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第2話

Auteur: 蓮に夜風
車内のライトをつける。全く同じ赤いベルベットの箱が二つ。全く同じネックレスが二つある。

なぜ、二つもあるの?

でも、深く考える暇もなく、遠くでエレベーターのドアが開閉する音が聞こえた。

私は慌てて箱を元の場所に戻し、車のドアを閉めた。

表面上は平静を装っていたけれど、心臓はバクバクと鳴り、手のひらは汗でじっとりと濡れていた。

景明が私の方へ歩いてくる。その顔にはいつもの優しい笑みが浮かんでいる。

「こんな遅くにどうしたんだ?」

彼は私の髪を撫でようと手を伸ばした。

でも私は、無意識に半歩後ろへ下がってしまった。

景明がこんなに急いで降りてきたのは、私が車に隠した秘密に気づくのを恐れたから?

彼の緊張が、棘のように私の心に刺さる。

景明の伸ばした手が、宙で止まった。

かつて私を深く惹きつけたその瞳を見つめる。今、彼の瞳孔はわずかに収縮していた。

私たちはお互いをよく知りすぎている。彼はうつむいて、私の視線を避けた。

彼は、緊張している。

「口紅を車に落としたかも。探しに来たの」

私は自分の声ができるだけ平静に聞こえるように努めた。

「明日俺が探すよ。それか、新しいのを買ってやる。上に行こう、地下駐車場は寒い」

彼は自然に私の肩を抱き寄せた。

いつもと同じようで、どこか違う。

夜、目を閉じても全く眠れなかった。

記憶が不意に蘇ってくる。

去年、私が急性胃腸炎で入院した時、彼は重要な会議をキャンセルして三日三晩付き添ってくれた。

目が覚めると、彼はベッドのそばで突っ伏していた。髪は乱れ、目の下には隈ができ、顎には無精髭が生えていた。

彼は私がコーヒーにミルクを多めに、砂糖を半袋入れることを覚えている。

雨の日、彼の傘はいつも私のほうに大きく傾いている。

深夜残業をしていると、私や他の残業組のために美味しいものを買ってきてくれて、そして会社のビルの下で私が終わるのを待っていてくれた。

去年、父が脳梗塞で倒れた時、私は故郷の病院の廊下で息もできなくなるほど泣きじゃくった。

そんな私のもとに、景明は夜通し車を飛ばして駆けつけてくれた。母と私のために、煩雑な手続きを全て片付けてくれた。

コネを使って最高の病院と専門医を手配してくれた。

潔癖症の彼が、私と一緒に病院の廊下で眠った。その服には、忙しく走り回った後の汗の匂いが染み付いていた。

手の甲には、お湯を汲んだ時にできた火傷の痕があった。

明け方、私は自分にかけられていた毛布を彼にも分けようとした。でも、少し身動きしただけで、彼は目を開けた。

「どうした?寒いのか?ホテルに泊まってこいよ。病院は俺が見てるから」

自分の目は充血しているのに、それでもまず私の体を気遣ってくれる。

その瞬間、私は思った。この人と一生を共にしよう、と。

それから、父がこちらに再検査で来た時のこと。私は景明を正式に両親に紹介することにした。

彼は一週間も前からレストランを予約し、メニューを調べ、プレゼントを準備してくれた。

何もかも完璧で、そつがなかった。

食卓で、母が彼に笑いかけた。

「景明くん、主人の病気では本当にお世話になったわね。喜乃のそばにあなたがいてくれると、私も安心よ」

「とんでもありません。喜乃を心から愛しています。ですから、喜乃のことは俺のことでもあります」

「それで、二人はいつ頃結婚するつもりなの?」

景明は数秒黙ってから、落ち着いた声で言った。

「喜乃はまだ社会に出たばかりです。こんなに早く結婚生活のあれこれに縛りつけるのは、俺のわがままだと思います。結婚は急いでいません。彼女の意見を尊重します」

隙のない、完璧な受け答えだった。

私に向ける眼差しは、深い愛情に満ちていた。

母はあとでこっそり私に言った。

「あの子、本当にあなたのことを大切にしてるわ。しっかり捕まえておきなさい。今時、あんなにいい男はそういないわよ」

そうだ、景明はいい男だ。

あのまったく同じプレゼントは、もしかしたら彼が自分の母親のために用意したものなのかもしれない。

でも、年配の人がこんな若々しいデザインを好むだろうか?

クライアントへの贈り物?

でも、彼の立場なら、誰かに贈り物をする必要なんてない。

思考が頭の中でぶつかり合う。

午前三時。私は寝返りを打って、彼の方を向いた。

カーテンの隙間から微かな月光が差し込んでいる。冷たい白い光が、彼の横顔をどこか冷ややかに見せていた。

呼吸は長く、深く眠っているようだ。

あれこれ考えているのは私だけ。こんなに自然な彼が、浮気をしているようにはとても思えない。

でも、いくつかの疑問は、彼の口から答えを聞かなければならなかった。

「景明、起きてる?」

私は小声で尋ねた。

彼はすぐに目を開けた。その瞳には、眠気が全くなかった。

私は単刀直入に切り出した。心の中では緊張が抑えきれない。

「車の中のもう一つのネックレス、誰にあげるの?」

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