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第62話

Author: フカモリ
信行が言い終えると、祐斗は瞬時に笑みを収め、慌てて首を横に振った。

「いえ、とんでもないです、社長」

祐斗が答え終えると、すぐにまた運転手を軽く叩く。運転手も慌てて笑うのをやめ、真剣な顔でハンドルを握り直す。

前の二人が静かになったのを見て、信行は再び真琴に向き直る。

「なんだ?お前、もう開き直って、俺と完全に縁を切るつもりか?」

口ではそう言っているが、真琴が由美を話題に出したことで、信行はやはり彼女と口論する気になっている。

結婚して三年、彼女はこれまで一度も信行を管理しようとせず、浮気で騒いだこともない。正常な人間とは思えないほど物分かりが良かった。後始末のようなことまで、やってのけたのだから。

そこまで我慢できる理由は、ただ気にしていないから、好きではないからに過ぎない。

だから、真琴が突然食ってかかってくると、喜んで相手をする気になった。

そのしつこさに、真琴は視線を戻し、つけたばかりのアイマスクを引き下げ、彼に背を向け、シートに横になって休む姿勢をとる。

もともと大したことではないのに、信行がどうしても事を荒立てるので、もう彼と口論するのも面倒になった。

どうせ帰ったら手続きをする。彼がどう思おうと、勝手にすればいい。

その様子を見て、信行は手を伸ばして彼女を軽く引き、淡々と尋ねる。

「どうしてやめるんだ?さっきは、随分と口が達者だったじゃないか?」

真琴は彼の手を外し、真剣な顔で彼に注意する。

「武井さんと運転手さんもいいます。皆、体面を保ちましょう」

万が一、喧嘩の内容が外に漏れたら、今後、智昭に会うのも気まずくなる。

祐斗は声を出せないでいる。しかし、運転手はすぐに口を挟んだ。

「副社長、ご安心ください。喧嘩なさりたいなら、どうぞ続けてください。内容は絶対に外には漏らしませんので」

運転手のその言葉に、真琴はさらに何も言わなくなり、身を翻して眠り続ける。

信行の鋭い視線を受けた祐斗は、慌てて運転手を睨む。

「お前、少しは空気を読め!」

運転手はその言葉を聞き、ようやく自分が分をわきまえず、口を挟みすぎたことに気づく。

それにしても、このご夫婦の喧嘩は本当に面白い。副社長は普段物静かなのに、先ほどの数言は、かなり迫力があった。聞いていて、なかなかのものだった。

ハンドルから右手を離し、運転手は慌てて自分
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