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来世はもう、あなたの妹にならない
来世はもう、あなたの妹にならない
Auteur: エッグタルト君

第1話

Auteur: エッグタルト君
偽のお嬢様として高橋家から追放されて六年、私、高橋心結(たかはし みゆ)は売血で命をつないできた。

数枚の紙幣を手にし、医師に連絡して薬を受け取ろうとしたその時、膝をボディガードに思い切り蹴り上げられた。

両膝を地面につくと同時に、一人の貴婦人が理性を失ったような絶叫が耳を突いた。

「この恩知らずが!まだこんな所にいたの?彩花を殺す気?」

強烈な平手打ちを食らい、私はようやく悟った。目の前にいるのは、愛娘である高橋彩花(たかはし あやか)のために輸血用の血液をかき集めている母、高橋陽子(たかはし ようこ)なのだと。

傍らで見ていた兄、高橋智玄(たかはし ともはる)は、取り乱す母を一瞥するなり、即座にボディガードへ私をつまみ出すよう命じた。

彼は私を見下ろし、私が握りしめている紙幣を見て鼻で笑った。

「数年経っても、その性根は変わっていないようだな。たかだか数千円の見栄のために血まで売るとは。

半月後、彩花は海外へ留学する。そうすればもう家族の寵愛を独占する必要もなくなるし、お前も彼女をいじめることはできなくなる。

その時が来たら、俺がお父さんとお母さんに事情を説明してお前を家に連れ戻してやる。お前は変わらず、この家の『お嬢様』だ」

「家……お嬢様……?」私はうわごとのように呟き、最後には首を振って笑い出した。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の進行はあまりに早すぎる。あと一ヶ月も持たないだろう。

それに、彼が苦学生だった彩花のために私を「偽のお嬢様」だと告発したあの時、私に家などとうになくなっていたのだ。

指先に力が入らず、紙幣が一陣の風にさらわれた。

私は無意識のうちに、自由の利かない両足を引きずり、お金を追って地面を這いつくばった。

周囲の人々が向ける視線は、まるで化け物を見るかのようだった。

だが、そんなことはどうでもよかった。

このお金がなくなれば、生活を切り詰め、長い時間をかけてやっとの思いで貯めてきた特効薬の購入費が、また泡と消えてしまう。それだけは、何としても避けたかった。

私は飛ばされた紙幣のことしか頭になく、通行人の浴びせる罵声さえ耳に入らなかった。

周囲の忌々しげなざわめきに、兄の顔は不機嫌を通り越して、見るに堪えないほど険しくなっていった。

彼はもう我慢の限界だと言わんばかりに、怒鳴り声を上げた。

「心結!俺の気を引くために、そこまでなりふり構わず恥を晒すつもりか!

たかが家を追い出して、一時的に他所に預けただけだろうが。あそこの家の条件だって悪くなかったはずだ。誰に見せるためにそんな反吐の出るような真似をしてるんだ!」

聞き慣れたその声は、鉄槌のように心臓を打ち砕いた。私の心は激しく震えた。

彼が何気なく放った「たかが」というあまりに軽い一言。けれどその言葉の裏側には、私が一生をかけても拭い去ることのできない、おぞましい地獄が横たわっている。

喉の奥からせり上がる言いようのない苦さを無理やり飲み込み、私は一度足を止めて、枯れ果てた気力を振り絞るようにして再び歩き出した。

私の歩き方があまりに異様だったからだろう。兄の顔から険しさがわずかに消え、その瞳に疑念の色が浮かんだ。彼は、ようやく私の様子が尋常ではないことに気づいたようだった。

焦った様子で大股に私へ近づき、何かを尋ねようとしたその時。

彩花が突然現れ、驚いたように口元を押さえた。

「あら、お姉ちゃん。病院で偽のALS診断書を作らせただけじゃ飽き足らず、今度は体を使ってまで演技し始めたの?」

そう言うと、彼女は私の診断書を兄に手渡し、いかにも申し訳なさそうに声を震わせた。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんがこんなことをするのは、一刻も早く家に帰りたいからだって分かってるの。私のせいで二人の仲が壊れるくらいなら……いっそのこと予定を早めて、私を海外へ行かせて」

彩花の巧妙な煽りに、兄の顔は瞬時に怒りで塗りつぶされた。彼は診断書を握りしめ、ギリ、と奥歯を鳴らす。

「危うく騙されるところだった。心結、お前は昔から嘘を吐くことしか能がなかったが、今度は仮病まで覚えたのか?

家に帰る前に、その下手な演技で本当にくたばったりするんじゃねえぞ!」

彼は、まるで汚物でも払うかのように診断書を私に叩きつけると、彩花を連れてその場を立ち去った。

彩花が振り返り、私に向かって勝利のピースサインを送ってくるのを見て、私はようやく我に返った。

不意に自嘲的な笑いが込み上げた。血の繋がった実の兄妹……それが一体何だというのか。

彩花が関われば、いつだって私が悪者になり、私の言葉はすべて「嘘」に塗り替えられる。

だが、そんなことはもうどうでもよかった。私はただ早く薬を手に入れて、この体の苦痛を和らげたかった。

私は地面に散らばったお金を拾い集め、病院行きのバスに乗り込んだ。

道はひどく渋滞していた。窓の外には「高橋グループ支援」の横断幕を掲げたトラックが、長い列を作っている。

スマホの動画を見て初めて知ったのだが、それは兄が山間部の被災地に寄付した医療物資だった。

その時、主治医から着信があった。電話の向こうから、残念そうな溜息が聞こえる。

「高橋心結さん、もう来ないでください。高橋社長から直々に通達があったんです。あなたの病気はただの狂言であり、貴重な薬を回すのは資源の無駄だ……と」

嘘でしょう。彼は私の病状を誰よりも知っているはずだ。あんなに親身になって、薬を確保しておくと約束してくれたのに。

私がどれほど泣いて縋っても、向こうの態度は変わらなかった。最後には、無情にも通話が切れた。

窓の外で風に揺れる高橋家の支援横断幕を、私はただ呆然と見つめていた。あまりにも皮肉な光景だ。

かつて兄が彩花を支援していた時、彼女のためなら湯水のように金を使っていた。

被災地への支援活動において、高橋グループの名は毎年寄付額トップとして刻まれている。

なのに、私が自分の金で、ただ生きるための薬を買うことさえ、兄の目には「資源の無駄」と映るのだ。
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