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娘誕生日、母の私が入替え国家組織へ

娘誕生日、母の私が入替え国家組織へ

Oleh:  匿名Tamat
Bahasa: Japanese
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娘の誕生日だった。 彼女はわざと、みんなの前で言った。「ママはくたびれた顔のおばさんなんだから、ケーキは食べなくていいよ。これ、パパがすごく高いのを買ったんだもん」 胸の奥が、すとんと沈んだ。 振り向くと、娘は一番大きなケーキを皿にのせ、家庭教師に差し出していた。 「小山ママ、このケーキのイチゴ、すごく甘いの。早く食べて」 夫は私の居心地の悪さなど気にも留めず、笑いながら娘と家庭教師の頬にクリームを少し塗った。 「長生きして、元気でいられますように」 三人が楽しそうに笑い合う姿は甘くて幸せそのものに見えた。 その瞬間、私はすべてを諦めた。 そして私の先生に電話をかけ、国の極秘プロジェクトに参加することを選んだ。 この人たちのために夢を捨てるなんて、あまりにも割に合わなかった。

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Bab 1

第1話

On their third anniversary, Lucia opened a drawer and found the same box of condoms she'd bought before the wedding—still sealed.

Not like they forgot protection. They just never had anything to protect. Three years, and Jared hadn't touched her once.

So that night, she got bold. New lingerie, three glasses of red, and she wrapped her arms around his neck the second he stepped out of the shower.

"Babe," she whispered. "Let's—"

He shoved her off.

"Seriously, Lucia? Have you no shame?" His voice was ice. "If you're that desperate, go hump a stick."

She froze, color draining from her face.

She couldn't wrap her head around it. She was reaching out to her husband, and he hit her with "no shame"?

Lucia didn't sleep a second.

Buried under the covers, she scrolled through a forum on her phone:

[The pain of a sexless marriage. What should I do if my husband's never touched me since we got married?]

Some replies hinted maybe he was into guys.

Others wondered if he just... couldn't.

Restless, she got up for water—and noticed the bed was empty.

The bathroom light was on. Weird sounds slipped through the cracked door.

She stepped closer. Peeked in.

And her blood ran cold.

Jared—the guy who acted like he didn't care for "anything" physical—was going at it.

To a photo of her "sister." Alice Lynch.

He really thought Lucia was out cold—eyes glazed, voice low,

"Alice... Alice..."

Lucia stumbled back to the bedroom, heart pounding. Jared's phone lit up on the nightstand. Her fingers shook as she picked it up.

She'd always known the passcode. Never used it—until now.

On his chat app, she opened a group thread with his buddies:

[Jared, 1000 days of celibacy today, right? You have to come out and celebrate!]

[No way. Three years married and still no action?]

[Lucia might be a bumpkin, but with that face and body? You've seriously held back?]

[Obviously. He made that vow to Alice—stay pure for her. Jared's never broken a promise to Alice.]

[Total legend. Lucia stole Alice's spot as the Lynch heiress, so Jared faked the whole marriage. His parents forced it, but it was all part of his plan.]

[Yeah, marry Lucia, wait it out, then dump her. Make her look used and tossed.]

[Now that Dawson Corp's yours, time to cut her loose?]

The chat paused.

Then Jared's reply, sent right before he hit the shower:

[Soon.]

Just one word.

Lucia went ghost white.

Lucia was an orphan raised overseas by her adoptive parents. Four years ago, she came back to Khelmark and found out she was actually the long-lost daughter of the Lynch family.

It hadn't been abandonment—someone had swapped the babies.

The Lynches brought her back, but couldn't let go of Alice, the fake daughter they'd raised. So they kept both girls.

There'd been a marriage pact between the Dawsons and Lynches for years. Jared was supposed to marry Alice. Then suddenly, it was Lucia.

She never wanted it.

But Jared? He chased her like crazy. Relentless.

When she couldn't stomach Khelmark's food, Jared flew in her favorites from Italvia on a private jet. When she couldn't sleep, he stayed on the phone all night.

Then came the kidnapping. The ransom call forced the family to pick one daughter to save.

They chose Alice.

But Jared? He stormed in alone and got Lucia out.

Bit by bit, she fell for him. Said yes to the wedding.

Then everything flipped.

He went cold. Distant. Never laid a hand on her.

She used to worry he was sick.

Now she knew better—he wasn't sick, and he wasn't asexual.

He was saving himself for someone else.

She didn't get it.

It wasn't her fault she'd gone missing. Wasn't her fault the Lynch family brought her back.

So why did Jared treat her like this?

Tears blurred her vision just as her phone buzzed.

Lucia stepped onto the balcony and picked up.

"Lucia."

It was Francesca—soft voice, calm as ever. The woman who raised her.

"My birthday's coming up. Will you come home to Italvia?" She paused. "Of course, if your birth parents don't approve... forget I asked."

Giovanni and Francesca Loredan had adopted Lucia legally. They couldn't have kids, but they loved her like she was theirs.

But in Khelmark, blood was everything. And because of Jared, Lucia had stayed behind for four long years.

Now...

The tears she'd been holding back finally broke free. Her voice cracked.

"Mom, I want to come back to Italvia."

Francesca's voice sharpened, panicked.

"Sweetheart, what happened? Did the Lynch family hurt you? Come home now! I swear, once you're in Italvia, no one will touch you!"

The Loredans were powerhouses—top of Italvia's business world, with reach all over Europe.

"I'll handle everything," Francesca rushed out. "I'll send the jet in three days. You're my daughter, and I won't let anyone hurt you."

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ノンスケ
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死ぬほどの思いで産んだ女が、自分よりも家庭教師の若い女をママと呼び欲して、夫も若い女を信じていれば、自分のしたいことをするために捨てる洗濯もあるんだろうな。産む苦しみが辛ければ辛いほど、その娘に拒絶される気持ちも大きいだろうから。夫は最後までわかってなかったんだろうなぁ。
2026-01-12 18:30:45
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松坂 美枝
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拒絶され続けた母親の心は十二年経っても元には戻らず、傷つけた父子は永遠に後悔する 家族間でもこういうイジメってあるからな 取り返しのつかないことってあるよ
2026-01-11 10:05:13
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10 Bab
第1話
娘の誕生日だった。彼女はわざと、みんなの前で言った。「ママはくたびれた顔のおばさんなんだから、ケーキは食べなくていいよ。これ、父さんがすごく高いのを買ったんだもん」胸の奥が、すとんと沈んだ。振り向くと、娘は一番大きなケーキを皿にのせ、家庭教師に差し出していた。「小山ママ、このケーキのイチゴ、すごく甘いの。早く食べて」夫は私の居心地の悪さなど気にも留めず、笑いながら娘と家庭教師の頬にクリームを少し塗った。「長生きして、元気でいられますように」三人が楽しそうに笑い合う姿は甘くて幸せそのものに見えた。その瞬間、私はすべてを諦めた。そして私の先生に電話をかけ、国の極秘プロジェクトに参加することを選んだ。この人たちのために夢を捨てるなんて、あまりにも割に合わなかった。……私の話を聞くと、先生は数秒黙り込み、やがて少し落ち着いた声で言った。「行かないって言ってたよね?子どもも、まだ小さいし。どうして急に気が変わったの?」荷造りをしていた手が止まり、私は一度唇を引き結んでから答えた。「大丈夫ですよ、先生。もうちゃんと考えました。七菜ちゃんには、私みたいな母親はいらないんです。家で専業主婦をしているより、国のために力を使いたいんです」電話を切ったあと、私はベランダのソファに座り、することもなく外の景色を眺め続けていた。頭の中では、今夜レストランで起きた出来事が自然と何度も蘇っていた。今日は娘・内川七菜(うちかわ なな)の誕生日だった。お祝いのため、私は都内の高級レストランで個室を予約していた。朝早くから休みを取り、定時よりも早く帰宅し、手作りでイチゴのケーキを焼いた。最初は終始、和やかな雰囲気だった。けれど、ケーキを切り分ける段になって、七菜はわざと私を何度か見てから口を開いた。「ママはくたびれた顔のおばさんなんだから、ケーキは食べなくていいよ。これ、父さんがすごく高いのを買ったんだもん」胸の奥が、すとんと沈んだ。振り向くと、娘は一番大きなケーキを皿にのせ、家庭教師の小山愛海(こやま まなみ)に差し出していた。「小山ママ、このケーキのイチゴ、すごく甘いの。早く食べて」その言葉が落ちた瞬間、場の空気が一瞬止まり、友人や親戚たちは黙って私たちに視線を向けた。やがて小さなざわめきが
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第2話
私は、彼に視線を向けることすらしなかった。安彦にとっては彼や七菜が口にする「小山ママ」という呼び方も、何気ない一言も、すべて冗談のつもりなのだろう。けれど、私という実の母親を目の前にして、堂々と他人を「ママ」と呼ぶ。それを冗談と呼べるはずがない。あれはどう考えても私への挑発だった。手にしていたスマートフォンを、私は強く握り締めた。「冗談って、お互いが笑えてこそ冗談でしょ。あなたたちは私がやってきたことを当たり前だと思って、それを盾に好き勝手してるだけ。あなたも七菜も、私の気持ちに甘えて、平気で踏みにじってる。小山先生が小山ママなら……私は、何なの」この夜になって、私はようやく腑に落ちた。安彦の気持ちは愛海へと移り、それに倣うように、娘も同じ方向を向いている。私が耐え、譲り続けたところで、彼らの真心が戻ることはなかった。残ったのは歯止めの利かない無遠慮さだけだった。私は唇を噛みしめた。情けないことに、涙があふれ、視界が滲んでいく。他人ならともかく、安彦が知らないはずはない。七菜は、私が命を削る思いで産んだ子どもだった。当時、体の事情から医師には告げられていた。この子を産み続ければ、命に関わる危険があるかもしれないと。それでも何か月ものあいだお腹の中で共に過ごし、その子が動くたびに、その一瞬一瞬を私は確かに感じていた。この子は私と安彦の子どもだった。私たちの愛が形になった存在だった。それを、どうして手放せただろうか。運よく命を取り留め、私は七菜を無事に産んだ。それからは細心の注意を払いながら、ここまで育ててきた。その愛らしい姿は会う人の心を自然と和ませた。それなのに、成長した七菜が最初にしたことは父親と肩を並べて私を傷つけることだった。だからこそ、こんな父と娘のために、私はもう何かを差し出すつもりはない。おそらく、私がこれほど感情を露わにする姿を見るのは初めてだったのだろう。安彦は明らかに戸惑った表情を浮かべた。「七菜ちゃんが冗談で言った一言だろう。あのケーキのことで、そこまで怒るのか。玲奈、いい大人が娘と本気で張り合うのか。今日はそのケーキを食べなかったら、死ぬとでも言うつもりか」彼は私が怒っている理由を理解しようともしなかった。説明する気力も、もう残っていなかった。「
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第3話
私が黙り込んでいるのを見ると、七菜はますます調子に乗った。彼女は一度部屋の外へ出て、小さなケーキを持ち帰ると、それを私に投げつけた。「ふん。小山先生がケーキまで買って、ママをなだめてくれてるのに。ママってほんと分かってないよね」ケーキは避ける間もなく真正面から当たり、甘ったるい感触が頬に貼りついた。七菜は自分のやったことに満足した様子で腰に手を当て、扉の前に立っていた。「もうババアのくせに、小山先生と比べようなんて。鏡で自分の顔を見なさいよ。ケーキは最初から、小山先生にあげるつもりだったんだから」私は顔を上げ、扉の外に立っていた愛海と視線が合った。彼女は新作のコートを身にまとい、丁寧にパーマを当てた髪に、華やかなメイクをしている。それに比べて私はシャツにジーンズ姿だった。こうして並ぶと、「ババア」と呼ばれても、否定しようもなかった。普段は研究室で仕事に追われ、終われば七菜に付き合う。自分の身なりまで気を配る余裕などなかった。ただ、この父娘にとって、私はその程度の存在でしかない。「七菜ちゃん、そんな言い方をしちゃだめよ。お母さん、傷つくでしょう」愛海は腰をかがめ、七菜を抱き寄せた。その目には、明らかに咎める色が浮かんでいる。七菜は舌を出し、「わかった」とだけ言った。……本当に、この子は愛海の言うことだけは聞く。私は小さく息を吐いた。そのままバスルームへ向かい、体についたケーキを洗い流した。離れること。それが、きっと一番ましな選択だった。片づけを終えて戻ったときには、三人はもうリビングにいて、何事もなかったかのように遊んでいた。私は無理に混ざろうとはせず、ベッドに横になり、そのまま休むことにした。自分を大切にしてこそ、人からも大切にされる。そういうものだったはずだ。翌朝、私はすっかり昼近くになってから目を覚ました。その間、安彦が物音を立てて苛立っているのは分かっていた。ドアには鍵をかけていたから、朝食を作らせようとしても無駄だった。身支度を整えて部屋を出ると、三人はまだ家にいた。愛海は私を見るなり、柔らかな声で言った。「玲奈さん、今日はずいぶん遅いですね。体調が悪いんですか。七菜ちゃんたちは、あなたがいなくて大忙しでしたよ」彼女をちらりと見ただけで、私はま
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第4話
水を注ごうとした手が、宙で止まった。正直、すぐには状況を呑み込めなかった。七菜の誕生日パーティーから今まで、ずっと私を避けていた。そんな私に、彼女の異変に気づけるはずもなかった。それでも、母親としての本能が私を突き動かし、安彦の背中を追わせた。向かう途中で、ようやく何が起きたのかが分かってきた。朝食を食べている最中、七菜の体が急に熱を帯び、全身が火照ったまま倒れたのだという。「おかしい、安彦。七菜ちゃんはただの熱じゃない。アレルギーだと思う」彼の断片的な話の中に、引っかかる点があった。朝食にピーナッツスープを頼んだと言っていた。七菜はピーナッツアレルギーがある。「……そうなのか?」安彦は驚いたように私を見た。私は彼を押しのけ、そのまま病院へ向かって走り出した。アレルギー。それは私が七菜に対して、ずっと胸の奥に抱えてきた後悔でもあった。彼女は私の体質を受け継いでいる。重く出れば、命に関わる。「玲奈、待て。靴が……」安彦はすぐ追いついてきた。息を切らし、私の片方の靴を手にしている。けれど、そんなことを気にしている余裕はなかった。七菜に発疹が出ていた。全身が赤くなり、弱々しい声で「ママ」と呼んでいる。「七菜ちゃん……」私は両手を伸ばした。その瞬間、ほかのことはすべてどうでもよくなった。誰を母親だと思っていようと、本当に私を嫌っていようと、考えたくなかった。今はただ、この子を抱きしめたかった。パシン。意識が朦朧としているはずの七菜は、それでも私を認識した。まるで私を拒絶するかのような目で、私の手を強く叩いた。「いやだ」かすれた声が胸に突き刺さり、息が詰まるほど痛かった。「七菜……お前の母親だろ」安彦の顔色はひどく悪かった。私がどれほど必死で駆けてきたか、彼は目の前で見ていたのだから。愛海も、私の裸足と、空気に混じるかすかな血の匂いに気づいた。「玲奈さん、怪我してますよ。先に処置したほうがいいです。七菜ちゃんはここは私がついてますから」この二年間、彼女は七菜の成長をそばで見てきた。強く叱れるはずもなく、話題をそらすようにそう言ったのだろう。私は足の裏に視線を落とした。来る途中、地面に割れたガラスが落ちていたことに気づかなかった。さっきまでは心配でそれどこ
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第5話
医師は首を横に振り、それ以上は何も言わなかった。私は静かに処置が終わるのを待った。夜明け前、再び七菜の病室へ戻ると、彼女はすでにいなかった。若い看護師が気遣うように私の肩を軽く叩いた。「奥さま、旦那さんから伝言があります。お子さんがとても騒いでしまって、先に帰られたそうです」「……わかりました」泣くより、よほどみっともない笑みが浮かんだ。たった傷の処置をしている間に、全員がいなくなってしまうなんて思わなかった。夜風に吹かれながら、私は家へ向かう道を歩いた。今の気持ちを言葉にする術がなかった。若い頃、安彦はとても私を大切にしてくれた。苦労させまいとし、どこへ行くにも迎えに来てくれた。それなのに今は新しい人が隣にいて、命懸けで産んだ子どもまで、私を気にかけなくなった。ここまで来ると、人生はひどく空っぽに思えた。スマホが鳴った。車で帰る途中、安彦からの電話だ。向こうはやけに賑やかだ。私は眉をひそめ、スマホを耳に当てる。「玲奈、子どもを連れて夜食を食べてる。そっちは終わったらこっちに来い。場所を送る」直後、通知音が鳴った。送られてきた位置情報は病院のすぐそばだった。しばらく食べてから、ふと思い出したのだろう。「行かない。二人で食べて」私は淡々と電話を切った。涙がこぼれ、胸の奥が息苦しいほど痛んだ。「大丈夫」という言葉は簡単だ。けれど、何度自分に言い聞かせても、本当に大丈夫なはずがなかった。あれは私の子どもで、私の夫だったのだから。それでも、もう限界だ。行くしかない。昇り始めた朝日が窓に差し込む中、私はスーツケースをまとめ、離婚届をベッドの脇にそっと置いた。安彦は戻ってこなかった。未明に届いたメッセージには、寒くて行き来が大変だからホテルに泊まるとだけ書かれていた。私が余計なことを考えないようにだろう。部屋は二つ取ったのだと、あえて示してきた。それは昨夜すでに見ていた。けれど、返事はしなかった。今日は私が出て行く日だった。戻ってこないなら、ちょうどいい。別れのときに交わす言葉も、娘に嫌われる顔を見るのも、もう耐えられなかった。「行きましょう」迎えに来た人へスーツケースを渡した、そのときだった。安彦が戻ってきた。袋いっぱいの食べ物を提げ、七菜を抱いて笑って
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第6話
それでいいのだと思う。彼は彼の人生を進めばいい。私は、私の人生を行く。「黒木教授、大丈夫ですか」迎えに来てくれた人が少し驚いた様子で声をかけてきた。私は気持ちを切り替え、微笑んで答えた。「大丈夫。行こう」ここを離れる飛行機に乗り込んだとき、安彦から何通ものメッセージが届いた。添えられていた写真は、どれも彼と七菜が幸せそうに笑っているものばかりだった。私は画面の中の小さな顔にそっと指先を重ね、震える手で返信した。【どうか、幸せでいて】私に言えたのは、それだけだった。娘が無事であることを願い、かつて愛した人が幸せであることを願う。そして、私がいなくなったあと、彼らが本当の意味で笑えるようにと。離陸のアナウンスが流れ、私は安彦の連絡先をすべてブロックし、スマホの電源を切った。彼は相当腹を立てただろう。写真を送ってきたのは、私を嫉妬させて家に戻らせるつもりだったのだろう。それなのに、私は静かに祝福した。それが、彼には受け入れられなかった。その結果、彼は七菜を言いくるめ、私にビデオ通話をかけさせた。だが、通じなかった。すでにブロックされていたのだ。「パパ、これどういうこと。ママは?」幼い七菜には、画面に表示された文字の意味など分からなかった。安彦は言った。昨夜、私は七菜を案じるあまり怪我までしたのだから、本来なら謝るべきだと。愛海も同じことを口にした。七菜は素直な子だった。だから、そのまま謝りに行こうとした。「なんでもないよ。愛海のところに行ってきなさい」七菜を怖がらせないように、安彦は必死に怒りを抑えた。両親がうまくいっていないと思わせたくなかったのだ。「パパ、なんで歯を噛みしめてるの」七菜には大人の感情はわからない。けれど、歯を食いしばる音だけは聞こえた。その音が気になって、そこを離れなかった。「愛海」追い詰められた安彦は、思わず大きな声で彼女を呼んだ。こんなふうに声を荒らげたのはこれが初めてだ。愛海も、思わず肩を震わせた。「安彦、どうしたの」この時間、私が家にいない以上、家庭教師である愛海が食事を用意するしかなかった。そのせいで、飾り気のない彼女の姿を目にし、安彦は無意識に嫌悪を滲ませた。「子どもを外に連れて行って」ほんの一瞬の表情
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第7話
その涙には、わずかだが本心が滲んでいた。安彦は戸惑いながら言った。「愛海ちゃん、この件は君のせいじゃない。玲奈が拗ねているだけだ。あいつは孤児院育ちで、自由気ままに生きるのが当たり前になっている。放っておけばいいし、数日もすれば戻ってくる」知り合った頃、私が孤児院で育ったと知った安彦は胸を痛めて涙を流してくれた。けれど、気持ちが冷めると、今度は「孤児院育ちは自由奔放だ」と言うようになった。「じゃあ、食事にしよう」愛海は嬉しそうに瞬きをした。安彦が慰めてくれた。それだけで、自分は大切にされているのだと分かった。ここ数日、もう少し頑張ればいい。この家の女主人になる日も、遠くない気がした。もう一人、嬉しそうだったのが七菜だった。彼女は部屋に大事に取っておいた飲み物を持ち出し、テレビで見た大人の仕草を真似て、グラスを掲げた。「パパ、ずっとこんな毎日だったらいいのに」彼女にとって、パパと小山先生と一緒にいる時間がいちばん幸せだった。「七菜ちゃん、そんな言い方をするんじゃない」この数日の出来事が安彦の心を大きく揺さぶっていた。彼は確かに、かつて私を愛していた。だからこそ、その言葉を聞いた瞬間、思わず七菜を叱った。どんな理由があろうと、彼女は私の子だ。そんなふうに考えていいはずがなかった。「パパ……」七菜は一瞬、体を強張らせた。けれど彼女にとって、愛海を好きなことは間違いではない。その出来事がきっかけとなり、私が家を出て三日目、七菜と安彦は激しく言い争った。互いに一歩も引かず、とりわけ七菜は目を大きく見開いて叫んだ。「私、間違ってないもん。小山先生が好き。ママになってほしい。この何年も、ずっとお世話してくれたのは小山先生だよ。私のどこが悪いの。悪いって言うなら、パパのほうでしょ。前は小山先生に優しかったのに、ママが出て行ったら、急に後悔し始めて」「七菜!」安彦の怒鳴り声と同時に、平手打ちが落ちた。叩いた直後、彼の指がわずかに震えた。その光景は愛海にとっても信じがたいものだ。「安彦、話せば分かることでしょう。どうして子どもを叩くの」愛海には思惑もあったし、私が去ることを望んでいた面も確かにある。けれど子どもが好きなのは本心で、七菜を大切に思っているのも嘘ではなかった。子どもは大人が思
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第8話
「……玲奈」私が家を出てから七日目。安彦は娘のもとへ向かうこともなく、かつて私が働いていた場所へ足を運んでいた。そこは、厳重に警備された区域だった。研究者だけでなく、そこで生み出される成果そのものが守られている。当然のように、安彦は正門で呼び止められた。彼はすっかり変わっていた。無精ひげを伸ばし、やつれた姿はまるで路上生活者のようだった。警備員は何度も彼を追い払おうとし、乞食同然に見ている様子だった。「ここはあんたの来る場所じゃない。金目当てなら、ほかを当たれ」容赦のない言葉を浴びせられ、安彦は顔色を変えた。この数日、彼の脳裏に浮かぶのはかつて自分が私に向けていた態度ばかりだった。あのとき、私は今の彼と同じくらい、痛みを感じていたのだろうか。「聞こえてるのか。さっさと立ち去れ」警備員は彼が呆然としているのを見て苛立ち、スタンガンを取り出した。安彦ははっと我に返り、ぎこちなく私の名前を口にした。「俺は乞食じゃありません。妻を探しに来たんです。黒木玲奈といいます。ここで働いているはずなんです。中に入って、一声かけてもらえませんか。会えれば、それでいいんです」警備員は一日に何人もの「会わせてほしい人間」を相手にしている。目の前の男の一方的な話など、信じる理由はなかった。たとえ私を知っていたとしても、呼び出すことはない。それが安全のためだった。「帰ってください。奥さんだと言うなら、電話すればいいじゃないですか。どうしてここで騒ぐんです」露骨な疑いの視線を向けられ、安彦は気まずそうにスマートフォンを取り出した。そこには、既読のつかないメッセージが並んでいるだけだった。「喧嘩をしてしまって……何日も帰ってきていないんです。でも、彼女がここで働いている証拠はあります。黒木玲奈です。ほら、これです。見てください」焦りで手が震え、何度も画面を滑らせるうちに、警備員の表情があからさまに険しくなった。そのときになって、ようやく一枚の写真を見つけ出した。それは、かつて私が彼に送ったものだった。研究所の制服を着た私が写っている。彼が持っている、唯一の証明だった。警備員は鼻で笑った。「申し訳ありませんが、こちらで分かるのはその方が当施設の職員であるという点だけです。お客様とのご関係までは確認できません。これ以上
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第9話
すべてが終わったと知り、安彦の目から涙がこぼれ落ちた。そのとき、私の名前に気づいた者がいて、周囲に小さなざわめきが広がった。五分ほどして、研究院の責任者が姿を現し、安彦を静かに見つめた。彼は研究員一人ひとりの家庭事情にも通じており、安彦の存在も把握していた。ただ一つ、引っかかることがあった。私が外に出てすでに一週間が経っているのに、夫である安彦が、それを知らないはずがない。「こんにちは。私はここの責任者です。何かありましたら、お話を伺います」立場上の判断として、彼は安彦をオフィスに通し、一通り事情を聞いた。よくある家庭内のいざこざにすぎなかった。とりわけ「離婚するつもり」という言葉を聞いた時点で、彼の中では結論が出ていた。「内川さん、これはご家庭の問題です。黒木玲奈さんの行き先を、私からお伝えすることはできません。彼女が離婚を決めた以上、研究院としてもその選択を尊重します。どうか、ご理解ください。もうお帰りください。お子さんのことを、きちんと見てあげてください」それ以上、話す余地はなかった。安彦は信じられず、叫び出したい衝動に駆られた。問い詰めたい気持ちもあった。だが背後には、整然と並ぶ警備員の視線があった。彼は一歩も動けず、結局、肩を落として帰るしかなかった。それでも、ひとつだけ救いがあるとすれば、愛海が七菜を連れて戻ってきていたことだった。二人は彼との間にわだかまりもなく、以前と変わらぬ様子で接した。まるで何事もなかったかのような家族の姿だった。愛海はわざわざ七菜を連れてきて、安彦に謝った。その声はひどく柔らかく、視線には隠しきれない意図が滲んでいた。安彦はその意味が痛いほど分かった。次の瞬間、堪えていた感情が一気に噴き出し、彼はテーブルをひっくり返した。「全部お前のせいだ!もともと俺は可哀想だから家庭教師にしてやっただけだ。それなのに、子どもをこんなふうに育てて!七菜!玲奈はお前の母親だ。命がけでお前を産んだ人間だぞ。何様のつもりで嫌うんだ!出て行け。今すぐ、この家から出て行け」感情に飲み込まれた安彦は愛海を家から追い出した。七菜はまだ幼く、何もできず、ただ泣くことしかできなかった。だが、その涙に意味はなかった。安彦は少しも哀れまず、怒りに任せて指を突き
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第10話
実験の過程では、想定しきれない事態が起こる。この数年、どれほど慎重を重ねても、多くの命が失われた。生き残った者の多くも完全な身体ではなかった。それこそが私に嘆く資格がない理由だった。失敗と比べれば。死と比べれば。私はあまりにも多くを与えられている。こうして生きている。世界を見て、この結果を見届けている。それだけで、十分すぎるほどだった。「必ず、使命を果たします」表彰の日は、あっという間に訪れた。私は何度も原稿を読み返しながら、この新しい世界を受け入れる準備をしていた。社会から十二年も離れていた私は、目の前の変化にうまく馴染めなかった。分からないことが次々と積み重なっていった。それでも、新しい技術が国家の礎になるのなら、胸を張っていい。そう思えたからこそ、私が差し出してきたすべては無駄ではなかった。「黒木玲奈さん、どうぞ壇上へ」感慨に沈んでいた私は支えられながら舞台に上がった。それは疑いようのない栄誉の瞬間だった。胸が詰まり、何度も涙を拭った。用意していた言葉はすべて頭から抜け落ちていく。けれど、華やかな表現よりも、今この場で伝えたいことがある。――犠牲になった、すべての人たちへの感謝。彼らがいなければ、今日の成功はなかった。彼らがいなければ、この栄誉も存在しなかった。「だからこそ、皆さんに一つだけお願いがあります。どうか、彼らの名前と、その歩みを忘れないでください。これまで積み重ねられてきた努力に、静かに目を向けてほしいと思います。若い力が育てば、社会は自然と前へ進んでいきます。私たちの役割はここで一つの節目を迎えました。そして今、これからの時代が皆さんの手に委ねられています。学び、受け継ぎ、工夫を重ねながら、この場所をこれからも大切に守り続けていってください」即興の言葉だった。それでも、会場からはこの日一番大きな拍手が湧き上がった。それは、新しい世代からの返答だった。私は退かない。彼らも退かない。それこそが受け継がれていく精神なのだ。「……お母さん」式典が終わり、スタッフに支えられて移動していると、懐かしい声が聞こえる。振り向いた先にいたのは、久しく会っていなかった七菜だ。ずいぶん変わっていた。その表情には決して楽ではなかった年月が刻
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