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第899話

Auteur: 夏目八月
さくらの前でこのような侮辱を受け、夕美は顔を赤らめながら激怒した。「その口の利き方を改めなさい。衛士統領になったからって調子に乗らないで。その統領の座だって、結局は女に従うしかないんでしょう?」

夕美は虎鉄の高慢な性格を知っていた。以前、上原さくらに従うことを潔しとしなかったことも知っている。故意にさくらの前で二人の不和を掻き立て、虎鉄を辱めようとしたのだ。

しかし、夕美の理解は表面的なものに過ぎなかった。

沢村紫乃を師と仰いでから、虎鉄は師の武術を目の当たりにしていた。さらに、師が梅月山での出来事を何度も語るのを聞き、さくらに全く太刀打ちできなかった話を聞かされていた。それに加えて、自身もさくらと手合わせをしたことで、かつての傲慢さがいかに滑稽なものだったかを知っていた。

虎鉄はせせら笑い、皮肉めいた口調で言った。「衛士統領になれば、それは偉いさ。お前に務まるものなら、やってみろよ。女性には無理だなんて言うな。ほら、上原殿だってお前の夫を指揮していたじゃないか。今じゃ俺の上官だ。俺の実力は大したことないから、従うのは当然だ。だがお前はどうだ?女性に従うのが何か恥ずかしいとでも
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  • 桜華、戦場に舞う   第1663話

    紫乃たちが屋敷に客として滞在していることもあり、上原夫人はさくらの顔を立て、仲間たちを連れて都のあちこちを見物するのを許してくれた。その年の瀬も押し迫ったある日、家々が正月の支度に追われる中、一頭の駿馬が城門から皇城目指して駆け抜け、その鞍上の伝令が声を張り上げていた。「吉報!北冥親王様が邪馬台を奪還!北冥親王様が邪馬台を奪還なされましたぞーっ!」さくらは二反の絹を抱え、呉服屋の店先で、その伝令の叫びをこの耳で確かに聞いた。彼女の記憶では、あの人が邪馬台の戦地へ赴いた後、その進軍は破竹の勢いで、十余りの城を次々と奪還した。だが、最後は日向と薩摩で長く膠着し、そこへ平安京の軍が加勢したことで、さらに時が費やされたはずだった。以前の時間の流れならば、今頃はまだ両軍が睨み合っているはず……どうして、もう完全な勝利を?あの人が勝利を収め、邪馬台を取り戻すと信じてはいた。ただ、これほど早いとは思いもしなかったのだ。やはり、平安京の軍から横槍が入らなかっただけで、邪馬台の奪還はこれほど順調に進むものなのか。屋敷へ戻ると、さくらは母にその知らせを告げ、亡き父と兄のためにも酒肴を供えた。邪馬台奪還は、彼らの功績でもある。彼らがあの人に残した、羅刹国と戦うための経験があったからこそなのだ。二月、北冥軍が都へ凱旋した。さくらは城門まで出迎えに行きたかったが、母が正月から引いた風邪をこじらせ、まだ全快していなかった。母のそばで看病に付き添う彼女は、民衆の歓声に沸く城門へ向かうことができなかった。ただ、本当に、本当に、あの人に会いたかった。あと幾日かして、母の具合が良くなったら、自分から北冥親王の屋敷を訪ねよう、と彼女は考えていた。あの人は、自分たちが生涯を共にした夫婦であったことなど覚えていないだろう。でも、彼女は知っている。彼が邪馬台へ発つ前、この北平侯爵邸へ自分を娶りたいと申し出てくれたことを。今世では、自分から想いを告げに行ったって、構わない。しかし、まさかその翌朝だった。梅田ばあやが息を切らして報せに来たのは。北冥親王様が、なんと穂村宰相の奥様を仲人として伴い、正式に縁談を申し込みに来られたというのだ。お母様は、すでに広間で応対されている、と。さくらは昨夜、子の刻まで母を看病してようやく自室に戻った。だが、布団に入ってか

  • 桜華、戦場に舞う   第1662話

    関ヶ原へ戻ると、守は高熱を出した。道中すでに、彼は限界をとうに超えていた。耐えがたい痛みがその精神を蝕み、意識がはっきりしている時には、饅頭に「いっそ一突きで殺してくれ」と頼むほどだった。これ以上、苦痛に苛まれるのはごめんだと。軍医が治療を引き継ぎ、傷口を洗浄し、腐った肉を削ぎ落とす。当然、それは再び耐え難い苦痛を伴った。その後、数日間は昏睡状態が続き、口にできたのは重湯だけだった。彼は見る影もなく痩せ衰えていった。琴音の亡骸は都には送られず、関ヶ原に埋葬された。彼女の功罪については、佐藤大将自らが天皇に上奏し、一切を言上することになるだろう。平安京の軍は、ついに兵を退いた。兵糧の供給が断たれた今、スーランキーが率いてきた兵馬がいかに戦いたくとも、もはや戦うことはできない。間者の知らせによれば、スーランジーも軍に復帰したという。彼は平安京の皇太子が辺境に来たことを知り、探しに向かう途中で伏兵に遭い負傷していた。スーランキーは、その隙に乗じたというわけだ。これも元をただせば、スーランキー一派の計略だったのだ。確たる勝算がなければ、これほど多くの兵を関ヶ原に送り込み、密かに兵糧を運び込むことなどしなかっただろう。そして今回、スーランキーが大々的に城を攻め、大和国の国土を侵犯したことで、停戦し和議の席に着いた今、大和国が交渉の主導権を握ることとなった。和議の件には、さくらは関わらなかった。彼女はまずお珠を迎えに行き、紫乃たちを連れて都へと帰ることにした。旅の埃にまみれた姿で都へ帰り着き、朝陽の中に変わらずそびえ立つ北平侯爵邸が目に入った時、そして門番が満面の笑みで出迎えてくれた時、さくらの心はすとんと地に落ちた。涙が瞬く間に込み上げてきたが、それを必死に堪え、決して零させなかった。屋敷の者が奥へと知らせに走り、まず潤が駆け出してきて出迎えた。その小さな顔を喜びに輝かせ、さくらの手を引っぱっては矢継ぎ早に問いかける。「叔母さま、どこへ行っていたのですか? どうして今頃お帰りに?」さくらは彼の髪を撫で、微笑みながら答えた。「あなたの曾お祖父様のところへ行っていたのよ。それに、あちらで少し長く遊んでいたの」「楽しかったですか?今度は潤も連れて行ってくれますか?」潤は憧れの眼差しを向ける。「ええ、楽しかったわ。あなたが行きたいな

  • 桜華、戦場に舞う   第1661話

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  • 桜華、戦場に舞う   第1659話

    さくらは、仲間たちが無事に離脱したのを見届けると、火の手が勢いを増すのを待って、軽身功で穀物倉へと飛んだ。大半の兵は消火に向かったものの、穀物倉は最重要拠点であるため、十数名の衛兵がまだその場に残っていた。彼らは山民のなりをしたさくらを見つけ、問いただそうと歩み寄る。さくらは即座に油樽を掲げ、平安京の言葉で大声に叫んだ。「消火だ、火を消すんだ……!」彼女はそう叫びながら、あたかも消火に駆けつけるかのように、東側の炎へと走っていった。時を同じくして、近隣の民百姓も次々と消火に駆けつけてきた。その先頭を駆けるさくらの姿も、不自然には映らなかった。火事は凄まじい混乱を極めていた。厚い布で火を叩く者、桶を手に水を汲みに行く者、鋤で砂をかける者、考えつく限りの方法が繰り出されている。しかし、材木が燃え上がった炎の勢いはあまりに強く、穀物倉への延焼を食い止めるのは容易ではなかった。さくらは油樽を提げたまま混乱に紛れて走り回り、衛兵の目を掻い潜る隙を見つけると、穀物倉の中へと忍び込んだ。麻袋に詰められた食糧が山と積まれ、倉庫の隅々まで埋め尽くさんばかりだ。スーランキーが関ヶ原を陥落させようとする決意のほどが窺える。さくらは麻袋に油を浴びせかけ、火種に息を吹きかけて投げつけようとした、その瞬間。背後で足音が響き、鋭い声が飛んだ。「止まれ!」さくらの心臓がどきりと跳ねた。こんなに早く見つかるなんて……?火がすでに燃え移ったのを見て、彼女はもはや構っていられず、脱兎のごとく外へ向かって駆け出した。衛兵と一戦交えてでも活路を見出す覚悟を決め、まずは鞭をその手に握りしめた。しかし、二、三歩も走らないうちに、彼女が目にしたのは、慌てふためく琴音を衛兵たちが追い立てて、この穀物倉へとなだれ込んでくる光景だった。さくらは愕然とした。彼らは皆、逃げ延びたのではなかったのか?追い返されたというのか?さっと視線を走らせるが、琴音以外の仲間は見当たらない。それどころか、十数人の衛兵が中に入ってきていた。彼女は疾風のごとく前に出ると、手にした鞭を衛兵たちに叩きつけ、琴音に向かって叫んだ。「逃げて!なぜ戻ってきたの!」「援軍は?どうしてあなた一人なの?」琴音は燃え始めた穀物倉を一瞥したが、そこには他の誰の姿もなく、明らかに狼狽していた。彼女

  • 桜華、戦場に舞う   第1658話

    琴音はその言葉を受ける勇気はなく、ぐっと息を呑んで守の方を向いた。「守さん、私はあなたと同じ組がいいわ」守は感情の読めない瞳でさくらを一瞥すると、言った。「俺たちは指揮に従おう。手柄を立てるかどうかは重要じゃない。任務を完遂し、無事に生きて帰ることこそが肝要だ」もちろん、彼もさくらが一人で穀物倉に乗り込むなどとは信じていなかった。周囲の材木が燃え上がれば、穀物倉は最も危険な場所と化す。その上、彼女自身が穀物倉の中で火を放つというのだ。燃え盛る炎の中、どうやって逃げ出すというのか。だから、おそらく自分たちが周囲に火を放つ頃には、穀物倉に潜んでいた者たちがすでに火を放っているのだろう。さくらの役目は、ただ形だけのことなのだと、彼は推測していた。当初、守の心は不平で満たされていた。そして、このような官僚社会の現実に悲哀を感じた。名門貴族はその地位を代々受け継ぎ、祖先や父祖の後ろ盾さえあれば、たやすく出世の階段を駆け上がり、功績を立て、一族の栄華を永続させることができる。だが、ふと考えを巡らせた。己の父は凡庸な男だった。もし祖父の戦功がなければ、官職を得ることすらできず、ましてやこの将軍邸を守り抜くことなど到底不可能だったろう。そして自分が今、奮闘している意味も、まさにそこにあるのではないか。己の子や孫が、自分の遺した恩恵を受け、北條の家名をさらに輝かせてくれることを願って。それに、さくらの武芸が優れているのは紛れもない事実だ。彼女には、確かな実力がある。父祖の威光という恩恵を受け、なおかつ本人に実力がある。そこに誰かの後押しが加われば、成功は必然だろう。たとえ、それが女であっても。そこまで考えが至ると、守の心のもやは晴れた。今の自分の身分と能力では、このおこぼれに与れるだけでも御の字だ。油樽を背負い、一行は夜の闇へと出発した。鹿背田城では申の刻から夜明けまで夜間外出が禁じられている。今はまさにその時間帯であり、慎重に行動せざるを得なかった。彼らは軽身功を使わなかった。鹿背田城には物見台があり、そこには達人級の監視役がいる。下手に軽身功を使えば、かえって動きを察知されやすい。ただ疾く歩を進めるしかなかった。壁があれば、壁に身を寄せて進む。壁がなければ、素早く駆け抜ける。空には星々が瞬き、上弦の月が時折顔を覗かせ、ま

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    起き上がろうとするが、全身の力が抜け、大病を患った後のようにぐったりとしていた。扉が「きしっ」と音を立てて開かれた。上原修平は慌てて顔を向けると、屏風の陰から一人の女性が現れた。彼女は乱れのない優美な後ろ髪を、高く束ね上げた髪型に、揺れる簪を飾り、白地に青の襟元の衣装を身に纏い、薄紅色の雲鶴緞子の羽織をその上に羽織っていた。四十歳前後。歳月の痕跡は深くはないが、威厳に満ちた表情は、明らかに上位者特有の威圧感を放っていた。彼女の後ろから付き人が椅子を運び、寝台の傍らに置くと、彼女はゆっくりと腰を下ろした。冷徹な視線が、狼狽える上原修平の目と交差する。「お前は......誰?」上原

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