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第2話

Author: 招き猫
私は頭が重く足元もふらつき、気を失いそうで、嘉勇の手を振り払う力すらなかった。

「ちょっと具合が悪くて……」

「フロントで聞いたら、最後の部屋は5分前に予約されたばかりだって。大丈夫よ、嘉勇。可純を責めないで」

陽子が私の言葉を遮り、今にも泣き出しそうな顔で言った。

「私が悪いの、あなたたちの旅行を邪魔しちゃって……可純、もし私に不満があるなら、はっきり言っていいのよ……私、帰るから……」

彼女は言うほどにますます悲しげになり、嘉勇は彼女をなだめた。

「心配するな。出て行くべきなのはお前じゃない、可純だ」

そう言って、彼は冷たい目で私を見た。

嘉勇は私の荷物を部屋の外へ投げ出した。

「今夜は陽子がここで寝る。お前は自分で泊まる場所を探せ」

彼の背後で、陽子が私に向かって挑発するように笑った。

私の胸が締めつけられるように痛んだ。

「あなたは私の彼氏なのに、他の女の子と同じ部屋で寝るなんて、あなたは……」

「可純!」

嘉勇は私の言葉を遮り、怒った口調で言った。その目には軽蔑しかなかった。

「俺たちは同じ部屋、同じベッドで寝るだけだ。何かするわけじゃない!お前が卑しい考えをしてるからって、俺まで同じだと思うな!」

彼は振り向きざまにドアを強く閉めた。

私は呆然とドアの前に立ち尽くし、足の力が抜けると、壁に手をつきながらゆっくりと崩れ落ちた。

部屋の中から、その二人の楽しそうな笑い声が聞こえた。ドア越しに耳に届き、鼓膜を刺すように響いた。

私は目を閉じて少し落ち着き、立ち去ろうとした。

そのとき陽子が声を大きくした。

「嘉勇、ありがとう。失恋してからのこの間、毎日私のそばにいてくれて。もう完全に彼のことは忘れたよ。だって、私、あなたのことが好きになったから!

嘉勇、私の彼氏になって!」

ふん、想像するまでもない。

今ごろ嘉勇はきっと大喜びしているはずだ。

私は荷物を引こうと手を伸ばした。

熱で火照った皮膚が冷たい金属の取っ手に触れた瞬間、骨まで凍るような寒さが走った。

「……ごめん、陽子。お前の気持ちには応えられない。俺には可純がいる」

私は荷物を引きずってホテルの入口まで来たが、まだ頭がぼんやりしていた。

嘉勇の言葉が何度も頭の中で繰り返されている。

彼が一体何を考えているのか、まったく分からなかった。

ホテルのスタッフが私の様子の異変に気づいたようだった。

「お客様、お体の具合が悪そうですが、何かお手伝いしましょうか?」

私は頭を押さえ、何か言おうとした瞬間、目の前が真っ暗になり、そのまま意識を失った。

……

目が覚めたとき、私はすでに病院にいた。

嘉勇がソファでうたた寝しており、まだ昨日の服のままだった。

どうして彼がここに?

陽子のところに行かず、病院で私を見ていたということは、まだ私のことを思っているのだろうか。

私は少し戸惑った。

理解できないし、彼の意図も分からない。

喉がひどく渇き、私は体を起こして水の入ったコップを取ろうとした。

「俺がやる」

いつ目を覚ましたのか、嘉勇が先にコップを取り、慎重に私を支えて起こした。

私は目を伏せ、自分で持とうとしたが、彼はそれを許さなかった。

「熱があるのに、どうして俺に言わなかった?なんで無理をしてたんだ」

冷たい水が喉に入ると刺激が強く、私は何度も咳き込んだ。

少し落ち着いてから、ゆっくり口を開いた。

「言ったよ。でも、あなたは聞いてなかった」

彼は黙ってコップを置いた。

「可純、陽子は失恋したばかりで、すごく落ち込んでるんだ。俺はお前を無視してたわけじゃない」

1週間前、陽子が帰国してから、彼の心がすべて陽子に向いていることくらい、私だって分かっていた。

もうこれ以上、彼と揉め続ける気にはなれなかった。

嘉勇は私が黙っているのを見て、何か言おうとした。

そのとき、彼のスマホが突然通知音を鳴らした。

彼はメッセージを見て、顔色が一瞬で真っ青になった。

「可純、会社でちょっとトラブルがあって。あとでまた来る」

私が答える前に、彼はコートさえ取らずに外へ飛び出していった。

私はスマホを開き、インスタの投稿を見た。

陽子が載せた「交際宣言」の写真だった。

そこには、嘉勇の親友・鈴木大宙(すずき おおぞら)と手をつないでハートのポーズをしている陽子が写っていた。

コメントにはこう書かれていた。

【私を愛してくれる彼は、臆病な人なんかより百倍かっこいい!】
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