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第153話

Author: 月下
「いらないわ」

文月は、そっけなくそう言い捨てた。

蒼介は拳を固く握りしめた。視線は、博之が文月を抱き寄せているその手に釘付けになっている。できることなら、その手をへし折ってやりたい衝動に駆られた。

だが彼はわかっていた。今ここで文月と衝突すれば、彼女はさらに遠くへ逃げてしまうだけだと。

昔の文月は、機嫌を取るのが容易かった。少しの食べ物や飲み物を与えるだけで、すぐにご機嫌になったものだ。

自分が少し優しく語りかけたり、可哀想なふりをしたりすれば、文月はすぐに駆け寄ってきた。

彼の文月が、これほど長く彼を放置しておくなんて、あり得ないはずなのに。

「すぐに人を払い、貸し切りにしろ」

蒼介は命じた。

隣にいた利規は困惑した表情を浮かべた。「一体どなたの個展を開くのですか?深津社長、まだ作家のお名前を伺っておりませんが」

「星野文月だ」

利規は首をかしげた。「星野文月……聞いたことがありませんね。それは本名ですか?最近の画家は、雅号を使うことが多いですから。それに、作品のデータも早急にいただかないと」

蒼介の表情が凍りついた。

彼は文月の絵に関心を持ったことがほとんどなかった。言い換えれば、文月の絵をまともに見たことさえなかったのだ。

唯一印象に残っている数枚は、ライブ配信で偶然見かけたものだけだ。

上手だとは思ったが、彼には芸術などわからず、文月が趣味で描いている程度にしか思っていなかった。

彼は急に苛立ちを覚えた。

脳裏に、ある人物の姿が浮かんだ。

……

由美は、蒼介がまさか天海市まで追いかけてくるとは思っていなかった。

彼と文月がすでに会ったことは容易に想像できた。今回自分を訪ねてきたのは、文月との復縁に協力しろということだろうか?

以前、彼が文月を怒らせた時でさえ、これほど丁重に接してきたことはなかった。

由美は、目の前の男を品定めするように見つめた。

「深津社長、人に物を頼むなら、それなりの態度というものがあるでしょ。その態度は、あまりに傲慢すぎない?」

由美は蒼介に対して、良い印象を持っていなかった。

当初、文月が彼と付き合い始めた時も、彼女は反対していた。この男は、文月が手懐けられる相手ではないと。

一時は一緒にいられても、遅かれ早かれ別れることになると思っていた。

結局結婚することにはなったが、蒼介の
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