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第1316話

Author: かんもく
蓮はその顔をはっきり確認した瞬間、別のエレベーターへ早足で向かう。

奏は随行の者たちとともにエレベーターを出て、ホテルの正面口へ向かっていく。

彼は蓮に気付いていない様子だ。

あるいは気付いていても、自分の息子だとは思っていないのかもしれない。

とにかく今回は危うく見つかりそうになりながらも、なんとか切り抜けた。

奏が去った後、蓮の前のエレベーターが開く。

蓮は数秒ほどためらい、結局フロントへ向かいチェックアウトすることにした。

今日ここで奏に会った以上、このホテルにいればまた鉢合わせする可能性は高い。

このホテルはY国でも指折りの高級ホテルで、蓮がここを選んだのは安全性が高いからだ。

ただ、このホテルのオーナーは剛である。

奏が今日ホテルに来たのは、剛に視察を頼まれたためだ。

剛は自分の事業を奏に引き継がせたいと考えている。

大貴はやり方が粗く、外で敵を作り過ぎた。もし剛が庇わなければ、とっくに誰かに潰されている。

そのため剛は一昨年、大貴を別の都市へ送り出し、新規事業の開拓を任せた。

表向きは新規開拓だが、実際は嵐を避けさせるためだった。

しかし大貴は数年経っても成果を出せず、剛としては奏を手元に引き込むしか道がない。

一昨日、とわこの件で二人の間に多少の軋轢はあったが、幸い深刻な溝にはならなかった。

奏はホテルを出て、駐車場へ向かい大股で歩く。

ボディーガードが先に進み、ドアを開けて待つ。

奏はドアの前でふと歩みを止めた。

「ちょっと電話をする」そう告げると、踵を返しホテル前の噴水の方へ向かった。

その頃、とわこと俊平は病院にいた。

とわこは俊平の顔の傷に塗り薬が必要だと思い、俊平は彼女が脳腫瘍の状態を確認するため再検査すべきだと考えている。

互いに譲らず説得し合い、結果として二人は折衷案に落ち着いた。

彼は外用薬を買いに行き、とわこは検査を受ける。

奏が電話をかけてきたとき、とわこはCT室で検査中だった。

彼女のスマホは俊平が預かっている。

俊平は奏からの着信を見て、出るべきか迷った。

出たところで、とわこのスマホが自分の手にある理由をどう説明すればいい。

そう考え、出ないことに決めた。

奏は疑い深く鋭い男で、彼の前で下手な嘘をつけばすぐに見抜かれる。

五分後、とわこがCT室から出てきた。

俊平
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