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第4話

Author: 安砂こはる
その命令を聞いた途端、学生たちは黙っていられなくなった。

私を見る目は、同情から憎しみへと変わっていった。

同じ班の学生たちは歯を食いしばり、ほかの班から向けられる視線には、さらに露骨な敵意がこもっていた。

先ほど私をかばってくれた男性指導員まで、険しい顔で私を見るようになった。

こんな寒さのなか、誰だって一刻も早く休みたかったのだ。

男性指導員は仕方なく私のそばへ近づき、言い聞かせるように声をかけた。

「君も少しは、周りのことを考えたらどうなんだ?千人近い新入生が、君一人のためにこんな寒いなか立たされているんだぞ。何とも思わないのか?」

ところが次の瞬間、私のすぐそばまで来た男性指導員は、何かに気づいて大きくよろめき、その場に尻もちをついた。

「こ、この子……何かおかしい!地面に触れていた頬が擦りむけて、唇もこんな色になっているのに、どうしてまったく動かないんだ?本当に何かあったんじゃないのか?」

彼が私の呼吸を確かめようと身を乗り出した瞬間、美佐子が鋭く制した。

「だからあなたたちは甘いのよ!この子は、あなたたちなら簡単に騙せると思って、死んだふりをしているだけ!信じられないなら触ってみなさい。寒さで身体が冷えているだけでしょう!」

男性指導員は半信半疑のまま、私の腕に触れた。

手足は冷え切り、硬くこわばっていた。

けれど彼は、それを長時間冷たい地面に寝かされていたせいだと思い込んだ。

たちまち、心配した自分を恥じるように顔を赤くし、立ち上がると、私のそばへ唾を吐いた。

「こっちは本気で心配してやったのに、死んだふりまでして脅かすつもりか!黒川学長の言うとおりだ。こういう聞き分けのない学生には、少しくらい厳しくしたほうがいい!」

ほかの班の学生たちも一斉に声を上げ、私を指さして罵り始めた。

「最低!あんたのせいで全員が巻き込まれてるんだよ。早く起きなさいよ!」

「黒川学長はあれだけ自分に厳しい人なのに、あんたのどこが娘なの?大学の恥さらしじゃない!」

「このまま起きないなら、大学にいる間ずっと許さないから!」

四方から浴びせられる罵声に、私は怖くて震えた。

私だって起きたかった。

でも、もう死んでしまっているのだ。

どうすることもできず、私は慌てて母のいる学長室へ飛んでいった。

母は学長室の奥にある簡易キッチンで、電気鍋を使ってかぼちゃのポタージュを温めていた。

通りかかった教職員たちは、その様子を見て笑いながら声をかけた。

「黒川学長、また澄香さんのためにポタージュを作っているんですか?こんなに気の利くお母さんがいて、澄香さんは幸せですね」

けれど母は、不満そうに小さくこぼした。

「その本人は、まだ下で私に反抗しているのよ。たった30分立っただけなのに、喘息が出たふりまでして。私が何年あの子を育ててきたと思っているの。発作かどうかくらい、見れば分かる」

以前、娘を私の代わりに交換留学へ行かせてもらった教職員が、すぐに母をなだめた。

「澄香さんは十分すぎるほど聞き分けのいい子ですよ。

あの子が譲ってくれなければ、うちの娘が海外へ行く機会なんてありませんでした。

しかも、澄香さんがずっと行きたがっていた国だったと聞いています。今日はもう、許してあげてもいいのでは?」

しかし母は、失望したように首を振った。

「あの子が譲るのは当たり前でしょう。私の娘なら、それくらいの覚悟は持ってもらわないと困るわ。今日みたいに大騒ぎしておいて、どこが聞き分けのいい子なの?」

そのとき突然、階下から大勢の叫び声が聞こえてきた。

教職員たちは一斉に窓際へ駆け寄り、外をのぞき込んだ。

大勢の学生が私を取り囲み、口々に責め立てているのを見た瞬間、母の目にわずかな動揺が走った。

反射的に部屋を飛び出そうとしたものの、扉の前で足を止めた。

何をためらっているのか、私には分からなかった。

学生たちの声を聞き、事情を察した教職員たちは、たちまち顔色を変えた。

「黒川学長、澄香さんはあんなに冷たい金属の上に、もう長いこと寝かされています。罰としては、十分すぎるほど厳しいでしょう。そのうえ大勢から責められたら、これから大学でどう過ごせばいいんですか?」

けれど母は、顔を背けた。

「私だって離婚したばかりの頃は、周りに何を言われても、あの子を一人で育ててきたの。少しくらい冷たい地面に寝かされて、みんなに責められたほうが、自分の立場を利用しようなんて考えなくなるでしょう。ここで甘やかしたら、父親と同じような無責任で自分勝手な人間になってしまうわ」

私は、湯気を立てるかぼちゃのポタージュを見つめながら、焦りとやるせなさで胸がいっぱいになった。

お母さん。私は自分勝手なんかじゃない。本当に、もう死んでいるの。

大学の保健センターに勤める森下先生は、母を説得できないと悟っても、どうしても放っておくことができなかった。

一人で急いで階下へ向かい、私を取り囲んでいた学生たちをかき分ける。

そして、ようやく私の姿を目にした瞬間、森下先生の膝から力が抜けた。

重い足取りで私のそばまで近づくと、震える手を首元へ伸ばし、脈を確かめた。

次の瞬間、鋭い叫び声がグラウンド中に響き渡った。

「大変です!すぐに救急車を呼んでください!」

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