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第2話

Auteur: スナネズミの王様
余計な波風を立てたくなくて、私は唇を噛みしめた。

「数日、休みをもらうだけ」

足を止めずに、荷物をまとめるため教室に戻った。

だが、教室に足を踏み入れた瞬間、莉子が私の持ち物を床にばらまいているのが目に入った。

彼女の手には、壊れたボイスレコーダーが握られている。

全身の血の気が引いた。

そこには、祖母が亡くなる前に残してくれた遺言が入っていたのだ。

死の間際まで、私にちゃんとご飯を食べるように、辛い思いをしないようにと言い残してくれた、大切な声。

莉子は私に気づくと、口笛を吹いた。

「あなたの机、ゴミばっかりだったから片付けてあげたわよ」

近づいて見ると、私の持ち物すべてに接着剤がかけられていた。

私は歯を食いしばり、彼女の手からレコーダーを奪い取ろうとした。

彼女は眉をひそめて私の頬をひっぱたいたが、期待していたような怯えの色が見えないことに、少し失望した様子だ。

「返して!」

私が莉子の手に噛みつくと、彼女は瞬時に顔色を変えた。

けれど次の瞬間、私は戻ってきたばかりの歳明に激しく突き飛ばされた。

体勢を崩して机の角に体をぶつけ、あまりの痛さに顔が青ざめた。

彼は莉子を支えながら、怒りに満ちた目で私を問い詰めた。

「お前がこんなに身の程知らずだなんて、気づかなかったぜ。みんなに無視されるのも納得だな」

私は歳明を見つめ、長い沈黙のあと、震える声を絞り出した。

「椚田が持ってるのは、おばあちゃんが残してくれた最期の話なの!それを、彼女が壊したのよ!」

私は、歳明の目にわずかでも罪悪感が宿ることを期待し、彼を見つめた。

しかし、彼は壊れたレコーダーを一瞥すると、冷たく鼻で笑った。

「ただの野菜売りババアの持ち物だろ。そんなもんのために、犬みたいに噛みついてんのか?」

涙が止まらなくなった。

彼が口にした「野菜売りババア」が、十数年も私と支え合って生きてきた、私にとって最も大切な人だということを、彼は知っているはずなのに。

かつて、彼が祖母の野菜売りをこっそり手伝っているのを見つけた時、彼は耳を赤らめながら言った。

「お前のおばあちゃんは、俺のおばあちゃんなんだ!それに、お前にはおばあちゃん以外にも身内がいることを忘れるな。これからは、俺がいるんだからな!」

あの時、胸を熱くさせたその言葉が、今は私の心を深く突き刺している。

歳明はそれでも気が済まないのか、レコーダーを足で踏みつけて壊した。

「だいたい、お前のおばあちゃんからは二日前にも電話があったぞ。可哀想なふりをするのもいい加減にしろ。よくもそんな嘘がつけるな」

私は絶望のあまり、笑いが込み上げてきた。

祖母の死を嘘に使うはずがない。けれど彼の目には、被害者のふりをした莉子の姿しか映っておらず、それ以外のことは考えられないようだ。

教室の騒ぎを聞きつけた担任が、厳しい表情で入ってきた。

「何を騒いでるんだ!学校があんな不祥事で揺れてるというのに、まだ足りないのか?」

莉子が手を挙げた。

「先生、さっき北条南実(ほうじょう みなみ)の机の中から、前回のテストのカンニングペーパーを見つけました」

彼女は紙切れを一枚、担任に差し出した。

私は勢いよく顔を上げ、勝ち誇ったような莉子の視線とぶつかった。

前回のテストのために、私は毎日五時間も寝ずに必死に勉強した。

その結果、誰からも期待されていなかった私が、学年一位を勝ち取ったのだ。

ようやく奨学金と大学の推薦入試の出願枠を手に入れられるはずだ。

担任は眉をひそめ、失望の色を隠そうともしない。

「北条さん、あんなに成績が上がったのは、不正をしてたからだったのか。学校に報告し、奨学金と出願枠は取り消しとする!」

私は拳を握りしめた。「先生、私はカンニングなんてしていません」

担任は再び歳明に目を向けた。

「長谷川くん、君は試験の時北条さんの後ろに座ってただろう。彼女は不正をしてたか?」

私は歳明を見た。

この奨学金と出願枠は、私にとって祖母との約束であり、その大切さを彼が知っているはずだ。

そして、私が不正をしていないことも。

彼は、私が最も必死に努力している姿をそばで見守っていた。そのたびに、愛おしそうに目を細めて言ったのだ。

「南実、お前のことを誇りに思うんだ」

一筋の希望が、ふと私の胸をよぎった。

歳明は私を見つめたまま、長い間黙り込んでいたが、ついに口を開いた。

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