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第8話

Penulis: 匿名
「……玲奈」

私が家を出てから七日目。安彦は娘のもとへ向かうこともなく、かつて私が働いていた場所へ足を運んでいた。

そこは、厳重に警備された区域だった。研究者だけでなく、そこで生み出される成果そのものが守られている。当然のように、安彦は正門で呼び止められた。

彼はすっかり変わっていた。無精ひげを伸ばし、やつれた姿はまるで路上生活者のようだった。

警備員は何度も彼を追い払おうとし、乞食同然に見ている様子だった。

「ここはあんたの来る場所じゃない。金目当てなら、ほかを当たれ」

容赦のない言葉を浴びせられ、安彦は顔色を変えた。

この数日、彼の脳裏に浮かぶのはかつて自分が私に向けていた態度ばかりだった。

あのとき、私は今の彼と同じくらい、痛みを感じていたのだろうか。

「聞こえてるのか。さっさと立ち去れ」

警備員は彼が呆然としているのを見て苛立ち、スタンガンを取り出した。

安彦ははっと我に返り、ぎこちなく私の名前を口にした。

「俺は乞食じゃありません。妻を探しに来たんです。黒木玲奈といいます。

ここで働いているはずなんです。中に入って、一声かけてもらえませんか。会えれば、それでいいんです」

警備員は一日に何人もの「会わせてほしい人間」を相手にしている。目の前の男の一方的な話など、信じる理由はなかった。たとえ私を知っていたとしても、呼び出すことはない。それが安全のためだった。

「帰ってください。奥さんだと言うなら、電話すればいいじゃないですか。どうしてここで騒ぐんです」

露骨な疑いの視線を向けられ、安彦は気まずそうにスマートフォンを取り出した。そこには、既読のつかないメッセージが並んでいるだけだった。

「喧嘩をしてしまって……何日も帰ってきていないんです。でも、彼女がここで働いている証拠はあります。黒木玲奈です。ほら、これです。見てください」

焦りで手が震え、何度も画面を滑らせるうちに、警備員の表情があからさまに険しくなった。そのときになって、ようやく一枚の写真を見つけ出した。

それは、かつて私が彼に送ったものだった。研究所の制服を着た私が写っている。彼が持っている、唯一の証明だった。

警備員は鼻で笑った。

「申し訳ありませんが、こちらで分かるのはその方が当施設の職員であるという点だけです。お客様とのご関係までは確認できません。これ以上
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