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第89話

Auteur: フカモリ
信行が彼女の服を脱がそうとした時、真琴は不意に我に返り、ぐっと彼の手首を掴む。

彼が説明してくれても、何の意味もない。

たとえあの夜が誤解だったとしても、彼のこの三年の冷淡さを帳消しにはできないし、真琴が処理してきた数々の浮気スキャンダルが嘘だったということにもならない。

信行の目をまっすぐ見つめ、真琴は言う。

「私が興衆実業で務めていた職務は、それほど重いものではありません。ですから、会社に大きな影響はないはずです」

その言葉の意味は、離婚を固持し、彼とこれ以上、事を進めるつもりはないということだ。

真琴が彼の腕を掴む力は、とても強い。

信行は身をかがめて彼女を見つめ、その真剣な顔を見て、途端に興味を失い、その身を起こした。

その様子を見て、真琴は顔を向けて彼を一瞥し、手を伸ばしてそっと服のボタンを留め直す。

……

その後の数日間、信行は毎日、時間通りに帰ってくる。時々、真琴の方が彼より遅く帰ってくることもある。仕事が特別に多い。寝る時と食事の時以外、ほとんど残業している。

興衆実業で副社長をしていた時よりも忙しい。

その夜、信行がシャワーを浴びて出てくると、真琴がまたデスクの前で残業しているのを見て、髪を拭きながら、気だるげに言う。

「お前をこき使うとは、高瀬の奴も、遠慮がないな」

デスクの前で、真琴は真剣な顔でパソコンの画面を凝視し、両手はカタカタとキーボードを叩き、信行の言葉など聞こえていない。

意に介さず自分を見つめ、信行はようやく「冷たい仕打ち」の味を思い知る。

仕事を終えてベッドで眠りにつくまで、真琴はようやく丁寧に彼に言う。

「おやすみなさい」

そう言って、明かりを消し、ベッドに身を滑り込ませて眠りについた。

傍らで、信行は顔を向けて真琴を見つめる。自分の隣で禁欲的に振る舞う彼女を見て、心の中で、密かに嫌悪感を抱いている。

辞職の件は、もう一段落ついたと思っていたが、その日の午前、真琴がアークライト・テクノロジーで忙しくしていると、興衆実業の方で、彼女が離職したというニュースが突然広まった。

「副社長が辞職したって、知ってるか?会長が、辞表にサインしたらしいぞ」

「本当に辞めたのか?道理で、一週間以上も姿を見かけなかったわけだ。ついに、我慢の限界が来たか。もう、耐えるのはやめたんだな」

「副社長が辞職した
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