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第3話

作者: NJマスター
当然、買いに行くわけがない。

すると、玲奈がわざわざ書斎までやってきた。

顔を合わせるなり、彼女は言った。

「徹くんには、もう私がいれば十分なのよ。

いつまで居座るつもりか?

みんな気まずいだけじゃない?

目障りなんだけど、消えてくれない?」

私は眉をひそめたが、冷静に言い返した。

「私は別に気まずくないわよ。

気まずいのは、人の男に手を出してる泥棒猫の方でしょ?」

玲奈の顔色が変わる。

「誰が泥棒猫よ!」

「心当たりがある人こそ泥棒猫じゃない?」

「愛されてないほうが、本物の泥棒猫だわ!」

玲奈はスマホの画面を突きつけ、保存された写真や動画を見せつけてきた。

そこには徹との生々しい写真や、イチャついている動画が溢れていた。

「私が海外へ留学しに行ってなかったら、徹くんがあんたなんかと付き合うわけなかったのよ。

まさか、本気で愛されてるとでも思った?

彼は私の帰りを待つ間の埋め合わせに、あんたみたいな便利な女を使っただけ。

彼の心は私だけのものよ。たとえあんたと結婚しても、彼が一番愛してるのは私なの」

度重なる挑発に、さすがに私も我慢の限界だ。

手を振り上げ、その頬を張ろうとした瞬間。

「茜!何をしてる!」

ドアの方から怒鳴り声がした。

私が振り返った瞬間、ガシャンと何かが割れる音が響いた。

玲奈がテーブルのポットを倒し、熱湯を左腕に浴びたのだ。

彼女は悲鳴を上げ、手首を押さえてうずくまった。

徹が血相を変えて駆け寄り、彼女を抱き締めた。

「玲奈!大丈夫か!?」

「茜さん……私と徹くん、やましいことなんて何もないのに……

どうして信じてくれないの?わざと熱湯をかけるなんて……」

玲奈は生まれながらの演技派だ。

大粒の涙をボロボロとこぼし、誰が見ても庇いたくなるような可憐な被害者を演じている。

徹は彼女のこの手に弱い。

彼は玲奈の赤くなった腕を見て心底胸を痛めた様子で、私を睨みつけた。

「茜!さっき説明しただろ!

どうしてそうやって玲奈をいじめるんだ!

文句があるなら俺に言え!」

どう見ても悲劇の恋人同士だ。

私は二人の仲を引き裂く悪女というわけか。

玲奈は涙目で、震える声で言った。

「徹くん、平気よ。茜さん、ヤキモチ妬いちゃっただけなの。

私が徹くんと仲良しだから……」

何か言い返そうとしたが、言葉を飲み込んだ。

何を言っても無駄だ。徹はいつも、迷わず玲奈の肩を持つ。

まるで私の方が部外者で、二人の愛を引き裂く悪役であるかのように。

いつだって、そうだった。

だから私は、淡々と彼に告げた。

「徹、もう終わりにしましょう」

玲奈の目が微かに動き、隠しきれない喜びが滲み出る。

徹は一瞬呆気にとられたが、すぐに軽蔑の眼差しを向けた。

「そんな手で俺の気を引こうなんて、ガキかよ!

嫉妬して喚き散らすしか能がないのか?少しは玲奈を見習ったらどうだ?」

「本気よ」私は遮った。

私の真剣な眼差しに、徹はようやく動揺を見せた。

「茜、ふざけるのもいい加減にしろ。

来週はドレスの試着だぞ。

これ以上ダダをこねるなら、結婚の話はなかったことにするぞ!」

「好きにすれば」と言いかけた時、玲奈が「痛いっ!」と声を上げた。

「徹くん……腕が痛いよ……」

彼女は火傷した腕を抑え、潤んだ目で訴える。

徹はすぐに慌てふためき、私への言葉など忘れて彼女を支えた。

「大丈夫だ、すぐに病院へ行こう」

二人は慌ただしく上着をひっつかんで、出て行った。

しょぼつく目をこすりながら、壁の時計を見上げる。

ちょうど零時を回ったところだ。

新しい一日の始まり、そして、私の新しい人生の始まりだ。
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