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第845章

Author: かんもく
保安検査員が近づき、奏を促した。

「とわこ、頼む。俺には、解決しなきゃいけないことがある。少しだけ時間をくれ」

「嫌よ!時間をあげたら、あなたは直美と結婚するでしょ! そんなの絶対に許せない!相手が直美でも、他の誰でも、花嫁が私じゃないなら絶対にダメ!」彼女は歯を食いしばり、言葉を続けた。「もし今日あなたが行くなら、もう二度と私にも、子供たちにも会えないと思って!」

お願いなんて、もうしない。

彼が脅されているなら、彼女だって脅してやる。

自分の賭けが、三木家より劣っているとは思わない。

奏の目が赤くなり、涙がにじむ。強く冷静に見えたその表情が、ほんの一瞬で崩れる。

彼女は、彼を追い詰めてしまった。本当は、こんな風にぶつかりたくなかった。

でも、それ以上に彼が直美と結婚するなんて、そんなの絶対に耐えられない!

「もし、私が今、別の男と結婚しようとしていたら? それでも平気でいられる?少しでも私の気持ちが分かる?」とわこは涙をこらえ、顎を上げた。「今日、最後のチャンスをあげるわ。一緒に帰るか、それとも、もう終わりにするか」

胸が張り裂けるほど苦しかった。

彼女は完全に縁を切ろうとしている。

その気持ちは理解できたが、受け入れられない。

「わかった、縁を切ろう」とも、「直美とは結婚しない」とも言えなかった。

生きることは、時として死ぬよりも辛い。今の彼は、まさに生き地獄だった。

彼女が目の前で、泣き腫らした目をしている。抱きしめて笑顔にしたかった。だが、それどころか、彼女を深く傷つけてしまった。

彼は自分を罵った。情けない。

彼は彼女の顔を両手で包み込み、その冷たい唇に口づけた。

伝えたいことは山ほどあったが、今はまだその時ではない。

とわこは長年共に過ごした奏のことを、誰よりも理解していた。

彼の眼差しや仕草の意味を、すぐに察知できる仲だった。

彼を一瞥することもなく、とわこは踵を返し、歩き去った。

彼は、直美を選んだ。

たとえ今、彼がキスをしても、何も変わらない。

彼女は彼のために自尊心も理性も捨てられない。愛人にも、操り人形にもなりたくない。

彼女の去る背中を、奏はただ見つめることしかできなかった。まるで、心臓を砕かれるような痛み。

信じていたものが、崩れ去っていく。

「お客様?」職員が近づき、声をかけた。「ご
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Mga Comments (2)
goodnovel comment avatar
ウサコッツ
とわこにはまだまだ 幸せになる道がある 湊より素敵な人と結婚して 子どもたちに素敵なパパを見つけてあげて
goodnovel comment avatar
ウサコッツ
湊捨てて正解だよ 他の人と幸せになろう
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