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第2話

作者: パクチー好きの静香
「もうすぐ母親になる人間だろ。これからはこんな酷いことはやめろ」

朔也の言葉の端々に滲む恨み言を聞きながら、私の爪は無意識のうちに手のひらへ深く食い込んでいた。

「私が犯人だって決めつけてるの?」

朔也は冷たく鼻を鳴らした。「どうせろくな下心じゃないだろ」

猛スピードで車を飛ばして病院に着くや否や、朔也は足早に駆け上がっていった。

彼の背中を追っていくと、莉音が彼の胸に顔を埋めて、いじらしく泣きじゃくっているのが見えた。

検査結果が出た。原因は莉音が自分で買ったケーキの中に、彼女のアレルゲンであるピーナッツ粉が入っていたからだった。

一日中振り回され、私の下腹部は鈍く痛み始めていた。

莉音を抱きしめて慰める朔也の背中に向かって、私は声をかけた。

「ちょっと薬をもらってくるから、待ってて」

朔也は面倒くさそうに手を振り、わかったと合図した。

しかし私が戻ってきた時、すでに二人の姿はどこにもなかった。

しばらくして、スマートフォンに通知が届いた。

開いてみると、莉音がSNSを更新していた。

【病気になっちゃったけど、最愛の彼に癒やされた。私のために真夜中に街中を駆け回って、打ち上げ花火を見せてくれたの。見てるみんなにも、幸せのお裾分け!有難く拝んでね】

私はその動画をしばらく見た後、近くのホテルで部屋を取った。

丸一日泥のように眠り続け、午後にようやく目を覚ました。

ずっと震え続けていたスマートフォンを手に取る。

電話の向こうの朔也はひどく苛立っていた。「十回以上も電話したぞ。今どこにいるんだ!」

おかしな話だ。私がどこに行こうと気にも留めない朔也が、珍しく居場所を執拗に聞いてくるなんて。

私はズキズキと痛む頭を押さえ、ホテルの名前を告げた。

身支度を整えて外に出ると、ちょうど朔也が到着したところだった。

彼が車のドアを開けたが、私は手を振って見せた。「家には帰らないわ」

朔也は呆然とした。「じゃあどこに行くんだ。何をするつもりだ?」

「琴美と映画を見る約束をしてるの」

「なら俺が送っていく」

車内で目を閉じて休んでいると、朔也が紙袋を差し出してきた。

「お前へのプレゼントだ」

中を覗くと、それは子供っぽいデザインのブレスレットだった。

ご丁寧に、私の嫌いなカエルやブタのチャームがぶら下がっている。

莉音の常套手段だ。プレゼントを贈るという名目で、私と朔也が喧嘩するように仕向けているのだ。

私は窓を開け、それを無造作に外へ投げ捨てた。

案の定、朔也は激怒した。「柚葉、これは莉音が謝るためにわざわざ手作りしたんだぞ!お前、本当に最低だな!」

謝罪どころか、私を逆撫でしたいだけなのが見え見えだ。

私は彼を徹底的に無視し、スマートフォンの中で琴美がシェアしてくれたムギの動画を見て笑みをこぼした。

私の全く気に留めない態度と、彼の苛立ちが著しい対照をなしていた。

朔也の顔が不快げに沈んでいく。

「誰とチャットしてるんだ」

「琴美よ」

しかし朔也は信じず、私の隙を突いてスマートフォンを奪い取った。

だが、彼が何度パスワードを入力しても、画面には非情なエラーメッセージが表示されるだけだ。

彼は信じられないという顔で私を見た。「パスワード、変えたのか?」

これまでのパスワードはすべて、彼の誕生日だった。この数年間、一度も変えたことはなかった。

いざ私自身の誕生日に変えてみれば、彼は私のことなんて何一つ覚えていない。

私は「ええ」とだけ返し、車のドアを開けて映画館へと入っていった。

背後から朔也の声が聞こえた。「夜、迎えに来るからな」

どうせまた、莉音に呼び出されて約束を反故にするのだろう。私は適当に手を振って、その声を無視した。

だが予想に反して、上映が終わって琴美と一緒に外へ出ると、朔也は時間通りにそこで待っていた。

車のドアを開けると、朔也がいつも「お前だけの特等席だ」と言っていた助手席には、莉音が座っていた。

彼女は私に向けて甘ったるい笑顔を浮かべた。

「柚葉さん、今日は朔也とご飯を食べる約束をしてるの。ついでに柚葉さんもご一緒にどう?」

朔也を見ると、彼の顔には少し気まずそうな色が浮かんでいた。

「……ああ、ちょうどいいタイミングだったし、三人で食べようと思ってな」

私は何も言わずに後部座席へと乗り込んだ。道中、ずっと目を閉じて休んでいた。
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