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第3話

Penulis: 蓮に夜風
景明は喉仏を上下させ、私をさらに強く抱きしめた。

「やきもち?」

私は神経が張り詰めていて、彼の言葉には乗らなかった。

「西園寺(さいおんじ)社長が……奥さんにバレンタインのプレゼントを用意したいって。宝石のことはよく分からないから手伝ってくれって頼まれて、ついでにもう一つ買ったんだ」

彼の親指が、ゆっくりと私の手の甲を撫でる。これは謝る時の、彼の癖だ。

西園寺社長のことは知っている。五十代で、確かにプレゼント選びは苦手そうだ。

本当に私の思い過ごしだったの?

だって景明は、これまでずっと誠実で、私に絶対の安心感をくれていた。

以前、女性のクライアントからプレゼントを渡されそうになった時も、すぐに私に報告してくれた。「彼女の許可がないと受け取れないから」と断ったと言って。

今の彼の表情には、微塵のやましさもない。これではまるで、勘繰ってばかりいる私の方が、心の狭い嫌な女みたいだ。

けれど――彼の胸の鼓動がやけに早い。私の耳に直接伝わってくるその不自然なリズムを、どうしても無視することはできなかった。

「景明、このこと……最初から直接そう言ってくれればよかったのに。あんなに怒らなくても……」

私は彼の胸にさらに耳を押し当てながら、慎重に彼の出方を探った。

「怒ったのは、君が驚く顔を見られなくなっちゃったからだよ。プレゼントを開けた瞬間の、嬉しそうな君を見たかったのに」

景明は愛おしそうに私を見つめていた。その瞳の奥には、ほんのりと失望が滲んでいる。

「サプライズできなくて、本当にごめんな」

私の思い過ごしだった。

私は彼を抱きしめ返し、顔を胸に埋めた。

「ごめんね……勝手に漁ったりして。あなたを疑ったりして」

「バカだな」

彼は私の額に軽くキスをした。

「悪かったのは俺の方だ。当日、改めてサプライズさせてくれ」

私は彼の腕の中で何度も頷いた。涙が彼のパジャマを濡らしていく。

こんなに愛してくれているのに、私は疑ってしまった。罪悪感で胸がいっぱいになって、ひどく切ない。

彼が優しく涙を拭ってくれる。私は涙をこらえながら、彼の唇にそっと口づけた。

彼が体を翻して私を押さえつけ、激しく唇を奪ってきた。

ネグリジェが彼の温かい手の中でゆっくりと脱がされていく。肌が触れ合った瞬間、体のスイッチが入った。

ベッドの上の彼はいつもと全然違い、私がかすれた声で甘えるように許しを請うまで、焦っていて、荒々しくて、加減を知らなかった。

それまでの不安も不満も汗と一緒に流れていって、残ったのは快感だけだった。

明け方、彼のスマホの振動で目が覚めた。

急ぎの用事かもしれない。そう思って、私はスマホを手に取った。

西園寺社長からのメッセージだった。

【景明!もう芝居するのも面倒くさくなった?】

思わずトーク画面を開いて、上へ遡っていった。

画面に表示されているのが最新のメッセージだ。

「西園寺社長」から送られてきたのは、二つの家族が一緒に写った写真。数枚。

景明の隣に、物静かだけど綺麗な女の人が寄り添っている。

さらに遡ると、記念日にはどのレストランへ行くか、両親へのプレゼントは何にするか――もっと日常的なやり取りが続いていた。

もう両親に会わせてたの?

トーク履歴がびっしり並んでいる。

心臓を、大きな手で鷲掴みにされたみたいだ。

もう遡る気力もない。

残業だと言っていた時。接待だと言っていた時。電波が悪いと言っていた時。

私に一人の時間をくれると言っていた時。

私を抱きしめながら「疲れたから早く寝よう」と言っていた時。

このトーク画面には、全く違う温もりと、全く違う未来があった。

目の前が暗くなる。手が震えて、スマホを持っていられない。

今まで見て見ぬふりをしてきたこと。自分に言い訳してきたこと。

それが今、映画みたいに、一コマ一コマ、頭の中に押し寄せてくる。

どうりで結婚の話をするたびに、「最近忙しい」「まだ若いんだから」って軽くかわされたわけだ。

どうりで「将来、あなたに似た女の子が欲しいな」って言った時、急に黙ったり話を逸らしたりしたわけだ。

どうりで祝日や休日のたびに、急な出張とか大事なクライアントとかで、いつもいなくなったわけだ。

彼の忙しさを気遣っていた私がバカみたいだ。仕事に行っていたんじゃない。浮気相手のところに急いでいたんだ。

胃の奥から吐き気がこみ上げてきて、トイレに駆け込んだ。

えずいても何も出てこない。

胃が激しく痙攣して、涙が止まらない。拭いても、拭いても。

三年。

丸三年、一緒にいた。

世界で一番素敵な人を手に入れたって、ずっと思ってた。

なのに、甘い思い出も信頼も未来も、全部最初から嘘だったんだ。

ほんの数時間前まで、彼は私を抱きしめて、愛してるって言っていたのに。

演技、うますぎる。

心臓を何本もの矢で射抜かれたみたいなのに、不思議と憎しみは湧いてこなかった。

知りたい。誰が私たちの間に割り込んできたのか。

知りたい。なぜ彼が私を裏切ったのか。

知りたい。今、彼の心にいるのは一体誰なのか。

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