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第5話

Auteur: もう頑張れない
晴美は、男性に連れられてホテルに向かった。

彼の後ろをついてロビーまで来たとき、晴美はふと違和感を覚えた。

まさか彼は、彼女のことを尻が軽い女だと勘違いしているのでは?

彼女は急いで彼の袖を掴み、必死に言い訳した。

「違うの、そんな意味じゃないの」

男性は振り返って微笑んだ。

「安心して。俺もそんなつもりじゃないよ」

そしてフロントで部屋を一つ取り、カードキーを晴美に手渡した。

「どうぞ。着替えて」

その時ようやく、晴美は彼の顔をちゃんと見た。

整った顔立ちに明るく優しい雰囲気で、恒志とはまったく異なるタイプだった。

「ありがとう」

男性は彼女に背を向け、軽く手を振ってそのまま去って行った。

晴美は部屋で頭からつま先までしっかりとシャワーを浴び、服を整えたものの、ベッドに横になっても眠れなかった。

明日には学校に戻って、まだ挽回のチャンスがあるか確かめようと思った。

翌日、彼女は大学に戻った。

だが待っていたのは、周囲の冷たい視線と完全な孤立だった。

指導教員の木村先生が彼女の肩にそっと手を置いた。

その瞬間、晴美の目に涙が溜まり、もう少しで泣き出しそうになった。

「大丈夫よ、晴美。事情は聞いたわ。まずはデータを復元できるかやってみましょう」

その後、木村先生は皆を集め、改めて対策を練るよう呼びかけた。

呼びかけを聞いた生徒たちは手を動かすスピードを上げ、ある先輩が温かく慰めに来てくれた。

「絶対なんとかなるよ。心配しないで、晴美。交流プロジェクトにも間に合うはず」

晴美の目には涙があふれ、ついにこらえきれずに、大粒の涙がぽたぽたと石の床に落ちた。

みんなが二日間奮闘し、ついに実験結果が出そうになったその時、一人の生徒がスマホを持って大声で叫んだ。

「先生!柳本琴星という人が先に発表して、しかも特許まで取りました!」

みんなが一斉に集まり、ざわめきが一瞬で消えた。

全員がスマホのライブインタビューに目を奪われ、じっと見つめていた。

レポーターが聞いた。

「この研究、確かA大学のラボがすでに行っていたと聞いています。どうして柳本さんが先に発表できたのですか?」

琴星は落ち着いた様子で微笑んだ。

「彼らの研究内容は知りません。ただ、実験中に私の姉が私たちの資料を見たことはあるかもしれません」

記者は驚いた。

「つまり、あなたの姉がデータを盗んだと?」

「姉さんが盗作したなんて、みんな信じないかもしれません。でも、姉さんは確かに私の部屋に入って、実験データを見たことがあります」

琴星は目を潤ませ、涙声で語った。

「姉さんは何度も、私に良い成績を取るなと警告しました。もし私の順位が彼女を超えたら、私に痛い目に遭わせると言いました。しかも、姉さんの彼氏は米村家の御曹司なので、姉さんを怒らせるとろくなことにならないとも言っていました」

その時、カメラはそばにいた恒志にも向けられ、彼も立ち上がった。

「琴星の言うことはすべて本当です。米村家が投資した研究所で、彼女は毎晩遅くまで頑張っていました」

会場は騒然となり、みんながざわつき始めた。

「水村晴美って、まさか盗作だったの?」

「意外だな。学年トップなのに」

「学年トップ?米村家に頼ってたんだろう」

コメント欄には、晴美を非難する言葉が溢れていた。

晴美は盗作の汚名を着せられた。

その生徒はライブ配信を切り、拳を強く握りしめた。

皆の晴美を見る目は恨みでいっぱいだった。

今や晴美だけでなく、誰かがこの実験を自分のものだと名乗り出れば、即座に盗作のレッテルを貼られる状況だ。

誰もが落胆した。

あの短気な先輩は手に持っていた試験管を勢いよく叩き割った。

「言っただろ!晴美なんて信じるなって!どうだ?みんなの半年間の努力が水の泡になったぞ!」

そばに立っている晴美は、どう言えばいいのか分からず、慎重にみんなに謝った。

「本当にごめんなさい。必ず責任を取ります」

晴美は実験棟を飛び出し、タクシーで米村家へ向かった。

恒志の部屋に飛び込むと、彼はデスクで書類に目を通していた。

彼女を見るなり、軽く笑った。

「やっぱり戻ってきたか。婚約破棄なんて冗談だと思ってたよ。結婚式は来月だ。前回より、もっと盛大にしてやる」

晴美は何も言わず、近づいて彼の頬を思い切り叩いた。

「晴美、何するんだ!」

「あの実験、私にとって、どれほど大事だったか知ってるはずでしょ?なんで琴星をかばうの?」

恒志は彼女の腕をつかんだ。

「琴星は鬱なんだ。自害でもしたら、どうする!」

「まさか、私が一生彼女の面倒を見なきゃならないの?」

「お前は琴星の人生を奪ったんだ。今は実験データくらいで騒ぐな」

晴美は彼と話が通じないと感じて、振り返らずに立ち去ろうとしたが、恒志に後ろからしっかり抱きしめられた。

「いい加減にしろ。お前には、俺と家族がいるだろ。でも、琴星は孤児だぞ。

米村家に嫁げば、こんな名誉なんか必要なくなるんだ」

晴美は彼の腕を必死に振りほどき、真剣な目で彼を見据えた。

「恒志、聞いて。婚約破棄は本気よ。私たちはもう終わり」

恒志の瞳は血走っていた。

彼は晴美がこんなにも怒り狂った姿を見たことがなかった。そして、晴美が本気であることを痛感していた。

彼は晴美を抱き上げ、地下のワインセラーに閉じ込めた。

晴美がどれだけドアを叩いても、彼は決して開けようとしなかった。

「晴美、ずっと俺と一緒にいるって約束しただろう。

お前が目を覚ますまで、絶対に出さない!」

晴美は必死にワインセラーのドアを叩いたが、応答はなかった。

彼女は初めて、恒志のこんなに恐ろしい姿を目の当たりにした。

体を左右に揺らしながら、彼女はスマホを手にワインセラーの隅々まで探し回り、逃げ出す方法を必死に考えたが、どれも無駄だった。誰も助けに来る者はいなかった。

やがて、彼女は諦めた。頭はぼんやりとし、この数日間の雨に濡れ続けたこと、そして感情の激しい波に押し流されたせいで、意識がふっと遠のいた。

もしも、あの時、琴星が現れなかったら、どれほど良かっただろう。

もしも、恒志が以前の恒志のままだったら、どれほど良かっただろう。

だが、彼らの関係は、もう決して元には戻らないのだ。
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