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第6話

Author: 飛べないライスヌードル
退院して間もなく、白羽はオークションハウスからの招待電話を受けた。

そのことを柔音に伝えると、彼女は興奮して部屋に駆け込み、コーディネートを始めた。

しばらくして、彼はソファに座る南月を見て、まるで施しを与えるかのように口を開いた。

「君も来いよ。柔音に献血してくれた礼だ」

南月が断ろうとしたが、白羽は背を向けて自室へ戻った。

彼女に反論の隙すら与えなかった。

……

オークション会場では、柔音が興味を示した品はすべて、白羽が躊躇なく競り落とした。

だが南月は終始興味なく、一度も札を上げなかった。

次の瞬間、値千金のジュエリーのセットが現れ、会場が一気にざわめいた。

柔音は白羽に甘えた。「白羽、このジュエリーつけて、あなたの花嫁になりたいの」

それを聞いて、白羽はすぐに札を上げた。

最終的に二十四億円でそのジュエリーを競り落とした。

「藤村さんって、まさに愛妻家の鏡だよね」そんな声が会場であちこちから上がった。

南月はその一切に目もくれなかったが、次の瞬間、オークショニアの口から次の品が紹介された。

「続いての品は、非常に貴重な記念物です。十年前の戦闘で、中尾仰志(なかお あおゆき)将校が使用した銃弾の殻です」

中尾仰志……彼女の亡き父の名前だった。

南月は驚きに目を見開き、思わず顔を上げた。

目が潤み始めて赤くなり、次の瞬間、彼女は迷わず札を上げた。

白羽は札を上げず、ただ複雑な表情で南月を見ていた。

「六百万円、1回!

六百万円、2回!

落札!中尾さん、おめでとうございます……」

「待って!」

今まで無関心だった柔音が白羽の腕を掴み、甘えるように言った。

「白羽、あたしもあの弾殻ほしいなぁ。コレクションにしたい」

おそらくそれが南月にとって特別な品だと知っていたせいで、白羽は一瞬ためらった。

だが、柔音の期待に満ちた目を見て、彼は南月に向かって言った。

「南月、その品は諦めてくれ。他の欲しいものなら、全部買ってやる。でも、これは柔音のものだ」

南月の目に、悲しげな色が広がっていった。彼女は無言のまま、再び頑なに札を上げた。

その瞬間、白羽は顔が険しくなり、ある決断を下したように手を上げて空を指さして、この品を絶対に競り落とすジェスチャーを送った。

「えっ!藤村さんが空を指さしたぞ!ってことは、誰ももう競れないじゃん!完全勝利じゃん!」

「すげぇ、このジェスチャー初めて見たんだ!さすが愛妻家の鏡!」

どよめく会場の中で、南月の顔はどんどん青ざめていった。

彼はこの弾殻が彼女にとってどれだけ大切だと知っていたはずなのに、それでも……

南月の目から光が消え、彼女は涙を堪えながら頷いた。「わかった」

手に持っていた番号札を手放し、それと同時に、長年抱えていた白羽への執念も手放した。

南月は腰を屈めてバッグを持つと、白羽の驚きの目つきを無視して、会場を離れた。

携帯には航空券の通知が届いていた。明日の午後六時、腎臓を提供する予定の日だった。

南月はそれを見て、ほっと息をついた。

あと一日。

それが終わったら、彼女がやっと離れられた。

部屋に戻った南月は、手早く荷物をまとめた。

この家に十年以上住んでいたのに、置いていく物は柔音の物より少なかった。可笑しく思えるほどだった。

ちょうどスーツケースを閉め終えたそのとき、部屋のドアが勢いよく白羽に蹴り開けられた。

彼の表情は暗く、全身から発する圧が空気を凍らせた。

その鋭い視線はまるで人を突き通す利剣のようだった。

彼の声は氷のように冷たかった。「中尾南月、いつからそんな下劣な女になったんだ。欲しさのあまり、盗みに走るなんてな!」

南月は呆然とその場に立ち尽くしていた。問いかけようとしたが、白羽は彼女に言葉を発する隙すら与えなかった。

「弾殻が、君の父親の遺品だってことは知ってた。柔音が飽きたら渡すつもりだった。でも今の君を見ると、心底がっかりだ」

彼の怒りは全身を貫き、まるで氷のような声で吐き捨てた。

「こうなったのは、俺がちゃんと育てなかったからだ。君の両親に顔向けできない……だから、俺がちゃんとしつけてやる!」

白羽の体は怒りで震えた。彼は南月に近づいて、手を上げて彼女に平手打ちをした。

南月は衝撃で顔を横に向けられ、頬には真っ赤な手形が浮かんだ。頭がぼうっとして、目に浮かぶのはただ信じられない現実だった。

彼が彼女を叩いたのは、これが初めてだった。だがその理由は、根も葉もない濡れ衣だった。

その直後、白羽は病院からの電話を受けた。

「もしもし、小林さんのご家族の方でしょうか?小林さんが現在、ICUに運ばれています。すぐにご来院ください」

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