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48話

Penulis: さいだー
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-02 16:40:06

 試合終了。秋斗は当然のように上級生を差し置いての大活躍だった。

 ワンゴール、ツーアシストと全ての得点に絡む活躍を見せ、試合の方も3-0の完封勝ちと完勝だった。

 声をあげて応援していたアイリはご満悦な様子で、先ほどとは違い笑顔が弾けている。

 試合が終わったこともあり、応援に来ていた観客がワラワラとはけていく。

 残っているのは俺達をいれても数名。

……人が少なくなるタイミングをずっと待っていた。

「大活躍だったね。アイリちゃんの彼氏さん」

「凄いでしょ!こんなのまだまだ序の口なんだから」

「あんな彼氏さんがいて、とっても羨ましいよ」

「そうでしょう。あなたの横に座る男じゃ到底無理な話なのだから、私が紹介する友人に乗り換えた方が良いんじゃないのかしら?」

 得意気に語るアイリだが、これが作戦決行を告げる合図だったのだ。

 交渉事をするときに、物事を潤滑に進める方法が心理学には存在する。

 俺が知るだけで二つ。

 一つはフットインザドアと呼ばれるもの。

 これは、無難なお願いから初めて、少しずつ要求を大きなモノにしていくと断られ辛いのだ。

 消しゴムを貸してくれと言われて貸し渋るやつの方が少ない。

 そこから要求を大きくしていって、買いに行く時間が無いから明日まで貸してくれ、そして終いには『けっこう小さくなっちゃったから貰って良い』と聞けば気の弱い相手なら思わず頷いてしまうだろう。

 そしてもう一つはドア・イン・ザ・フェイスだ。

 これは先述した交渉術とは正反対のモノで、先に無理難題な要求を相手に押し付けるのだ。

 当然相手は拒否するが、それだったらと、少しづつ要求の難易度を下げていく方法だ。

 例えば、食事に誘いたい相手が居たとして、まずはデートのお誘いをする。ここで断られるのは織り込み済み。そこから少しづつ要求を下げていくのだ。

 最初にした提案が、無意識に相手のボーダーとなり食事くらいならとOKを貰える確率が跳ね上がるのだ。

 続けて断るのって難しいものだからね。

 どう繋げるのかが難しいが、このどちらかを決行するしかない。

 そのために、昨日、夜中まで滝沢と作戦会議をしてきたのだ。

 リア充寄りのエマはなんとなく俺達に合わせられるだろうが、重度のコミュ症、滝沢にそれは不可能だからな。そっちに時間を割いた形だ。

 まだ少しの時間しか接して居ないが、アイ
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    「……どうして、それを?」 先ほどまでのやり取りを踏まえて、どうせ嘘をついても見破られるだけだと思って、俺は否定しなかった。 それに、陽川がストリーだということが横島先生にバレた仮定して、そんなに大事になるとも思えない。 俺を信じて(なし崩し的に)話してくれた陽川には申し訳ないけれど。「そう。やっぱり本当なのね」 俺が肯定する姿を見て、少し神妙な面持ちを見せると、一つ頷いてから続けて口を開いた。「凛から聞いたのよ。陽川さんを助けてあげて欲しいって」 陽川が自らの秘密を打ち明けたあの公園には、不審者として滝沢も居た。 どうやら俺が気がついていなかっただけで、盗み聞きされていたってことか。 でも、これは滝沢のファインプレーかもしれないな。 きっと、陽川サイドから学校側に助けを求めることはしないだろう。 でも、滝沢にも肩入れする横島先生なら────「なるほど……何となく話が分かってきました。でも少しホッとしました。横島先生なら陽川のことなんとかしてあげられるでしょうし」「うーん」 横島先生から返ってきた反応はあまり芳しいものではなかった。どちらかと言うと、面倒事が増えてしまったと考えたとも取れるような反応だ。「横島先生?」 横島先生は腕組みをして考えるように目をつむり、生徒指導室内に沈黙が広がっていく。「……横島先生?」 少し待っても話し出す気配のないことに痺れを切らして、俺は再度名前を呼んだ。「……それは難しいかも。今朝、職員会議があったの。昨日の放課後、うちの生徒が配信行為をしているって匿名の電話が入ったのよ。それだけでも指導の対象になるかもって話だったのに、校門前にあんなに人を集めてしまったでしょう?近隣からも苦情の電話がたくさん入ってね……下校する関係のない女子生徒が声をかけられたり、足止めさせられたり、怖い思いをしたっていう子もいたのよ」 昨日、陽川が絡まれた時のことを鮮明に思い出した。あのようなことが、他でも起こっていたのか。「今日、警察にも相談をして、パトロールを強化してもらったり、私たちみたいな体力のある若手で集まった人たちを散らすって話にはなっているわ」「そうですか。結構、大事になってしまっていたんですね」 俺が思っているより、よほど事が大きくなってしまっているようだ。 だけど、それと陽川を助けられない

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