LOGIN朝霧がうっすらと晴れ、障子の桟の隙間から青白い朝の光が差し込んできた。道真は全身を棍棒で打ち据えられたかのような鈍痛と、酷い脱力感に苛まれながら、ゆっくりと目を開けた。喉がカラカラに渇ききり、咳すら出ない。
「う……うぅむ……」
道真が呻き声を漏らしながら身を起こそうとして、その場で凍りついた。
股間が、すうすうと寒々しい。
下を見下ろした道真の顔色は一瞬にして土気色へと変わった。上等な絹の肌着は足首までずり落ちており、板間と小上がりの敷布の上には、昨晩撒き散らした白濁した熱液の跡が白々とこびりついていた。幸いにも、昨日のように天を衝いていた魔物は力を失い、大人しく横たわっている。
しかしその大きさは、常の道真の端正なモノとは比べ物にならぬほど、依然として不気味な太さを誇っていた。萎えていても太ももを覆い隠すほどの偉容である。
「お目覚めですか、若様?」
部屋の片隅で薬湯を煎じていた蓮花が、土瓶を置いて振り返った。彼女の粗末な小袖の胸元には、昨晩浴びせかけられた白濁の染みがくっきりと残っていた。それを目にした道真の耳の付け根までが、カッと真っ赤に燃え上がった。
昨晩の破廉恥極まる記憶が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。賤しい鍼医の手の中で女のように甘い嬌声を上げ、命乞いをしながら彼女の手のひらに大量の精をぶちまけた己の醜態。道真は震える手で破れた衣服をかき集めて前を合わせ、壁際へと後ずさりした。
「き、貴様……私に何をしたのだ!」
「何をした、ですって? 命を助けて差し上げましたのに、恩を仇で返すおつもりですか?」
蓮花は呆れたように湯呑みを道真の前にコトンと置いた。
「一晩中、手首が痛むほど搾り出して差し上げなければ、若様は今頃、下腹部が破裂して閻魔大王の前に土下座しておいででしたよ」
「そ、その減らず口を引き裂いてくれる……! よくも武家の当主にそのような下品な言葉を……っ!」
「下品なのは私ではなく、昨晩私の手のひらに向かって『蓮花、頼む』と涙も鼻水も垂れ流していたお奉行様ご自身でしょうに」
蓮花は眉ひとつ動かさず、涼しい顔で言い返した。その堂々たる正論に、道真は胸が押し潰されるような屈辱に息を詰まらせた。反論したくとも、何ひとつ間違っていなかった。手のひらに白濁を吐き散らす瞬間、自らの口がその名を甘く呼んでいたことが鮮明に思い出されたのだ。
「ち、治療代は十分に払う。私の懐に……」
「お代は当然いただきますよ。天下の礼参奉行様のお命を救ったお代ですもの、まさか銭数文で誤魔化すおつもりではないでしょうね?」
蓮花が手のひらをスッと差し出した。道真は屈辱に唇を噛み締め、懐の隠し入れから百両相当の銀塊と手形を取り出し、床へと投げつけた。
「これで……その口を永遠に噤め。昨晩のことは夢にも口外してはならぬ。よいな!」
「まあ、百両も。さすがは大身の殿様、気前がおよろしいことで」
蓮花は満面に笑みを浮かべ、銀塊を拾い上げて懐に収めた。道真は深編笠を目深に被り、逃げるように戸口へと退いた。
蓮花は追って引き止めようとはしなかった。敷居に立った道真が一度振り返った時も、彼女は湯呑みを片付ける手を動かしていた。道真は何か言いかけて口を閉ざした。礼のひと言でも口にすれば、昨夜の醜態を自ら認めてしまう気がしたのだ。
深編笠を被り直す指先に力が籠もる。蓮花はその手元を見ても気づかぬふりで薬缶の方を向いた。道真は二度とこの薄汚い裏長屋に足を踏み入れるものかと固く心に誓い、闇鍼医の庵を後にした。
***
午後、江戸城内の礼参奉行執務室。
道真は端正な装束と烏帽子を整え、厳かに机の上に書物を広げていた。同僚の役人たちからの挨拶を受け、いつもの威厳ある冷徹な奉行に戻ったのだと安堵した、まさにその刹那だった。
サラ、サラ……。
筆を執って上申書を吟味していた道真の脳裏に、ふと昨晩の蓮花の冷たく滑らかな指先の感触が、電光のように閃いた。親指が亀頭の窪みをじっと押し込んできた圧力、手のひらの中で先走りの蜜がぐじゅりと音を立てていた、あの瞬間。
『くっ……?』
その瞬間、平穏を取り戻していたはずの下半身から、火柱のような脈動が噴き上がった。羽織の内側で眠っていた怪物が、蓮花の体温を思い出したかのように、凄まじい勢いで頭をもたげて膨張し始めたのである。机の下で、袴の前が今にも張り裂けんばかりに盛り上がるのを目の当たりにし、道真の顔色は絶望に染まった。
ブスッ――!ついに巨大な魔物の丸い亀頭が、蓮花の狭い秘谷の入り口を引き裂かんばかりに押し入った。「あぁあああっ――ッ!」蓮花の口から、引き裂かれるような悲鳴がほとばしり出た。純潔の赤い血が、白く強張った太ももを伝ってツゥと流れ落ち、絹の敷布を赤く染めた。真っ赤に焼けた鉄の杭で下腹部を貫かれたかのような、殺人的な激痛。蓮花の全身が弓なりに反り返り、小刻みに痙攣した。「蓮花――ッ!」道真の目から血の涙がこぼれ落ちた。男は蓮花の華奢な肩を砕けんばかりに抱きしめ、己の唇を強く噛み締めた。己の罪と呪いが、この何の罪もない若い娘を傷つけているという罪悪感に、胸が張り裂けそうだった。「もうやめよう……抜け……私が死ぬ! 私が死ねば済むことだ……っ!」「動……かないでくださいまし……っ! はぁっ……あぁっ……!」道真は蓮花の言葉を聞こうと首を垂れた。普段ならどんな小さな物音にも一喝していた男が、今はひとつの返事を聞き逃すまいと息すら殺していた。「聞いておる……そなたの言うことは、すべて聞いておるぞ」蓮花は彼の肩に置いた手を離さなかった。道真はその手を払いのけも急かしもせず、彼女が顔を上げるのをじっと待った。蓮花は道真の肩に爪を食い込ませながら涙を流した。しかし退きはしなかった。女は震える腰をゆっくりと、ほんの少しずつ、さらに下へと沈め続けた。ミシミシ……。蓮花の狭く冷たい内壁の粘膜が、凶暴な巨根の太い柱を一寸、また一寸と呑み込み始めた。想像すらしたことのなかった、巨大で圧倒的な大きさ。まるで鍛え上げられた鉄の杭が、狭い隙間を力づくで押し広げて入ってくるかのような圧迫感に、蓮花の額にびっしりと脂汗が浮かんだ。しかし肉壁が押し広げられる激痛の合間から、道真の剛直から放たれる熱い脈動が、女の子宮口をドクンドクンと激しく叩き、言葉にできぬ戦慄を呼び覚ました。その瞬間、奇跡が起こった。ジュウウッ――!道真の巨根から噴き出していた黒魔術の殺人的な火魔が、蓮花の体内深くに眠っていた純粋な極陰の霊気と、正面からぶつかり合ったのだ。氷のような女の内壁が煮えたぎる巨根を締め上げ、丹田を焼き尽くしていた呪いの魔気を猛烈に吸い込み始めた。「ひあぁあああ――ッ!」道真の背筋が虚空へと跳ね上がった。男は白目を剥いた。外治や接治とは次元の異なる、魂の底まで溶かしてしまうよ
道真の熱い愛撫に、蓮花の全身が気だるく火照っていった。生涯、冷たい極陰の体質として生きてきて、一度たりとも感じたことのなかった凄まじい熱気だった。蓮花の秘めやかな秘谷(ひこく)の隙間から、澄んだ透明な愛液が露のように滲み出始めていた。冷たい極陰の霊気が凝縮されたその神秘的な露は、猛烈に燃え盛る道真の火魔を吸い取るための、自然な本能の現れであった。部屋の中にはほのかな艾の香りと共に、咲き初めの花蕾から漂うような、甘く湿った陰気の匂いが濃密に立ち込めていた。蓮花は太ももの内側を伝い落ちる熱く冷たい感触に、下腹部を小刻みに震わせた。「はぁ……あぁ……若様、もう……」蓮花は荒い息を吐きながら、道真の広い胸板に手をついてゆっくりと身を起こした。月明かりの下に晒された蓮花の裸身は、聖なる巫女のように神秘的な光を放っていた。道真は夜具の上に仰向けに横たわったまま、血走った目で蓮花を見上げていた。男の股間から黒々とそそり立つ魔物は、もはや人間の限界を遥かに超越して煮えたぎる脈動で部屋の空気すら震わせていた。拳ほどもある亀頭の先のスリットがヒクヒクと蠢き、赤黒い熱液を虚空へとポタポタと滴らせていた。「れ、蓮花……本当に……耐えきれるのか……?」道真の声が羞恥と恐怖で震えていた。道真は答えを急かさなかった。蓮花が顔を上げるのを待ち、唇を固く引き結んだ。普段なら何であれ自分が先に口を開かねば気が済まなかったが、今は彼女の言葉を聞かねばならなかった。蓮花もまた、彼から視線を逸らさなかった。あの狭くか細い生娘の肉体の中へ、このおぞましい凶器をねじ込まねばならぬという罪悪感に、男の目頭が再び赤くなった。蓮花は答える代わりに、華奢な手を伸ばし、煮えたぎる巨根の根元をがっしりと鷲掴みにした。女の冷たい手のひらが触れただけで、道真の全身を雷が貫いた。「く、うぅっ……蓮花……触るな……破裂してしまう……っ!」男は両手で敷布を爪が砕けんばかりに握り締め、腰をガタガタと震わせた。武士の体面も威厳もすべて溶け落ち、ただ蓮花の手つきに救いを乞う無様な姿だった。蓮花は道真の逞しい太ももの上に、慎重に足を押し広げて跨がった。武家の体面と厳格な掟が支配していたこの国で、一介の裏長屋の鍼医が、高貴な奉行の腰の上に全裸で跨がるという奇天烈な光景。しかし二人の瞳の奥には、体面などすでに存在しな
奥座敷の奥、冷たい夜風が障子を揺らす中、二人の男女は夜具の上に向かい合って座っていた。道真の荒く熱い息遣いと、蓮花の静かな心臓の鼓動が、狭い部屋を満たしていた。道真は蓮花の白玉のような鎖骨と豊かな乳房を目の前にしながらも、恐れ多くて触れることもできず、拳を握っては開き、ガタガタと震えていた。部屋いっぱいに漂う洗い清めた肌のほのかな香りと、女の甘い匂いが男の鼻腔をくすぐった。潔癖症で他人の手に触れることすら嫌っていた堅物だったが、今、目の前に広がる女の純潔な体は、目が眩むほどに美しかった。男の涼やかだった目元は、血走りと涙で濡れそぼっていった。「蓮花……」男の声は湿り気を帯び、黒曜石のような瞳には切ない悲しみが満ちていた。「痛むであろう……骨を削るように、痛むはずだ……」道真は震える指先を持ち上げ、蓮花の頬にかかった後れ毛を、そっと耳の裏へと撫で流してやった。武士の手つきとは思えぬほど、限りなく優しく、切ない手つきだった。「生涯、遊郭の敷居すら跨がなかった私が、初めての女であるそなたに、このようなおぞましい苦痛を与えることになるとは……己がたまらなく憎い」「若様も、くだらぬ心配をなさいますね」蓮花は赤くなった顔を隠そうとわざと鼻を鳴らしたが、男の心からの思いやりに目頭がツンと熱くなった。「これも若様が生涯、操を守り抜かれたからではありませんか。無頼漢のように女遊びをなさっていたら、こんな換陽の術の呪いになどかかりませんでしたよ」「この期に及んで、軽口を叩くか……」道真がフッと湿った笑みをこぼした。笑いは長く続かなかった。道真は再び引き締まった蓮花の表情を見て、言葉を呑み込んだ。「怖くないなどとは言わなくてよい」蓮花が顔を上げた。「なら若様も、平気なふりなどなさらないでください。私の問うことには、ちゃんとお答えくださいね」道真が短く頷いた。その刹那、道真の胸元の心臓のあたりから、再び赤黒い炎が閃き、巨根が暴れ狂った。「くっ……!」道真が呻きを呑み込んで腰を折ると、蓮花は迷うことなく道真のうなじを抱き寄せた。「我慢なさらないで、若様」蓮花の赤く湿った唇が、道真の渇ききった唇へと重ね合わされた。んむっ、じゅるり……。冷たく甘い女の唾液が、道真の焼け焦げそうだった舌と喉の奥へと流れ込んだ。道真は蓮花の細い腰を抱きしめながら、女の口
奥座敷の奥、行灯の炎が消えゆく薄暗がりの中で、張り詰めた静寂が流れていた。床に脱ぎ捨てられた蓮花の着物の向こうに、月明かりを吸い込んだ女の白い肢体が眩いばかりに浮かび上がっていた。豊かな乳房と引き締まった腰、そして白い太ももの間からかすかに立ち上る、極陰の冷たい霊気。その純潔で神聖な姿を前に、血の涙を流して喘いでいた久世道真の心臓が、止まりそうなほど激しく跳ねた。「れ、蓮花……そなた、何を……!」道真は張り裂けそうな下腹部の激痛の中にあっても、ガタガタと震える手を伸ばし、床に落ちていた己の羽織を引き寄せて蓮花の身体を覆い隠そうとした。男の白玉のようだった手の甲は血管が破れて血泡で汚れ、唇は血まみれになって激しく震えていた。「ならぬ……着物を着ろ……早く着るのだ……!」「若様、状況をよくお考えなさい」蓮花は道真が差し出した羽織を容赦なく払い退け、男の太ももの間に膝をついて擦り寄った。女の冷たい膝が、道真の煮えたぎる太ももの生肌に触れた瞬間、ジュウと音を立てて白い湯気が立ち上った。氷河と溶岩が正面から衝突したかのような凄まじい気の激突に、道真の背筋が総毛立った。男は目の前がグルグルと回るめまいの中でも、蓮花の白くか細い肌から視線を逸らすことができなかった。武家の規範の中で生涯、罪深いものと見なしてきた女の裸身が、今この瞬間には、己の命を救い出してくれる唯一の神聖な菩薩のように輝いて見えた。「若様の胸に刻まれた、あの腐った斑点をごらんなさい。『血火の呪殺』の魔気は、すでに心臓のすぐそばまで入り込んでおります。手で揉みしだいたり、唇を重ねる接治ごときでは、あの凶暴な火魔をほんのひとときも鎮められませぬ」蓮花の澄んだ揺るぎなき瞳が、道真の血走った目を真っ直ぐに見据えた。「体内に溢れ返るあの恐るべき淫魔の陽気を、私の体の一番深い場所へと丸ごと受け入れ、溶かし去るしかありませぬ。ただ『合治(ごうち)』だけが、若様を生かすことができるのです」「ならぬ……それだけは、断じてならぬ!」道真が血の涙を流しながら首を横に振った。自害をも覚悟した、凄絶な絶叫だった。「私の股間に埋め込まれたこの化け物を見よ! これが本当に、人の体に入るような代物か!」道真は自らの股間を指差し、大粒の涙をポロポロとこぼした。黒鉄のように黒々と変色した魔物は大人の男の腕よりも太く、凶
息が喉元まで詰まった。道真の強靭な握力が、蓮花の首をへし折らんばかりに締め上げていた。男の瞳は血の色に染まって焦点を失い、唇の間からは獣のような唸り声とともに、黒い血泡が垂れ流されていた。「グルルル……引き裂け……殺せ……焼き尽くせ……!」人間の言葉ではなかった。黒魔術の殺気に魂を呑み込まれた、淫魔の咆哮だった。道真の黒々と燃え盛る巨大な魔物が、蓮花の小袖の裾を容赦なく踏み荒らし、太ももの間へとめり込もうとしていた。このままでは蓮花の首がへし折られるか、あるいは化け物のような剛直に下腹部を貫かれて無残に命を落とす、絶体絶命の瞬間。しかし蓮花は暴れる代わりに、震える手を持ち上げ、道真の血に汚れた頬を優しく包み込んだ。「若様……」涙をいっぱいに湛えた蓮花の澄んだ声が、静寂を切り裂いた。「久世道真様……正気を取り戻してくださいまし。私の父の無実を明らかにし、私を守り抜くと誓ってくださった、あの気高い若様はどこへ行かれたのです……!」その切なる呼びかけが、道真の魂の底へと届いたのだろうか。一瞬、殺気にギラついていた道真の血走った瞳が、大きく激しく揺らめいた。「れ……れん……か……?」道真の喉の奥から、絞り出すように掠れた声が漏れ出た。首を締め上げていた男の指先が小刻みに震え、力なくほどけて落ちていった。その一瞬、奇跡のように道真の理性が水面へと浮上したのだ。道真は自らの血まみれの手を見下ろし、生まれたての小鹿のように震えながら声を上げて泣いた。「わ、私が……何という真似を……ごほっ! ぐあああっ!」道真は自らの頭を掻きむしり、畳に額を打ちつけた。男の鼻と唇から、赤黒い血が噴水のように噴き出した。五臓六腑を焼き尽くす黒魔術の火魔が、心臓を丸ごと呑み込もうとしていた。「に、逃げろ……蓮花……頼む……っ!」道真は血の涙を流しながら、蓮花を戸の外へと押し出そうとした。「私がそなたを……殺してしまう……! 獣となって、そなたの体を八つ裂きにしてしまうのだ……早く逃げろ……頼むから、私を見捨ててくれ……っ!」己が激痛に苛まれ死に瀕しているその瞬間すら、ただ蓮花が傷つきはしないかと恐れ、血を吐きながら逃げろと絶叫する男。その凄絶な叫びを耳にしながら、蓮花の目から熱い涙がボロボロとこぼれ落ちた。もはや退く場所など、どこにも残されていなかった。外治で手を
江戸・山の手、久世家の屋敷の奥座敷。部屋の空気が一段と冷え込んだかと思うと、行灯の炎が一斉に青白い光を放ってプルプルと震え出した。「ぐあああっ――ッ!」苦しげに身悶えていた道真の口から、引き裂かれるような断末魔が迸り出た。男は寝床の上を転がり回り、自らの胸元を爪で狂ったように掻きむしった。「わ、若様?! いかがなされたのです!」驚いた蓮花が道真の肩を必死に掴もうとしたが、道真の肌から噴き出す殺人的な高熱に掌が火傷しそうになり、悲鳴を上げて手を引いた。男の全身は、まるで真っ赤に焼けた鉄の塊のように白い湯気を噴き上げていた。道真の白玉のようだった肌は血の色に染まり、額やこめかみには張り裂けんばかりの太い血管が異様に浮き上がってドクンドクンと脈打っていた。「あ、熱い……! 胸が……内臓が焼け焦げていく……っ、ぐあああっ!」道真の顔色は土気色を通り越して灰白色へと変わり、切れ長の瞳は血走るどころか目玉が飛び出さんばかりに充血していた。さらに恐ろしい異変が、男の生肌の上に巻き起こっていた。左の鎖骨の下の古傷のあたりから、腐った血を思わせる黒赤い斑点が、まるで生きた百足のようにうなじと顎の下へ向けて、凄まじい勢いで這い上がっていたのだ。ジュウッ、パチパチッ――!斑点が触れる肌が黒く焦げつき、肉の焼ける異様な悪臭が立ち込めた。かつて名医であった父・江田泰秀が厳重に警告していた宮中最高の禁忌の邪術、人の気血を黒魔術で汚染し、自らの肉を腐らせて死に至らしめる「血火の呪殺」の凄惨な兆候だった。単なる陰陽の乱れではない。命を奪うための純粋な呪詛の猛毒だった。蓮花は斑点が広がる部位を確かめた。以前も熱が上がれば肌が赤くなったが、今の色合いはまるで違っていた。さっきまで眠る顔を拭っていた手拭いが、手のひらの中でぐしゃりと握り潰された。その短い合間に何が変わったのかを見極めねばならなかった。蓮花は道真の名を呼び、瞳の動きを確かめた。それと同時に、道真の羽織と下着の内側で、魔物が制御不能となって暴れ狂い始めた。バキッ、バリリッ――!丈夫な絹の肌着が悲鳴を上げ、粉々に引き裂かれた。露わになった巨根の姿に、蓮花は息を呑んで後ずさりした。昼間までは赤く硬かった代物が、今や黒鉄(くろがね)のように黒々と変色していたのだ。太さは大人の男のふくらはぎほどに肥大化し、青黒い血管