第1398話

「どうぞお座りください」ボブ教授は手で席を促した。

三人は窓際の円形ソファに腰を下ろした。

窓の外、櫻橋町の夜景は星河のようにきらめき、ラウンジ内の淡い黄色い灯りと鮮やかなコントラストを成していた。

座った後、ちょうどタイミングよく、ウェイターがドリンクメニューを持ってきた。

由佳は受け取ろうとしたが、ボブ教授がウェイターに向かって言った。「この方には温かいカモミールティーにハチミツを加えたものをお願いします」

彼は由佳に向かって言った。「最近、眠れないことがあるだろう。このお茶はきっと役に立つよ」

由佳は驚いてボブ教授を見つめ、「どうしてそれを知っているの？」という表情を浮かべた。

ボブ教授は笑って言った。「俺の患者の多くが不眠に悩んでいるんだ」

不安、緊張、不眠、心理的な問題は、しばしば一緒に現れる。彼はこれまでの経験で、そういった事例を数多く見てきた。

由佳は頷きながら「ありがとう」と言った。

ボブ教授は由佳の状況についてすぐには尋ねず、代わりに賢太郎と昔の出来事について話し始めた。

ウェイターがドリンクを届けた。

由佳は温かいお茶を手に取り、その湯気の中からカモミールの香りがゆっくりと立ち上がるのを感じた。

ひと口飲んでみると、甘いハチミツがほどよくお茶のほのかな苦みを和らげ、彼女の緊張した神経が少しだけ解けた。

ボブ教授はこの国に来てからすでに半月が経過していた。

この半月の間に、彼は二つの都市を訪れ、櫻橋町が三番目の都市だった。学術会議が終わると、すぐに帰国する予定だった。

この三つの都市の中で、彼は医学交流だけでなく、観光にも時間を取ることにしていて、昔若い頃にも何度か来たことがあると言った。

ボブ教授の最初の目的地は梨裏市で、博物館を見学した。

何年も前に何度か訪れた事があるため、もはや新鮮さは感じていないが、ただ、機会があれば、いつでも遊びに来て、そのたびに新たな感動を覚えるという。

由佳はお茶を持ちながら、ボブ教授が語る梨裏市での体験を聞いていた。

教授の声は低く、非常に魅力的で、どこか催眠的な力を持っているかのようだった。

「この国の仏像の顔は」ボブ教授は指でカップの縁を軽く叩きながら、灰青色の目を輝かせて言った。「一つとして同じものはない。どれも独特で、生きているかのように見える。似ているようで、実は