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第8話

作者:
言い終え、私は視線を戻した。

晴彦は私の言葉の裏にある意味を悟ったようだった。

彼は自嘲気味に笑った。

「……そうか。もう二度と邪魔はしない。薫も連れてこない。ただ……時間があるときだけでいい、たまに会いに来てくれないか?」

晴彦はソファに座り、私の顔色を窺うように尋ねた。

「海外プロジェクトへの参画が決まったの。これからはもう、そんな時間はないと思うわ」

私が凛とした声で返すと、晴彦は苦笑いを浮かべて頷いた。

唇を噛み締め、立ち上がる。

「じゃあ、行くよ……元気でな」

そう言って薫の手を引く。

「でも、これだけは言わせてくれ」

晴彦がドアの前で振り返る。

「俺はお前を愛してる。今でも、お前だけを。結局、俺たちも時の流れには抗えなかったんだな。昔誓った『墓場まで一緒』なんて、実際に叶えられる夫婦は一握りなんだろう」

私は顔を上げ、彼の目を真っ直ぐに見据えた。

「時間のせいじゃないわ。あなたが私を追い出したの。先に手を放したのは、あなたよ」

晴彦は雷に打たれたように立ち尽くした。その目が再び潤み始める。

彼は背を向け、薫の手を強く引いた。

薫はずっと私を
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    言い終え、私は視線を戻した。晴彦は私の言葉の裏にある意味を悟ったようだった。彼は自嘲気味に笑った。「……そうか。もう二度と邪魔はしない。薫も連れてこない。ただ……時間があるときだけでいい、たまに会いに来てくれないか?」晴彦はソファに座り、私の顔色を窺うように尋ねた。「海外プロジェクトへの参画が決まったの。これからはもう、そんな時間はないと思うわ」私が凛とした声で返すと、晴彦は苦笑いを浮かべて頷いた。唇を噛み締め、立ち上がる。「じゃあ、行くよ……元気でな」そう言って薫の手を引く。「でも、これだけは言わせてくれ」晴彦がドアの前で振り返る。「俺はお前を愛してる。今でも、お前だけを。結局、俺たちも時の流れには抗えなかったんだな。昔誓った『墓場まで一緒』なんて、実際に叶えられる夫婦は一握りなんだろう」私は顔を上げ、彼の目を真っ直ぐに見据えた。「時間のせいじゃないわ。あなたが私を追い出したの。先に手を放したのは、あなたよ」晴彦は雷に打たれたように立ち尽くした。その目が再び潤み始める。彼は背を向け、薫の手を強く引いた。薫はずっと私を見ていた。玄関のドアの前まで来ても、その視線は私から離れなかった。突然、彼はドア枠に必死にしがみついた。「嫌だ!行かない、行かないよ!パパはママを連れて帰るって言ったのに、嘘つき!ママがいい、ママがいい!ママと一緒に暮らしたいよぉ!」薫は声を枯らして泣き叫ぶ。晴彦は暴れる薫を抱え上げようとするが、彼自身の声も嗚咽で震えている。「……家に、帰ろう」「ママ、もう雅子さんなんていらない!ママがいいよ!これからはちゃんと歯磨きする!お菓子も食べない!毎晩ちゃんと寝るから!エビもカニも食べない!ワガママ言わない!だから、お願い!お願いだよ、ママぁ!」薫の悲痛な叫びを聞いても、私の心はもう揺らぐことはなかった。自分の決意の固さを、改めて確認するだけだった。薫はまだ幼い。多くのことを理解できていないのかもしれない。私が時折厳しく躾けたのを、愛情ではなく欠点だと思っていたのだろう。それは理解できる。だが、私が彼に注いできた無償の愛を、献身を、空気のように「あって当たり前」だと思われ続けるなら。ただただ、空虚な思いが広がるだけだった。私が彼をど

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