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第534話

Author: 浮島
しばらくして、瑛司が言った。

「だが、確かに彼女がやったという証拠はない」

蒼空は顔を上げ、微笑みながら瑛司を見つめた。

「分かってますよ。松木奥様に関わることなら、五年前のあの頃と同じように、結局何の結果も出ないってこと」

瑛司の表情に、ようやく変化が現れた。

病床の女性は痩せており、ゆったりした病院着に包まれてさらにか弱く見える。

薬を盛られた影響で、顔色は依然として青白く、唇は血色がなく乾燥している。

長い髪は後ろに垂れ、頬の髪の毛は耳の後ろにかけられ、整った小さな顔がより目を際立たせていた。

病院の白い光が差し込み、彼女の瞳は水をたたえたように輝き、まるで泣きそうだった。

瑛司は突然、彼女と視線を合わせる勇気がなくなる。

しかし蒼空は、彼の目をそらす前に言った。

「五年前も、あなたはこうでした。五年経っても、なにも変わらない」

瑛司は眉をさらに深く寄せる。

蒼空の口調はあえて軽やかに装っていた。

「まさか、私のことを心配してます?」

瑛司は無言。

蒼空は笑った。

「大丈夫ですよ、五年前から慣れてるので。経験を重ねると、悲しいという感情も感じなくなるものです」

蒼空の一言一言は、瑛司と瑠々の行動を辱める釘のように突き刺さる。

さらに、病床で点滴を打たれ、無力さと諦めを漂わせる蒼空の姿は、瑠々の罪をより確実に印象づける。

瑠々は歯噛みしながら蒼空の言葉を聞き、今すぐにでもその口を塞ぎたくなる。

五年前、彼女は蒼空にたくさんの理不尽を押し付けた。

今度は、その順番が回ってきた。

心をえぐられるような感覚に、瑠々は耐えられなかった。

瑠々は静かに言った。

「今の蒼空は辛くて、冷静になれないかもしれないけど、お願い私を信じて。私は本当に薬なんて盛っていないの」

蒼空は軽い口調で返す。

「私は無力な一般人ですからね、お二人に逆らう力すら持てません」

瑛司は低い声で言う。

「だからさっきも――」

蒼空が口を遮った。

「証拠がない、って言いたいでしょ?」

そして瑛司に向かって微笑む。

「言いたいことは分かってますよ。松木社長もこれ以上追及しないでしょう?」

瑛司は彼女を見つめた。

「五年経って、ずいぶん成長したな」

蒼空は軽く笑った。

「成長しても無駄だったのようです。この件に関しては、やはり私の力不
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Comments (2)
goodnovel comment avatar
ゆーい
蒼空ってほんま思慮深い。 別に証拠とかどうでもよくて疑いを植え付けるのが目的だったんだね。 1度疑わせるだけで今までの瑠々の証拠隠滅や捏造に行き当たる。 つい最近も捏造したばっかりだし、そりゃ疑わしくしか見えないよね。 5年前散々蒼空にやってきた悪行が今は瑠々の首締めてて、ざまぁwww これだけじゃ終わらないだろうし。
goodnovel comment avatar
敬江
瑠々の悪事がどんどん暴かれ、瑛司の後悔が積もって行くのがとっても楽しみです! 遥樹と蒼空がハッピーエンドになるのも期待しています♪
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