LOGIN部屋の熱気は冷める気配を見せなかった。
荒い吐息の甘い匂いと、焼きつくような陽気が狭い一室を満たしていた。蓮花は真鍮の小箱から掌ほどの針筒を取り出した。中には純度の高い白銀で鍛えられた銀鍼が納められていた。
「丹田と会陰穴に針を打ち、火気を分散させます。少々ちくりと痛みますゆえ、動かないでくださいまし」
手の甲が火傷しそうなほどの熱気に耐えながら、蓮花は針を立て、パンパンに張った下腹部のツボへと慎重に突き立てた。
ジュウウッ――!
肌に触れた途端、白い煙が立ち上り、銀鍼は高熱に耐えきれずに飴細工のようにぐにゃりと曲がってしまった。
「……!」
蓮花の顔色が生白く強張った。単なる逆上せや熱の病の類ではない。人間の気血を貪り食らう淫魔の呪い、換陽の術による毒気だった。
「針ではツボを通せません。金属が保たずに溶けてしまいます」
蓮花は曲がった針を脇へ置いた。道真はその先端から目を離せなかった。溶けた銀が己の肉から絞り出されたかのようで、吐き気を催す。
「その針で……二度と刺すな」
「私にも目はついております。通らぬ方法を繰り返すつもりはありません」
蓮花の返答は素っ気なかったが、針筒を閉じる手つきに迷いはなかった。
「で、では……私はこのまま、血脈が破裂して死ぬというのか?」
道真は血走った瞳で蓮花を見上げた。汗に濡れた黒髪が額にへばりつき、紅潮した頬は痛々しいほどに艶めかしかった。下腹を掻きむしりながら喘ぐ男の丹田は、今にも張り裂けそうに膨らんでいた。股間の剛直は小上がりの上に斜めに横たわり、先走りの蜜を滴らせながら蓮花の膝へと向いていた。
蓮花は針筒を置き、ごくりと唾を呑み込んだ。
「手立てが、たった一つだけございます。私の体質を用いた『外治(げち)』です」
「が、外治だと……? それは一体、何をするのだ」
「針が通らぬ以上、私の手で若様の陽気を直接搾り取り、外へと排出させるしかありません」
道真は雷に打たれたかのように目を白黒させた。
「狂ったか……! 賤しい長屋の娘が、名門の当主のモノを握って弄ぶなど……断じて、断じて許されぬ!」
「ではそのまま破裂してお死になさい。私も部屋中を血塗れにされるのは御免ですから、さっさとお引き取りを」
蓮花が背を向けようとした瞬間、肥大化した魔物がドクンと跳ね、道真の五臓六腑を締め上げた。亀頭の先端が虚空で痙攣し、熱い先走りをもう一筋吐き出す。
「ぐあああっ! がっ……ごほっ……!」
道真は胸を掻きむしり、小上がりから転げ落ちそうになった。男は震える手で、蓮花の裾を必死に掴み取った。
誇りも体面も、命の危機という激痛の前には塵と消えた。
「た、頼む……やってくれ……助けてくれ……っ!」
蓮花はため息をつき、道真の膝を押し広げてその間に腰を下ろした。太ももの内側が汗でぬらぬらと光っていた。彼女の小さくひんやりとした両手が、怒り狂う魔物の根元を隙間なく包み込んだ。両手を添えても余る太さだった。掌が表皮に密着した瞬間、熱い血管が蓮花の手のひらの皺を一本ずつ押し上げていく。
「ひあぁあああ――ッ!」
掌の圧迫感に、道真の背が弓なりに反り上がった。蓮花の冷たい手が、煮えたぎる表皮をゆっくりと撫で上げた。根元から亀頭まで一度撫で上げるのに、息が三度乱れる。手が亀頭の縁に触れると、道真の踵が床から跳ね上がった。
ぬちり、じゅぷ……。
先端から溢れ出た粘りつく先走りの蜜が潤滑油となり、蓮花の掌の中で湿った水音を立てた。握りがきつく締まるたび、先端の孔が開き、熱液が指の間からとろりと溢れ出る。蓮花は手首を回さず、一定の速さで搾り上げるように上下に扱き続けた。
「はぁっ、あぁ……っ! は、早すぎる……蓮花、頼むから……っ!」
道真の哀願に涙が混じり始めた。蓮花は親指で張りつめた亀頭の窪みをじっと押し込みながら、一定のリズムで握りを緩めては締め上げた。極陰の冷気が道真の沸き立つ血管を駆け巡るたび、男は脳が蕩けていくような快楽の底で激しく悶えた。腰が勝手に蓮花の手へと突き上げられる。
「目を閉じてはなりませぬ、若様。気を外へと押し出すのです」
「くぅ……我慢できぬ……中で何かが……弾け飛んでしまう……っ、あぁあああっ!」
道真の腰が猛烈に跳ね上がった。蓮花が根元を搾り込み、亀頭の先まで一気に扱き上げると、先端のスリットがぱっくりと開いた。
ビュルルッ――! ドクドクドクッ――!
抑え込まれていた魔界の陽気が、蓮花の手と袖、そして部屋の床へと怒涛の勢いで噴き飛んだ。白濁した熱い精液が、蓮花の頬にまでピシャリと飛び散る。一筋では終わらなかった。腰が跳ねるたび、太い白濁の奔流が立て続けにほとばしり、手の甲、着物の胸元、小上がりの敷布を白く染め上げていく。果てしなく続く射精感に、道真は白目を剥いて痙攣した。
「はぁ……あぁ……うっ……」
丹田の地獄のような高熱が抜け出ると、道真の首は横へと力なく折れ、意識を失った。極太に膨れ上がった巨根は、未だ異様な太さを保ったまま、蓮花の掌の上で力なく横たわっていた。
ブスッ――!ついに巨大な魔物の丸い亀頭が、蓮花の狭い秘谷の入り口を引き裂かんばかりに押し入った。「あぁあああっ――ッ!」蓮花の口から、引き裂かれるような悲鳴がほとばしり出た。純潔の赤い血が、白く強張った太ももを伝ってツゥと流れ落ち、絹の敷布を赤く染めた。真っ赤に焼けた鉄の杭で下腹部を貫かれたかのような、殺人的な激痛。蓮花の全身が弓なりに反り返り、小刻みに痙攣した。「蓮花――ッ!」道真の目から血の涙がこぼれ落ちた。男は蓮花の華奢な肩を砕けんばかりに抱きしめ、己の唇を強く噛み締めた。己の罪と呪いが、この何の罪もない若い娘を傷つけているという罪悪感に、胸が張り裂けそうだった。「もうやめよう……抜け……私が死ぬ! 私が死ねば済むことだ……っ!」「動……かないでくださいまし……っ! はぁっ……あぁっ……!」道真は蓮花の言葉を聞こうと首を垂れた。普段ならどんな小さな物音にも一喝していた男が、今はひとつの返事を聞き逃すまいと息すら殺していた。「聞いておる……そなたの言うことは、すべて聞いておるぞ」蓮花は彼の肩に置いた手を離さなかった。道真はその手を払いのけも急かしもせず、彼女が顔を上げるのをじっと待った。蓮花は道真の肩に爪を食い込ませながら涙を流した。しかし退きはしなかった。女は震える腰をゆっくりと、ほんの少しずつ、さらに下へと沈め続けた。ミシミシ……。蓮花の狭く冷たい内壁の粘膜が、凶暴な巨根の太い柱を一寸、また一寸と呑み込み始めた。想像すらしたことのなかった、巨大で圧倒的な大きさ。まるで鍛え上げられた鉄の杭が、狭い隙間を力づくで押し広げて入ってくるかのような圧迫感に、蓮花の額にびっしりと脂汗が浮かんだ。しかし肉壁が押し広げられる激痛の合間から、道真の剛直から放たれる熱い脈動が、女の子宮口をドクンドクンと激しく叩き、言葉にできぬ戦慄を呼び覚ました。その瞬間、奇跡が起こった。ジュウウッ――!道真の巨根から噴き出していた黒魔術の殺人的な火魔が、蓮花の体内深くに眠っていた純粋な極陰の霊気と、正面からぶつかり合ったのだ。氷のような女の内壁が煮えたぎる巨根を締め上げ、丹田を焼き尽くしていた呪いの魔気を猛烈に吸い込み始めた。「ひあぁあああ――ッ!」道真の背筋が虚空へと跳ね上がった。男は白目を剥いた。外治や接治とは次元の異なる、魂の底まで溶かしてしまうよ
道真の熱い愛撫に、蓮花の全身が気だるく火照っていった。生涯、冷たい極陰の体質として生きてきて、一度たりとも感じたことのなかった凄まじい熱気だった。蓮花の秘めやかな秘谷(ひこく)の隙間から、澄んだ透明な愛液が露のように滲み出始めていた。冷たい極陰の霊気が凝縮されたその神秘的な露は、猛烈に燃え盛る道真の火魔を吸い取るための、自然な本能の現れであった。部屋の中にはほのかな艾の香りと共に、咲き初めの花蕾から漂うような、甘く湿った陰気の匂いが濃密に立ち込めていた。蓮花は太ももの内側を伝い落ちる熱く冷たい感触に、下腹部を小刻みに震わせた。「はぁ……あぁ……若様、もう……」蓮花は荒い息を吐きながら、道真の広い胸板に手をついてゆっくりと身を起こした。月明かりの下に晒された蓮花の裸身は、聖なる巫女のように神秘的な光を放っていた。道真は夜具の上に仰向けに横たわったまま、血走った目で蓮花を見上げていた。男の股間から黒々とそそり立つ魔物は、もはや人間の限界を遥かに超越して煮えたぎる脈動で部屋の空気すら震わせていた。拳ほどもある亀頭の先のスリットがヒクヒクと蠢き、赤黒い熱液を虚空へとポタポタと滴らせていた。「れ、蓮花……本当に……耐えきれるのか……?」道真の声が羞恥と恐怖で震えていた。道真は答えを急かさなかった。蓮花が顔を上げるのを待ち、唇を固く引き結んだ。普段なら何であれ自分が先に口を開かねば気が済まなかったが、今は彼女の言葉を聞かねばならなかった。蓮花もまた、彼から視線を逸らさなかった。あの狭くか細い生娘の肉体の中へ、このおぞましい凶器をねじ込まねばならぬという罪悪感に、男の目頭が再び赤くなった。蓮花は答える代わりに、華奢な手を伸ばし、煮えたぎる巨根の根元をがっしりと鷲掴みにした。女の冷たい手のひらが触れただけで、道真の全身を雷が貫いた。「く、うぅっ……蓮花……触るな……破裂してしまう……っ!」男は両手で敷布を爪が砕けんばかりに握り締め、腰をガタガタと震わせた。武士の体面も威厳もすべて溶け落ち、ただ蓮花の手つきに救いを乞う無様な姿だった。蓮花は道真の逞しい太ももの上に、慎重に足を押し広げて跨がった。武家の体面と厳格な掟が支配していたこの国で、一介の裏長屋の鍼医が、高貴な奉行の腰の上に全裸で跨がるという奇天烈な光景。しかし二人の瞳の奥には、体面などすでに存在しな
奥座敷の奥、冷たい夜風が障子を揺らす中、二人の男女は夜具の上に向かい合って座っていた。道真の荒く熱い息遣いと、蓮花の静かな心臓の鼓動が、狭い部屋を満たしていた。道真は蓮花の白玉のような鎖骨と豊かな乳房を目の前にしながらも、恐れ多くて触れることもできず、拳を握っては開き、ガタガタと震えていた。部屋いっぱいに漂う洗い清めた肌のほのかな香りと、女の甘い匂いが男の鼻腔をくすぐった。潔癖症で他人の手に触れることすら嫌っていた堅物だったが、今、目の前に広がる女の純潔な体は、目が眩むほどに美しかった。男の涼やかだった目元は、血走りと涙で濡れそぼっていった。「蓮花……」男の声は湿り気を帯び、黒曜石のような瞳には切ない悲しみが満ちていた。「痛むであろう……骨を削るように、痛むはずだ……」道真は震える指先を持ち上げ、蓮花の頬にかかった後れ毛を、そっと耳の裏へと撫で流してやった。武士の手つきとは思えぬほど、限りなく優しく、切ない手つきだった。「生涯、遊郭の敷居すら跨がなかった私が、初めての女であるそなたに、このようなおぞましい苦痛を与えることになるとは……己がたまらなく憎い」「若様も、くだらぬ心配をなさいますね」蓮花は赤くなった顔を隠そうとわざと鼻を鳴らしたが、男の心からの思いやりに目頭がツンと熱くなった。「これも若様が生涯、操を守り抜かれたからではありませんか。無頼漢のように女遊びをなさっていたら、こんな換陽の術の呪いになどかかりませんでしたよ」「この期に及んで、軽口を叩くか……」道真がフッと湿った笑みをこぼした。笑いは長く続かなかった。道真は再び引き締まった蓮花の表情を見て、言葉を呑み込んだ。「怖くないなどとは言わなくてよい」蓮花が顔を上げた。「なら若様も、平気なふりなどなさらないでください。私の問うことには、ちゃんとお答えくださいね」道真が短く頷いた。その刹那、道真の胸元の心臓のあたりから、再び赤黒い炎が閃き、巨根が暴れ狂った。「くっ……!」道真が呻きを呑み込んで腰を折ると、蓮花は迷うことなく道真のうなじを抱き寄せた。「我慢なさらないで、若様」蓮花の赤く湿った唇が、道真の渇ききった唇へと重ね合わされた。んむっ、じゅるり……。冷たく甘い女の唾液が、道真の焼け焦げそうだった舌と喉の奥へと流れ込んだ。道真は蓮花の細い腰を抱きしめながら、女の口
奥座敷の奥、行灯の炎が消えゆく薄暗がりの中で、張り詰めた静寂が流れていた。床に脱ぎ捨てられた蓮花の着物の向こうに、月明かりを吸い込んだ女の白い肢体が眩いばかりに浮かび上がっていた。豊かな乳房と引き締まった腰、そして白い太ももの間からかすかに立ち上る、極陰の冷たい霊気。その純潔で神聖な姿を前に、血の涙を流して喘いでいた久世道真の心臓が、止まりそうなほど激しく跳ねた。「れ、蓮花……そなた、何を……!」道真は張り裂けそうな下腹部の激痛の中にあっても、ガタガタと震える手を伸ばし、床に落ちていた己の羽織を引き寄せて蓮花の身体を覆い隠そうとした。男の白玉のようだった手の甲は血管が破れて血泡で汚れ、唇は血まみれになって激しく震えていた。「ならぬ……着物を着ろ……早く着るのだ……!」「若様、状況をよくお考えなさい」蓮花は道真が差し出した羽織を容赦なく払い退け、男の太ももの間に膝をついて擦り寄った。女の冷たい膝が、道真の煮えたぎる太ももの生肌に触れた瞬間、ジュウと音を立てて白い湯気が立ち上った。氷河と溶岩が正面から衝突したかのような凄まじい気の激突に、道真の背筋が総毛立った。男は目の前がグルグルと回るめまいの中でも、蓮花の白くか細い肌から視線を逸らすことができなかった。武家の規範の中で生涯、罪深いものと見なしてきた女の裸身が、今この瞬間には、己の命を救い出してくれる唯一の神聖な菩薩のように輝いて見えた。「若様の胸に刻まれた、あの腐った斑点をごらんなさい。『血火の呪殺』の魔気は、すでに心臓のすぐそばまで入り込んでおります。手で揉みしだいたり、唇を重ねる接治ごときでは、あの凶暴な火魔をほんのひとときも鎮められませぬ」蓮花の澄んだ揺るぎなき瞳が、道真の血走った目を真っ直ぐに見据えた。「体内に溢れ返るあの恐るべき淫魔の陽気を、私の体の一番深い場所へと丸ごと受け入れ、溶かし去るしかありませぬ。ただ『合治(ごうち)』だけが、若様を生かすことができるのです」「ならぬ……それだけは、断じてならぬ!」道真が血の涙を流しながら首を横に振った。自害をも覚悟した、凄絶な絶叫だった。「私の股間に埋め込まれたこの化け物を見よ! これが本当に、人の体に入るような代物か!」道真は自らの股間を指差し、大粒の涙をポロポロとこぼした。黒鉄のように黒々と変色した魔物は大人の男の腕よりも太く、凶
息が喉元まで詰まった。道真の強靭な握力が、蓮花の首をへし折らんばかりに締め上げていた。男の瞳は血の色に染まって焦点を失い、唇の間からは獣のような唸り声とともに、黒い血泡が垂れ流されていた。「グルルル……引き裂け……殺せ……焼き尽くせ……!」人間の言葉ではなかった。黒魔術の殺気に魂を呑み込まれた、淫魔の咆哮だった。道真の黒々と燃え盛る巨大な魔物が、蓮花の小袖の裾を容赦なく踏み荒らし、太ももの間へとめり込もうとしていた。このままでは蓮花の首がへし折られるか、あるいは化け物のような剛直に下腹部を貫かれて無残に命を落とす、絶体絶命の瞬間。しかし蓮花は暴れる代わりに、震える手を持ち上げ、道真の血に汚れた頬を優しく包み込んだ。「若様……」涙をいっぱいに湛えた蓮花の澄んだ声が、静寂を切り裂いた。「久世道真様……正気を取り戻してくださいまし。私の父の無実を明らかにし、私を守り抜くと誓ってくださった、あの気高い若様はどこへ行かれたのです……!」その切なる呼びかけが、道真の魂の底へと届いたのだろうか。一瞬、殺気にギラついていた道真の血走った瞳が、大きく激しく揺らめいた。「れ……れん……か……?」道真の喉の奥から、絞り出すように掠れた声が漏れ出た。首を締め上げていた男の指先が小刻みに震え、力なくほどけて落ちていった。その一瞬、奇跡のように道真の理性が水面へと浮上したのだ。道真は自らの血まみれの手を見下ろし、生まれたての小鹿のように震えながら声を上げて泣いた。「わ、私が……何という真似を……ごほっ! ぐあああっ!」道真は自らの頭を掻きむしり、畳に額を打ちつけた。男の鼻と唇から、赤黒い血が噴水のように噴き出した。五臓六腑を焼き尽くす黒魔術の火魔が、心臓を丸ごと呑み込もうとしていた。「に、逃げろ……蓮花……頼む……っ!」道真は血の涙を流しながら、蓮花を戸の外へと押し出そうとした。「私がそなたを……殺してしまう……! 獣となって、そなたの体を八つ裂きにしてしまうのだ……早く逃げろ……頼むから、私を見捨ててくれ……っ!」己が激痛に苛まれ死に瀕しているその瞬間すら、ただ蓮花が傷つきはしないかと恐れ、血を吐きながら逃げろと絶叫する男。その凄絶な叫びを耳にしながら、蓮花の目から熱い涙がボロボロとこぼれ落ちた。もはや退く場所など、どこにも残されていなかった。外治で手を
江戸・山の手、久世家の屋敷の奥座敷。部屋の空気が一段と冷え込んだかと思うと、行灯の炎が一斉に青白い光を放ってプルプルと震え出した。「ぐあああっ――ッ!」苦しげに身悶えていた道真の口から、引き裂かれるような断末魔が迸り出た。男は寝床の上を転がり回り、自らの胸元を爪で狂ったように掻きむしった。「わ、若様?! いかがなされたのです!」驚いた蓮花が道真の肩を必死に掴もうとしたが、道真の肌から噴き出す殺人的な高熱に掌が火傷しそうになり、悲鳴を上げて手を引いた。男の全身は、まるで真っ赤に焼けた鉄の塊のように白い湯気を噴き上げていた。道真の白玉のようだった肌は血の色に染まり、額やこめかみには張り裂けんばかりの太い血管が異様に浮き上がってドクンドクンと脈打っていた。「あ、熱い……! 胸が……内臓が焼け焦げていく……っ、ぐあああっ!」道真の顔色は土気色を通り越して灰白色へと変わり、切れ長の瞳は血走るどころか目玉が飛び出さんばかりに充血していた。さらに恐ろしい異変が、男の生肌の上に巻き起こっていた。左の鎖骨の下の古傷のあたりから、腐った血を思わせる黒赤い斑点が、まるで生きた百足のようにうなじと顎の下へ向けて、凄まじい勢いで這い上がっていたのだ。ジュウッ、パチパチッ――!斑点が触れる肌が黒く焦げつき、肉の焼ける異様な悪臭が立ち込めた。かつて名医であった父・江田泰秀が厳重に警告していた宮中最高の禁忌の邪術、人の気血を黒魔術で汚染し、自らの肉を腐らせて死に至らしめる「血火の呪殺」の凄惨な兆候だった。単なる陰陽の乱れではない。命を奪うための純粋な呪詛の猛毒だった。蓮花は斑点が広がる部位を確かめた。以前も熱が上がれば肌が赤くなったが、今の色合いはまるで違っていた。さっきまで眠る顔を拭っていた手拭いが、手のひらの中でぐしゃりと握り潰された。その短い合間に何が変わったのかを見極めねばならなかった。蓮花は道真の名を呼び、瞳の動きを確かめた。それと同時に、道真の羽織と下着の内側で、魔物が制御不能となって暴れ狂い始めた。バキッ、バリリッ――!丈夫な絹の肌着が悲鳴を上げ、粉々に引き裂かれた。露わになった巨根の姿に、蓮花は息を呑んで後ずさりした。昼間までは赤く硬かった代物が、今や黒鉄(くろがね)のように黒々と変色していたのだ。太さは大人の男のふくらはぎほどに肥大化し、青黒い血管