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未練ゼロ、私の新しい人生
未練ゼロ、私の新しい人生
Author: パクチー好きの静香

第1話

Author: パクチー好きの静香
つわりが酷かった時、鳴海朔也(なるみ さくや)の幼馴染である望月莉音(もちづき りおん)は、私のことを醜いヒキガエルみたいだと嘲笑った。

私、成瀬柚葉(なるせ ゆずは)が限界を迎えて「黙って」と怒鳴りつけると、莉音は可哀想ぶって涙をこぼした。

そのせいで朔也は激怒し、私を散々罵倒した挙句、家から追い出した。

夕方になってようやく、彼から一通のメッセージが届いた。【少しは頭冷えたか?冷静になったなら戻ってきていいぞ】

私は窓の外から、キャンドルの灯りの下で豪華なディナーを楽しむ睦まじい二人を冷ややかに見つめ、そのメッセージを無視した。

そして、すべての迷いを捨てて病院へと向かった。

中絶手術は想像していたほど痛くはなく、数時間休んでから帰宅した。

ドアを開けると、朔也はまだ起きていた。

私を見るなり、彼は勢いよく立ち上がり、怒気を孕んだ声で言った。

「柚葉、莉音はちょっと冗談を言っただけじゃないか。お前、こんな時間まで戻らないなんて、一体何のつもりだ!」

妊娠して以来、莉音は何度もこうした「冗談」を言ってきた。

「柚葉さん、妊娠するタイミングが悪かったよ。なんだか縁起が悪いわ」

「柚葉さん、それでも母親になるつもり?妊婦がこんなもの食べちゃダメでしょ」

「柚葉さん、まだ数ヶ月なのに、もう体型が崩れちゃったんだね」

しかし、私が少しでも不快感を顔に出すと、朔也は決まって莉音に同調し、一緒になって私を嘲笑った。

その度に私は怒りでワナワナと震え、ヒステリックになって彼と言い争っていた。

けれど、今からはもう違う。二度とあんな真似はしない。

朔也は、私が黙り込んでいるのは後ろめたさからだと思い込み、満足げに笑った。

そして、言い放った。「テーブルの上の食器、片付けておいてくれ」

私はちらりと視線を向けた。テーブルの上に並んでいたのは、私が今日作った料理だ。

食べる暇すら与えられず、朔也に追い出された。

帰ってきた時には、二人がすっかり平らげた後だった。

私はピクリとも動かず、スマートフォンで不動産業者と自分のマンションの査定額についてやり取りを続けた。

それは私が彼の住む街へ越してきた時、両親が買ってくれたものだが、もう残しておく必要もない。

シャワーを浴びて出てきた朔也は、テーブルの上が相変わらず散らかっているのを見て一瞬呆気に取られた。

私はこれまで彼に何でも従順に尽くしてきた。彼の言葉を無視したのはこれが初めてだ。

彼は私をちらりと見たが何も言わず、自分で片付けを始めた。

その時、私の愛犬であるムギが鼻をクンクンと鳴らしながら小走りで寄ってきた。

私はそこで初めて気がついた。ムギの目には長い付けまつげが貼られ、顔全体には派手なメイクが施されている。

耳にまでイヤリングが挟まれており、違和感があるのか、ムギはしきりに顔を擦り付けていた。

私は慌ててそのイヤリングを外してやった。

朔也はそばで残念そうに言った。「莉音がせっかく可愛くメイクしてくれたのに、なんで落としちゃうんだ」

私は外したイヤリングをテーブルに置き、静かに答えた。「これ、彼女に返しておいて。また他人に物を盗まれたって騒がれると厄介だから」

朔也の顔に虚を突かれたような色が走った。彼は口を開き、何か言おうとした。

突然電話が鳴った。莉音専用の着信音だ。

彼は即座に口角を上げ、スマートフォンを手に寝室へと戻っていった。

私は親友の篠原琴美(しのはら ことみ)のLINEを開き、しばらくムギを預かってもらえないかとメッセージを送った。

やり取りを終えた後、私はいつものようにベッドを整えて寝る準備をした。

朔也は私を見て、唐突に言った。「まだマタニティオイル塗ってないだろ。今日は俺が塗ってやるよ」

妊娠四ヶ月。これまで私がどれほど甘えて頼み込んでも、彼は一度たりとも塗ってくれたことはなかった。

莉音が「男の人がそんなことするなんて、みっともないよ」と言ったからだ。

私は平らになったお腹を見下ろし、首を横に振った。

朔也は眉をひそめ、どこか不安げに私を見た。

これは私がずっと夢見ていたことのはずなのに、全く未練も見せずに拒絶したのだ。

その異様な態度に、彼は得体の知れない焦燥感を覚えたようだった。

眠りに落ちる直前、朔也が不意に口を開いた。「柚葉、あと数日したら籍を入れに行こう」

私は規則正しい寝息を立て、寝たふりをした。

「柚葉!さっさと起きろ!」

どれくらい時間が経っただろうか、朔也の激怒する声で私は目を覚ました。

意識を浮上させると、彼は服を着ながら喚き散らしていた。

「莉音がアレルギーで病院に運ばれた!お前、作った飯に何をいれたんだ!」

私は朦朧としたまま車に押し込まれた。道中、ハンドルを握る朔也の横顔はひどく険しかった。
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