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第1176話

Author: 金招き
「キスされたり、噛まれたりした痕よ」

憲一の瞳がわずかに赤くなり、喉仏が上下に揺れた。

「私の体の隅々に残る傷痕は、あの時の出来事を思い出させるの。忘れられない。これは一生、私を縛る悪夢になる。……あなたも、そんな苦しみに苛まれたいの?私と抱き合うたびに、この痕が目に入る。

そのたび、あなたは思い出すのよ、私に起きたことを。本当に、少しも心が揺れないの?少しも気にならない?……自分を騙さないで。あなたはただの人間よ。神様じゃないんだから」

憲一は彼女を見据え、低く問いかけた。「俺がさっき、嫌だと言ったか?」

由美は一瞬言葉を詰まらせ、それから吐き捨てるように言った。「ただ欲望に支配されてるだけよ」

「いいさ、それなら欲望で構わない。俺は君を欲している。君を手に入れたい。それじゃ駄目か?」

彼は由美の顎を指で掴んだ。

「愛を語りたくないなら、やめよう。欲望だけでいい」

由美は目を閉じ、静かに答えた。「……分かった。いいわ」

──もう、はっきり言ったのに、それでも彼は諦めない。

もう他の術はない。

いずれ彼も飽き、自身の執着の正体に気づくだろう。

「分かったわ。その代わり、星を連れてきて」

由美は振り返り、床に落ちていた破れた服を拾ったが、とても着られる状態ではなかった。

そこで、彼女はベッドのシーツを引き寄せ、体に巻き付けた。

憲一は耳を疑った。

あまりに突然の承諾――すぐには飲み込めなかったのだ。

「約束だ……」

その声は震えていた。

抑えきれぬ昂ぶりが滲んでいた。

「星に会わせて」由美は淡々と告げた。

「少ししたら連れてくる」

彼は彼女を見つめて言った。

「……休め」

由美はベッドに座ったまま、返事をしなかった。

彼の心遣いには応えようとしなかった。

憲一は、そんな態度を気にしなかった。

──彼女が受け入れた。

ということは、二人の関係がさらに進展する可能性を示している。

それだけで十分だ。

……

由美は眠るつもりなどなかった。

けれどもシーツにくるまったまま、いつの間にか眠りに落ちていた。

目を覚ましたのは、憲一が星を連れて戻った時だった。

物音に気づき、彼女は慌てて服を着替え始めた。

彼女が手早く服を着ようとしているのを見て、憲一は言った。「ゆっくりでいい。焦るな。星はもう帰ってきた。これ
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