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第170話

Auteur: 年緒
すべての発端は、怜が、あのいつも近寄りがたい和樹と二人きりで、屋上ランチをしているところを誰かに見られたことだった。

それ以来、校内では怜と和樹は付き合っているらしいというひそかに噂が広がった。

怜は成績もよく、家柄のいいお嬢さまだとも思われていて、二人が一緒になれば、周囲が勝手に盛り上がるのも無理はない。

多くの生徒が、まるで漫画みたいな学園恋愛の始まりだと浮き足立っていた。

ところが、その空気は長くは続かなかった。

怜の成績は急に落ち込み、さらにお嬢さまという評判まで怪しくなった。

挙げ句の果てには、校内スタジオで和樹に公開告白して、その場であっさり振られてしまった。

あのときようやく皆は悟った。

和樹が屋上で怜と昼を食べたのは、ただ単に彼女の弁当が気に入っていただけだ。

そうして怜に向けられていた周囲の見方も一気に変わり、誰もが勝手に夢見ていた学園の美しい恋物語も、そこで完全に終わった。

――だが、今この瞬間。

ダンスフロアの青いドレスの姫は、まっすぐ和樹のほうへ歩いた。

その光景に、周囲は思わず息をのんだ。

まさか、和樹に声をかけるつもりなのか。

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  • 断ち切るのは我が意   第170話

    すべての発端は、怜が、あのいつも近寄りがたい和樹と二人きりで、屋上ランチをしているところを誰かに見られたことだった。それ以来、校内では怜と和樹は付き合っているらしいというひそかに噂が広がった。怜は成績もよく、家柄のいいお嬢さまだとも思われていて、二人が一緒になれば、周囲が勝手に盛り上がるのも無理はない。多くの生徒が、まるで漫画みたいな学園恋愛の始まりだと浮き足立っていた。ところが、その空気は長くは続かなかった。怜の成績は急に落ち込み、さらにお嬢さまという評判まで怪しくなった。挙げ句の果てには、校内スタジオで和樹に公開告白して、その場であっさり振られてしまった。あのときようやく皆は悟った。和樹が屋上で怜と昼を食べたのは、ただ単に彼女の弁当が気に入っていただけだ。そうして怜に向けられていた周囲の見方も一気に変わり、誰もが勝手に夢見ていた学園の美しい恋物語も、そこで完全に終わった。――だが、今この瞬間。ダンスフロアの青いドレスの姫は、まっすぐ和樹のほうへ歩いた。その光景に、周囲は思わず息をのんだ。まさか、和樹に声をかけるつもりなのか。あの和樹に――そんなことができるなんて、どれほどの度胸がいるだろう。けれど、今夜の青い姫には、それだけの華がある。まさに今夜いちばん目を引く存在だ。とはいえ、誰もその正体が怜だとは思っていない。あれほど大勢の前で恥をかいた本人が、また人目の集まる場所に現れるはずがない――皆そう思い込んでいたのだ。怜はスカートの裾をつまみながら、一歩ずつ和樹へ近づいていくにつれて、胸の鼓動はどんどん速くなった。今度こそ、絶対に失敗できない。成功しなければ意味がない。今夜会場に入ってからというもの、怜の視線はずっと和樹だけを追っている。似たような服装の男子が大勢いる中でも、彼だけは一目で分かった。同じように仮面をつけていても、それでも和樹だとすぐに分かった。怜にはまだ、和樹が自分だと気づいているのかどうかは分からない。けれど、さっきまで彼はずっと自分の踊りを見ている。それだけで、少なくとも興味は引けている――怜はそう信じた。やがて怜は、和樹の目の前までたどり着いた。彼女は何も言わず、ただ片手をそっと差し出した。それは、ダンスに誘うしぐさである。その瞬間

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