楽しい夏休みが終わり、九月。二学期が始まると、受験ムードが一気に高まった。「もう九月か……」朝のホームルームで、担任の田中先生が真剣な顔で言う。「センター試験まで、あと四か月です」教室がざわつく。「四か月しかないのか……」「やばい……」「みなさん、本気で勉強してください」田中先生が続ける。「今からが勝負です」放課後、図書室。総一は参考書と格闘していた。「難しいな……」心理学部を目指すために、必要な科目を勉強している。「総一、大丈夫?」リリムが隣に座る。「ああ、何とか」「無理してない?」「大丈夫だ」でも、疲れた表情を隠せていなかった。「ちょっと休憩しましょう」リリムがお茶を用意する。「ありがとう」「最近、毎日遅くまで勉強してるでしょ」「そうだな」「体調崩さないでね」「分かってる」総一がリリムの手を握る。「お前が支えてくれるから、頑張れるよ」「当然よ」リリムが微笑む。「わたしはあなたの味方だもの」カイも必死に勉強していた。「美優ちゃんと同じ大学に……」美優の志望校は、偏差値が高い。カイにとっては、かなりの挑戦だった。「カイ君、この問題分かりますか?」美優が聞く。「えーと……」カイが考え込む。「こうかな?」「惜しいです。ここがちょっと違います」「そうか」美優が丁寧に教えてくれる。「こうやって解くんですよ」「なるほど」「分かりましたか?」「ああ、ありがとう」カイが感謝する。「美優ちゃんがいなかったら、俺もう諦めてたよ」「諦めないでください」美優が真剣な顔で言う。「私たち、一緒の大学に行くんですから」「ああ」カイが決意を新たにする。「絶対に合格する」週末、神崎研究所。「みんな、勉強頑張ってるわね」ヴェルダが心配そうに言う。「でも、無理してないか心配だわ」「大丈夫ですよ」総一が答える。「みんなで支え合ってますから」「そうね」リリムが頷く。「一人じゃないもの」「でも」神崎が真剣な顔で言う。「受験は本当に大変です」「知ってます」「特に、秋から冬にかけては追い込み時期です」「はい」「体調管理にも気をつけてください」「分かりました」その夜、勉強会が開かれた。総一、カイ、リリム、美優の四人で。「じゃあ、始めようか」それぞれが自分の勉
海から帰ってきて数日後。八月の半ば、地元で夏祭りが開催されることになった。「夏祭りか……」総一が呟く。「行きたいわね」リリムが目を輝かせる。「浴衣着て行きたい」「浴衣?」「そうよ。夏祭りと言えば浴衣でしょ」「そうだな」「じゃあ、みんなで行きましょう」こうして、夏祭りに行くことになった。祭り当日の夕方。「浴衣、着られた?」神崎研究所で、女性陣が浴衣の着付けをしていた。「はい」美優が可愛らしい水色の浴衣を着ている。「似合ってますよ」ヴェルダが褒める。「ありがとうございます」「麗奈ちゃんも素敵」ピンクの浴衣を着た麗奈が照れる。「本当ですか?」「本当よ」「リリムさんは?」「ちょっと待ってて」リリムが部屋から出てくる。赤い浴衣に金色の帯。髪もアップにして、簪を挿している。「わあ……」「綺麗ですね」「でしょ?」リリムが得意げに回る。「完璧よ」男性陣も浴衣を着た。「似合ってるか?」総一が照れながら聞く。「かっこいいですよ」美優が微笑む。「そうか?」「はい」カイも紺色の浴衣を着ている。「俺も似合ってる?」「はい。とても素敵です」美優が嬉しそうに答える。高橋先輩も、落ち着いた色合いの浴衣。「麗奈さん、待たせました」「いえ」麗奈が頬を染める。
受験勉強に励む日々が続いた後、ようやく夏休みがやってきた。「やっと夏休みね」七月の終わり、神崎研究所のリビングで、リリムが伸びをする。「疲れたわ」「お前も勉強頑張ってたもんな」総一が感心する。「当然よ。あなたのサポートですもの」「ありがとう」「でも、せっかくの夏休みだし」リリムの目が輝く。「どこか遊びに行きましょうよ」「遊びって?」「海よ、海」「海か……」「そうよ。夏と言えば海水浴でしょ」「確かに」「じゃあ、みんなで行きましょう」こうして、海水浴の計画が始まった。数日後、一行は海辺の町にやってきた。メンバーは、総一、リリム、カイ、美優、麗奈、高橋先輩、セラフィーネ、エリス、ヴェルダ、神崎、アルカード、ベル。「わあ、海だ」カイが感動する。「広い……」「綺麗ですね」美優も目を輝かせる。「早く泳ぎましょう」ホテルにチェックインして、着替える。男性陣は海パン、女性陣は水着に着替えた。「準備できた?」リリムが部屋から出てくる。ビキニ姿のリリムに、総一が目を奪われる。「お、おう……」「どう? 似合う?」「あ、ああ……」総一の顔が真っ赤になる。「可愛いよ」「ありがとう♡」美優も可愛いワンピース型の水着。「カイ君、どうですか?」「す、すごく可愛い」カイも顔を赤くする。麗奈はシンプルだが上品な水着。「先輩……」「麗奈さん、とても綺麗ですよ」高橋先輩が微笑む。セラフィーネ、エリス、ヴェルダも、それぞれ自分に似合う水着を着ていた。「みんな準備できたわね」リリムが宣言する。「さあ、海に行きましょう」ビーチに着くと、既に多くの人で賑わっていた。「すごい人ね」「夏休みだからな」場所を確保して、荷物を置く。「じゃあ、泳ぎましょう」リリムが海に向かって走る。「わあ、冷たい」「気持ちいい」みんなも海に入っていく。「うわ、しょっぱい」カイが海水を飲んでしまう。「当たり前でしょ」美優が笑う。「初めてですか?」「ああ、海水浴は初めてなんだ」「そうなんですね」「麗奈さん、泳げますか?」高橋先輩が聞く。「少しだけ……」「じゃあ、一緒に泳ぎましょう」「はい」総一とリリムは、少し沖の方まで泳いでいた。「気持ちいいわね」「そうだな」「ねえ、総一」「ん?」リリムが総一
四月も後半。高橋先輩が大学に進学して、麗奈との遠距離恋愛が始まった。「先輩……」放課後、一人で図書室にいる麗奈。いつも一緒にいた高橋先輩がいない寂しさを、強く感じていた。スマホに通知が来る。『今日も勉強頑張ってる?』高橋先輩からのメッセージだった。『はい。でも、先輩がいなくて寂しいです』麗奈が返信する。『僕も寂しいよ。でも、週末には会えるから』『はい。楽しみにしています』『愛してる』『私も愛しています』メッセージのやり取りだけでは、寂しさは完全には埋まらなかった。「麗奈ちゃん」リリムが図書室に入ってくる。「一人?」「はい……」「寂しそうね」「そうですね」麗奈が正直に答える。「先輩がいないと、図書室も違って見えます」「そうよね」リリムが隣に座る。「遠距離恋愛、大変でしょ」「はい。想像以上に……」「でも」リリムが優しく言う。「乗り越えられるわよ」「本当でしょうか?」「本当よ。だって、二人は愛し合ってるんだから」「愛……」「そうよ。愛があれば、距離なんて関係ないわ」「リリムさん……」「大丈夫」リリムが麗奈の手を握る。「わたしたちが支えるから」「ありがとうございます」週末。麗奈は高橋先輩と久しぶりのデートをしていた。「お久しぶりです」「麗奈さん」駅前で再会した二人は、抱き合った。「会いたかった…
四月。桜が満開の中、新学期が始まった。「おはよう」教室に入ると、机の配置が変わっていた。「三年生か……」総一が感慨深げに呟く。「いよいよ最後の一年ね」リリムも感慨深い表情を浮かべる。「早いわね」「そうだな」「あ、総一」カイが駆け寄ってくる。「同じクラスだったな」「良かった」「リリムも一緒だし、最高の一年になりそうだ」新しい担任が入ってきた。「みなさん、おはようございます」若い女性教師だった。「私は今年度、三年一組の担任になりました、田中です」「よろしくお願いします」「さて、三年生ということで」田中先生が真剣な顔になる。「受験について話しましょう」教室がざわつく。「もう受験の話か……」「早いな」「でも、もう待ったなしですからね」田中先生が配布資料を配る。「進路希望調査票です。大学、専門学校、就職……それぞれの希望を書いてください」「大学か……」総一が用紙を見つめる。まだ具体的に考えていなかった。昼休み、屋上。「進路、どうする?」カイが聞く。「まだ決めてない」総一が正直に答える。「お前は?」「俺は……」カイが少し照れる。「美優ちゃんと同じ大学に行きたい」「そうか」「美優ちゃんは文学部志望だから、俺も文系にしようかなって」「いいんじゃないか」「でも、勉強しないとな」「そうだな」二人が話していると、リリムが現れた。「何の話?」「進路の話」「あー、受験ね」リリムが隣に座る。「総一は大学行くの?」「行きたいとは思ってる」「どこの大学?」「まだ決めてない」「じゃあ、一緒に考えましょう」「一緒に?」「当然でしょ」リリムが総一の手を握る。「わたしたち、将来一緒になるんだから」「そうだな」「だから、進路も一緒に考えるべきよ」「ありがとう」放課後、図書室。総一とリリムは進路について調べていた。「色々な大学があるのね」「そうだな」「総一は何を勉強したいの?」「何って……」総一が考える。「正直、まだ分からない」「じゃあ、やりたいことは?」「やりたいこと……」「将来の夢とか」総一が真剣に考える。「俺は……」「うん」「人を助ける仕事がしたい」「人を助ける?」「ああ。リリムと一緒に色々な人を救ってきて、それが楽しかったから」「なるほど」
ホワイトデーから数週間。三月も終わりに近づき、春の訪れを感じる季節になった。「桜が咲き始めたわね」ある朝、神崎研究所の窓から外を見ながら、リリムが呟く。「もうすぐ満開かな」「そうだな」総一も頷く。「今年も、みんなでお花見できるといいな」「そうね」リリムが指輪を見つめる。ホワイトデーに総一からもらった大切な指輪。「ねえ、総一」「ん?」「結婚って、いつ頃できるかな」「いつ頃って……」総一が考える。「俺が大学を卒業して、仕事に就いてからかな」「それって、あと何年?」「五、六年後?」「そんなに待てないわ」リリムが頬を膨らませる。「もっと早くしてよ」「でも、経済的な問題もあるし……」「お金なんて、何とかなるわよ」「何とかなるって……」「だって、愛があれば何でもできるでしょ」「それはそうだけど……」二人がそんな会話をしていると、リビングに他のメンバーが集まってきた。「おはようございます」「おはよう」「今日は大事な話があります」神崎が真剣な顔で言う。「大事な話?」「はい。実は、地獄の最高評議会から連絡がありました」「評議会から?」リリムの表情が強張る。「また、回収者が来るの?」「いえ、違います」神崎が首を振る。「むしろ、良いニュースです」「良いニュース?」「はい。リリムさんの活動が高く評価され、特別に表彰されることになりました」「表彰?」