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第1210話

Author: 楽恩
南は手を伸ばし、来依の肩を軽く叩いた。

「分かってるわ、だって血の繋がった妹だもんね。でも紀香ちゃんは賢くて、強い子よ。ちゃんと自分で自分を守れると思う。

心配する気持ちはわかる。でもね、自分の体もちゃんと労って。あの子が戻ってきたら、そのときたっぷり愛してあげなきゃ」

……

紀香は島を一周してみた。

山の上にはヘリポートがあり、ヘリコプターが二機停まっていた。

海には大きなクルーズ船も浮かんでいた。

けれど、自分には操縦なんてできない。どれに乗っても逃げ出すことはできない。

結局、彼女は「来てしまった以上は仕方ない」と腹をくくった。

問題があればその時考える、なければ、今はこのままでいい。

「奥様、実咲さんからお電話です」

紀香が洋館に戻ると、針谷がスマホ電話を差し出した。

彼女は「実咲」という名前を聞くと、すぐに受け取った。

「実咲ちゃん?」

「無事でよかった……」実咲の声には安堵が滲んでいた。そしてすぐに謝った。

「ごめん、あんなにお酒を飲むんじゃなかった……」

「あなたのせいじゃないよ」

清孝が連れて行くつもりだった以上、実咲がたとえ正気だったとしても、止められるわけがなかった。

たった一人で、針谷相手にどうやって戦えるというのか。

紀香は逆に彼女を慰めた。

「最近は大阪に戻って、スタジオの場所や新居を見ておいて。姉にもいろいろ相談して、心配しすぎないように伝えて。私は大丈夫だから」

実咲はすぐに頷いた。

「分かった。先生も気をつけて。またね」

「うん、そっちもね」

紀香は電話がどうやって繋がったのか、あえて聞かなかった。

どうせ清孝の許可がなければ、誰とも連絡できないのだ。

――つまらない。

「奥様、お食事の準備ができました」

紀香はダイニングへ向かった。空腹を我慢する理由など、どこにもない。

針谷は彼女の後ろを少し距離をとって歩きながら、控えめに口を開いた。

「奥様……旦那様も無理やり閉じ込めてるわけじゃないんです。ただ、他に方法がなかっただけで……

ただ、一度だけでもチャンスが欲しかっただけなんです」

紀香は彼を一瞥し、冷静に言い返した。

「私もチャンスが欲しかった。なのに、彼はそれをくれなかった」

針谷は口を滑らせたことを後悔した。

「奥様が望むことがあれば、旦那様は何でも叶えよう
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