幼馴染として育っていた侯爵令嬢のクリスティーン=ウィリアムズとアーノルド王太子。だけど、成長するにつれて互いにすることが増え、遊んだりという事もなくなった。 そんなある日、王家主催の夜会にウィリアムズ侯爵家も招待された。本来ならばクリスティーンの父はクリスティーンの母をエスコートし、参加をするところだがクリスティーンの母は体調が優れず参加出来ないので、クリスティーンが参加をすることに。 クリスティーンは純粋に王太子アーノルドとの再会を楽しみにしていますが…。
View Moreカイエイ王国では、王太子であるアーノルドと侯爵令嬢のクリスティーン=ウィリアムズは幼き頃には仲睦まじく遊んでいたりした。
ウィリアムズ侯爵閣下の功績によるもので、度々閣下とその娘のクリスティーンが王宮に行くことがあり、年齢が近いクリスティーンとアーノルドはその度に遊んでいた。
しかしながら、年を取るにつれてアーノルドは帝王学を学ぶ必要があったし、クリスティーンは気軽に男性と遊ぶなど、淑女のすることではない。ということで二人は会う事がなくなってしまった。
そんな数年後の事、アーノルドは17才。クリスティーンは16才。互いに婚約者がいても全くおかしくない年齢になった頃、王家が主催する夜会にウィリアムズ侯爵家が招待された。
「本来ならば、私とお前の母が参加させていただくところだが、お前の母は体調が優れず夜会に参加などはできない。よって、私のエスコートでクリスティーンが夜会に参加してくれないか?」
「お母様の体調を考えれば当然です(ベッドの住人になってしまっているものね)。私でよろしければお父様のパートナーとして参加をいたしますわ」
こうして、クリスティーンは王家主催の夜会に参加することとなった。
当日には王家に失礼があってはいけないと、侯爵閣下からも色々と注意を受けた。特に閣下と一緒にいるのは親子だからだが、それを知らない貴族が恐らく『親子ほど年の離れた愛人を連れてきたの?奥方の体調が優れないからってどうかと思う』とか中傷を言ってくるだろうと予め聞いておいたのは助かった。
朝から大騒ぎで私は磨き上げられ、夜会に備えることとなった。こんなに騒いでいてお母様の体調に影響がないといいんだけど…。
お父様のエスコートで我が家の馬車に乗り、王城へと行くことになった。お父様はごく普通の燕尾服だけれど、私はうす紫色のタイトなラインのドレスを着ることとなった。デコルテが出ているので、そこは入念に我が家の侍女達が磨き上げていた。
髪をアップに結い上げているが、後れ毛をカールさせてなんだか色っぽく仕上がったと思っている。家の侍女達は「お嬢様、最高です~」と、涙する者までいたのだから、真実なのだと思う。
馬車を降りるとやはり、何も知らない貴族から『親子ほど年の離れた愛人?』とか話しているのが聞こえました。お父様から予め聞いていたので、ショックなど受けずに笑顔で通り過ぎることが出来ました。それはそれで不満のようで、「なんなの?‘愛人でも侯爵様の寵愛を受けていかす~’って余裕?」とか的外れな事が話されているので、内心はちょっと笑いそうになってしまいます。夜会の場です。淑女として振舞わなければなりません。
今回ちょっと楽しみなのは昔一緒に遊んだ王太子のアーノルドとの再会です。
「クリスちゃんに注文のときはセルフで注文を厨房に叫ぼうぜ?」「そうだよな。身重のクリスちゃんの負担になるのは……」「妊婦さんて大声出すのはいいのか?」 などと『大喰らい』で着実にクリスのファンは増えていた。 クリス目当ての客も増えたので、クリスがすっかり『大喰らい』の看板娘になっていた。 数か月後、クリスは臨月となり本当に臨月中も働いていたが、就業中に破水してしまった。「女将さん……店を汚してしまってスイマセン」「そんなことより、クリスはこれから出産に臨むんだよ!男共!店を任せたよ!」「「「「イエス、マム」」」」 どこの軍隊かしら?そしてお客さんを使うの?? 女将さんに抱えられて私室のベッドで横になった。「すぐに産婆さんがくるから待ってておくれ。クリスはいい娘さんだから、安産に違いないよ」 女将さんはそう言うけど……この子は王家の子なんです。 私はいい娘なんかじゃありません。 数時間後に私は男の子を産んだ。名前はダミアン。私に似た茶色の髪の毛。目の色はまだわからないけど、とりあえず金髪じゃなくて一安心よ。 しばらくして開いた瞳の色は青と緑が混ざったような色だった。 金髪碧眼じゃなくて良かったという安心感ね。 ダミアンは寝てたけれど、私も結構疲れてる。 だけど、無情にも「初乳をあげてください」と言われて起こされた。 なんでも、この初乳は特別でいろんな病気に対するものが含まれているらしい。あとは乳母だろうがなんだろうがいいらしいけど、これだけは!ということで起こされた。疲れてるのに。「クリス、お疲れ様。産後の肥立ちにいいものを作ってくるからね。この後は育児でも大変だろうけど、うちの客も協力するから、任せておきな!」 女将さんの言葉が有難い。「また元気になって、見せに立っておくれよ。みんながクリスの復帰を望んでるよ」 数年後、ダミアンはすっかり看板息子(?)となりその愛くるしさで人々を魅了していた。「ちょっと前まで夜泣きとか大変だったのに、今じゃすっかり看板息子だよ」「ぼくはそんなことしないもん!」 ぷくっと膨れたほっぺたが可愛い。 でも、まだまだおねしょしちゃうのよね。こればっかりは訓練かしら?「お、ダミアン。今日も可愛いな、お前は。母さんは元気か?」「かあたんはげんきにほーるではたらいてまちゅ。おみちぇの
隣国に着いて、私は路銀も足りなくなり正直なところ困っていました。 今後出産のためにお医師にもかかるでしょうし、住む場所もままならない状態で大丈夫かなぁ? そんな事を考えていたら、暑さと疲労で道の真ん中で倒れてしまったようです。幸いにも通りすがりのお食事処『大喰らい』の女将さんが私を拾ってお医師様に見せてくれました。 お食事処の2階は生活空間になっており、そこで私は意識を取り戻しました。「あんた、身重の体で無茶し過ぎだよ。過労だってさ。名前は?」「えーっと、クリステ…、いえっクリスと申します。男みたいな名前で恥ずかしいわ」「そうかい?私はこの食事処『大喰らい』の女将だよ。クリスは行くところがないのかい?まぁ、詳しくは話さなくてもいいよ。人間言いたくない事の一つや二つあるもんさ。とりあえずは簡単な過労にいい食事を作るから休んでおくれ」 ―――女将さんはいい人みたい。詮索もされないし。 女将さんが持って来てくれた過労に言い食事はとてもおいしかった。「あの……よろしければ、私をここで雇っていただけませんか?できれば住み込みで」「まぁ?うちとしてもクリスのその後が気になるところだし、その方が気が楽かな?よしっ、そうと決まれば、クリスはよく休養をして早く働けるようになっておくれ。ここは食事処だけど、注文スピードとか速いから結構体力勝負だよ!」 そんな中私の様子を見に来てくれていると思うと女将さんには頭が下がる思いがする。「女将さん。新しく女の子雇ったの?」「そうだよ、クリスってんだ。彼女は身重だから、優しくしてくんな」「可愛いのに残念。旦那がいるのかぁ」「いいえ、いませんよ?」「コラコラ、人のプライベートに踏み込むんじゃないよ。訳アリみたいなんだから。それはそれ、これはこれだ。ところで、ここは無駄話をするところじゃないよ?注文がないなら帰っておくれ!」「違う違う!俺は今日はAセットを頼む!」「2番テーブルA一つ」 女将さんが厨房の方へ大声で叫ぶ。なるほど、注文の取り方とか勉強になったわ。「クリスは4番テーブルの片付けを頼むよ」 えーっと、食器を厨房の方に持って行くのよね。そして、テーブルを拭くのよね。昨日女将さんに習ったもの、できるはず!「4番テーブル片付け終わりました」「報告しなくていいよ……。次の客を案内しておくれ。ほら、店
月の明かりが優しく照らしてくれています。 床は木の板だけれど、優しくベッドまで運んでくれているよう。恥ずかしくて、アーノルド様のお顔も見れない。「クリスティーン」 呼ばれて反射的に顔を上げると、顔に振り始めた口づけの嵐。最初は浅かった。徐々に深く、二人でこれが最後という事を確かめるように深く互いに沈んでいきました。 淑女として私は当然ハジメテなわけで、アーノルド様の指が優しくほぐしてくれました。優しくでも、深く、激しく。 十分にほぐれて濡れたところで私達は互いに溺れていきました。あの逞しい体躯に爪を立ててしまったかもしれないけれど…。 小鳥の囀りで目が覚めます。なんて爽やかな朝でしょう! なんか腰が重ダルイ…って隣にアーノルド様が⁉私は…ああ、全裸⁉ 昨夜の事を思うと恥ずかしさで森の木にも登りたい感じですけど、それどころじゃありませんね。「ん、おはよう。クリスティーン。君のおかげで今日からまた王太子として生活していけそうだよ。何を今更恥ずかしがってるの?恥ずかしがる君も可愛いけど。朝から百面相してたし」 見てたの?私の爽やかな目覚めを!「アーノルド様も服を着て下さいね」 私もアーノルド様も怒られるのかなぁ?私は怒られそう…。 私はアーノルド様に別れを告げた。「恐らく二度と会うことはないでしょうね」「そうだな。君は侯爵令嬢でどこかに嫁ぐのだろうから」「それでは、さようなら」 二度と会うことがないという事実が悲しいけれども、仕方のないこと。私は侯爵令嬢で彼は王太子。 森の外で待っていたアーノルド様の護衛の一人が馬車を調達してくれて、その馬車に乗り私は家路へと着いた。 お父様に心配されたけれども、大丈夫です。心配は、夜会でどこかの馬の骨に連れて行かれたのでは?と心配をしていたらしい。馬の骨どころか王太子様に連れて行かれたんですけれどね。 数カ月し、私はアーノルド様のことも忘れかけていました。 だというのに、私の体は正直です。 倦怠感に眠気、トドメは吐き気です。 お父様はすぐに医師を呼び、私を診察しました。「お嬢様は妊娠していますよ!」 何てことなの?アーノルド様の御子を身籠ってしまった……。 お父様は「父親は誰なんだー?」と鬼の形相で聞いてきます。その状況を見たお母様はさらに体調を悪くしたようです。 まさか「父
夜会といえども主催は王家です。 主催者に挨拶に行くのはマナーの基本です。アーノルドはいるのかな? 成長したアーノルドは精悍で背も高く逞しく、凛々しく、「この人が次期国王なら安心」という感じを受けました。 「本日はお招きにあずかりまして誠にありがとうございます。光栄の極みです。アーノルド王太子様にお会いするのは十年ぶりくらいでしょうか?しばらくお会いしていない間に逞しく精悍な青年に成長なされて、これではうちのクリスティーンが霞みますなぁ」「うむ。クリスティーン嬢も久しぶりになるな。久しぶりになったが美しく成長したようで、侯爵の自慢の娘では?」「うちの娘などまだまだですよ。はははっ」「其方の奥方の体調はどうだ?」「家内の体調にまで心を砕いていただき光栄です。妻はすっかりベッドの住人となっています。よき薬でもあればと思うのですが、なかなかないようで……」「ふむ、こればかりはどうにもできないからなぁ」「夜会に水を差してしまったようで申し訳ありませんでした」「クリスティーン嬢も久しぶりにうちの愚息と話をするといい」「光栄ですが、いいのですか?アーノルド王太子様にはすでに婚約者様がいらっしゃるのではありませんか?」「婚約者と幼馴染は別物だろう?私が許可を出したんだ」 ということで、私はアーノルド王太子様とお話をすることができました。 正直に言って、アーノルド王太子様がカッコよくなっていてドキドキです。「クリスティーンはすごくキレイになったね」 さらっと言えるんですね。「アーノルド様もカッコよく成長なさっていますよ。とても木登りをしていた子とは思えません」 しかもそのあと降りられなくて結構大事になったなぁ。懐かしい思い出よね。 アーノルド様の目が真剣にこちらを見ているのがわかる。「この夜会が終わったら、私は正式に婚約者と婚約することとなるんだ。だからっ、その前に・・・初恋の君と」 私が初恋だったの?驚きなんですけど。「実は場所とか整えてある。この夜会を二人で抜け出さないか?私に最後の思い出をくれないか?」 イケメンに必死な顔で懇願されると、断りにくいです。しかも、そういうセリフって女性が言うものじゃないのかなとも思うのです。でも、返事は…。「是非、喜んで……」 私もアーノルド様が初恋だったから…。 本
カイエイ王国では、王太子であるアーノルドと侯爵令嬢のクリスティーン=ウィリアムズは幼き頃には仲睦まじく遊んでいたりした。 ウィリアムズ侯爵閣下の功績によるもので、度々閣下とその娘のクリスティーンが王宮に行くことがあり、年齢が近いクリスティーンとアーノルドはその度に遊んでいた。 しかしながら、年を取るにつれてアーノルドは帝王学を学ぶ必要があったし、クリスティーンは気軽に男性と遊ぶなど、淑女のすることではない。ということで二人は会う事がなくなってしまった。 そんな数年後の事、アーノルドは17才。クリスティーンは16才。互いに婚約者がいても全くおかしくない年齢になった頃、王家が主催する夜会にウィリアムズ侯爵家が招待された。「本来ならば、私とお前の母が参加させていただくところだが、お前の母は体調が優れず夜会に参加などはできない。よって、私のエスコートでクリスティーンが夜会に参加してくれないか?」「お母様の体調を考えれば当然です(ベッドの住人になってしまっているものね)。私でよろしければお父様のパートナーとして参加をいたしますわ」 こうして、クリスティーンは王家主催の夜会に参加することとなった。 当日には王家に失礼があってはいけないと、侯爵閣下からも色々と注意を受けた。特に閣下と一緒にいるのは親子だからだが、それを知らない貴族が恐らく『親子ほど年の離れた愛人を連れてきたの?奥方の体調が優れないからってどうかと思う』とか中傷を言ってくるだろうと予め聞いておいたのは助かった。 朝から大騒ぎで私は磨き上げられ、夜会に備えることとなった。こんなに騒いでいてお母様の体調に影響がないといいんだけど…。 お父様のエスコートで我が家の馬車に乗り、王城へと行くことになった。お父様はごく普通の燕尾服だけれど、私はうす紫色のタイトなラインのドレスを着ることとなった。デコルテが出ているので、そこは入念に我が家の侍女達が磨き上げていた。 髪をアップに結い上げているが、後れ毛をカールさせてなんだか色っぽく仕上がったと思っている。家の侍女達は「お嬢様、最高です~」と、涙する者までいたのだから、真実なのだと思う。 馬車を降りるとやはり、何も知らない貴族から『親子ほど年の離れた愛人?』とか話しているのが聞こえました。お父様から予め聞いていたので、ショックなど受けずに笑顔で通り過ぎるこ
Comments