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愛は遅く、情は儚く
愛は遅く、情は儚く
Autor: 観月明

第1話

Autor: 観月明
結婚式当日、本来なら私たちのウェディングフォトが流れているはずのスクリーンに、突然、渡辺湊(わたなべ みなと)と彼の女友達である中村美咲(なかむら みさき)のキス写真が映し出された。

美咲は列席者の席から立ち上がり、口元を押さえながら、無邪気で罪のない顔で笑った。

「みなさん、誤解しないでね。ただの悪ふざけだから。私と湊は小さいころから一緒に育ってきたの。私、いわば彼の第二の嫁みたいなものなの」

湊は笑いながら、小声で私に言った。

「こいつ、そういう性格なんだよ。思ったことをそのまま口にするだけだし、気にするな」

私は静かに彼を見つめた。

「私たちの結婚式で、あなたたちのキス写真を流して、自分はあなたの第二の嫁だなんて言う。それが悪ふざけだっていうの?」

湊は私を見て、苛立たしげに眉をひそめた。

「たかが何枚か写真を流しただけだろ?俺たち、五年も付き合ってきたんだぞ。こんな些細なことでそこまで執着して、いつまでも責め立てるつもりか?」

私は手を上げて、彼の言葉を遮った。

「そうよ、私は執着して、いつまでも責め立てるつもりよ……」

こんなふうに強い態度を取る私を見たことがなかったのか、彼は一瞬、呆けたように固まった。

私は振り返り、会場を埋めた列席者たちに向かって、はっきりと告げた。

「この結婚式は、ここで終わりです」

その言葉が落ちた瞬間、湊の顔色は見る間に沈んだ。

彼は私の手首をつかんだ。

「小林七海(こばやし ななみ)、いい加減にしろ」

声を低く押し殺していたが、その口調には抑えきれない怒りがにじんでいた。

「今日は何の日だと思ってるんだ。よりにもよって今、この場で駄々をこねるつもりか?」

私は彼と言い争おうとはせず、ただ力を込めて彼の指を一本ずつ外し、この吐き気のする結婚式会場から出ていこうとした。

けれど彼はまた手を伸ばし、今度は私の腕を乱暴につかんで、無理やり引き戻した。

「たかが何枚かの写真に、たった一言の冗談だぞ。そこまで大ごとにする必要があるのか?」

その声には、うんざりしたような響きが満ちていた。

「もう少し場をわきまえることはできないのか?今日はこんなにたくさんの親戚や友人が来てるし、両家の親だっているんだぞ。結婚式でこんな騒ぎを起こして、周りに俺たちのことをどう思わせたいんだ?」

私は勢いよく振り向いて彼を見た。

「騒ぎだって?湊、目を見開いてよく見て。いったい誰が、私たちの結婚式で騒ぎを起こしてるの?」

大スクリーンには、目に刺さるようなキス写真がまだ消されないままだった。

写真の中で、彼と美咲は抱き合い、唇を重ね、隙のない親密さをさらしていた。

彼の視線がわずかに揺れ、口調も少しだけ和らいだが、それでも言うことは結局同じだった。

「あれは前に負けた罰ゲームだったんだ。みんな酔ってたし、何もなかった。七海、俺たち五年の付き合いだぞ。その程度の信頼すら、俺にくれないのか?」

彼は少しだけ頭を下げ、珍しくなだめるような態度を見せた。

「もうすぐ指輪の交換なんだ。何があっても、式が終わったらちゃんと時間をかけて説明するから、今はそれでいいだろ?」

私は眉をひそめて彼を見た。

「湊、五年よ。私がずっとあなたを信じてた。それに、あなたが一度でも本気で説明してくれたことなんてあった?」

二人きりで映画を見に行った。

深夜に電話をして、明け方まで話し込んだ。

美咲が病気になれば、彼は私を置いて彼女のもとへ駆けつけた。

二人の距離感は、とっくにただの友達の範囲を越えていた。

どれだけ私がそのことで彼とぶつかっても、彼はいつも適当にあしらって、「俺を信じろ」としか言わなかった。

なのに今日は、私たちの結婚式で、彼女はキス写真を衆目にさらした。それでもなお、彼は私に自分を信じろと言うのだ。

湊は私に問い詰められ、しばらく言葉を失った。

数秒の沈黙のあと、彼はまた、吐き気がするほど聞き飽きたあの理屈を持ち出した。

「七海、お前の家庭のことがあるから、安心できなくて、敏感で、疑い深くなるのは分かってる。責めるつもりもない。だけど、そのせいで俺たちがずっと楽しみにしてきた結婚式を台無しにはしてほしくないんだ」

五年。

まる五年。

私が美咲のことで腹を立てるたび、彼はいつも私の家庭のことを持ち出した。

家庭に恵まれずに育った私を気の毒がっているような顔をして、愛情に飢えているからだ、不安になりやすいからだ、疑い深くて、悪い方へ考えすぎるんだと、理解あるふうに言ってみせた。

だから私は、何度も夜の闇の中で、自分が本当に神経質すぎるのではないかと疑った。

けれど今になって分かった。

そうじゃなかったのだ。
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