどね。

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Comments (1)
goodnovel comment avatar
buchi
アンジェリカは、義妹に追い出されて、騎士団御用達の飲み屋さんでアンジーとして働いているんだね!元は貴族だから初めは苦労した感じだけど、今は、お店の看板娘なんだね^o^。そこに騎士団超現るか!今後の展開が楽しみです^o^。
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