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第257話
Pinakabagong kabanata
永遠の毒薬 第314話
「乃亜、安心して、すぐに商業施設のネクタイの販売記録を調べるから」 紗希の声は画面越しに響き、わずかな優しさと力強さを含んで乃亜の心に届いた。 乃亜は頷き、自然と口元が緩んだ。心の中で感謝し、少し安心した。 誰がネクタイを買ったかが分かれば、その先にいる黒幕を見つけ出せる。 「今日はもう疲れたでしょう。先に休んで、元気になったらまた話そうね！」 紗希は乃亜が疲れているのを見て、優しく言った。 「うん、休むわ」乃亜はそう言って、ビデオ通話を切った。 画面が暗くなるのを見つめながら、紗希は少し悩んだ後に彼の番号を押した。 「何か用か？」男性の冷たい声が響く。 紗希は一瞬驚き、彼が意図的に距離を取ろうとしているのを感じた。 「話せ」男性は少し苛立った様子で言った。 「お願いがあるんだけど」紗希はどう切り出せば協力してくれるか慎重に考えた。 「お前、言っただろ？『ベッドから降りたら他人のふりをしよう』って。今、他人にお願いするのか？」 男性の声には少し楽しげな感じが混じっていた。 紗希は少し困ったが、すぐに「じゃあ、失礼したわね」とだけ言って電話を切った。 直人ならすぐに商業施設の販売記録を調べることができるが、彼は手を貸してくれなかった。 そのため、紗希は自分で調べるしかなかった。 その頃、乃亜は携帯を置いた。紗希と話した後、少し気持ちが軽くなった。 彼女は深いため息をつき、スリッパを脱いでソファに横になった。 毛布を引き寄せてテレビをつけると、ちょうど美咲のインタビューが生中継されていた。 テレビに映る美咲は優しく微笑んでいて、幸せそうな顔をしていた。 乃亜は自然と毛布をぎゅっと抱きしめてソファの背もたれに頭を預け、アーモンドアイで画面をじっと見つめた。 美咲は確か、最近流産したばかりではなかったか？ まだ体調が戻っていないはずなのに、インタビューを受けるなんて本当に無理をしている。 でも、美咲は無理をしなくても良いのでは無いか。 今、乃亜と凌央が離婚したから、すぐに美咲は凌央と結婚することになるだろう。 凌央が美咲をどれほど大切に思っているかを考えれば、結婚後に美咲はすべてを手に入れ、何も不自由しな
永遠の毒薬 第313話
あの日、彼女がネクタイを買った時、誰かがそれを見ていたに違いない。 そして、同じデザインを買って拓海に送ったのだ。 それが今日、凌央がその件について言い出した原因だ。 「分かった、カードを取りに帰るよ！」拓海は真剣な表情で言った。 相手は陰にいて、こちらは明るいところにいる。少し不気味だ。 「じゃあ、私は先に上がるね」 乃亜はそう言って、部屋を出て行った。 彼女が姿を消すまで、拓海はじっとその後ろ姿を見守っていた。 その時、電話が鳴った。 電話を受けてすぐに切り、拓海は車に乗り込んだ。乃亜が家に戻ると、すぐに紗希からのビデオ通話がかかってきた。 紗希は心配して乃亜の顔を見たかったのだ。 その心配を聞いて、乃亜は心が温かくなった。 紗希だけは、ずっと彼女を気にかけてくれている。 「乃亜が一人でいるのが心配だよ。私がそっちに行って面倒を見るか、それとも使用人を頼むか、どっちか選んで！」 紗希は本気で心配している様子だった。万が一、乃亜が考え込んでしまったらどうしようかと心配していた。 「大丈夫、心配しないでちょうだい！」 乃亜は軽く笑って答えた。 今のところお腹も目立っていないし、体も重くないから、一人でも問題ないと思っていた。 紗希はため息をついて言った。「分かった、無理には言わないわ。でも、もし何かおかしなことがあったら、すぐに電話してね！」 乃亜はリビングのガラス窓の前に立ち、窓の外を見ながら、複雑な気持ちを抑えつつ静かに言った。 「実は、凌央がさっきここに来て騒ぎを起こしたの。しかも、私を養うって言って、家族カードまでくれるって」 紗希はすぐに怒った。「え？凌央がエメラルド・パレスで騒いだの？頭おかしいんじゃないの！」 紗希の声には怒りと軽蔑が混ざっていた。 乃亜は静かにため息をつき、ソファの横に歩いて行き、ゆっくりと座りながら言った。「あの人、ただの衝動的な行動だから、真に受けないほうがいいわよ」 紗希はうなずいて言った。「そうだね。でも、そんな無理な人に惑わされる必要はないよ」 「もちろん！」乃亜は軽蔑のこもった声で言った。「前に一緒にいた時、全然大切にしてくれなかった。それなの
永遠の毒薬 第312話
乃亜は彼がとても不思議と感じた。 彼は乃亜と拓海のことを話すのはいいが、乃亜が美咲との関係に少し触れるだけで怒る。 こんなに横暴な人がいるなんて、笑えてきた。 「乃亜、もし御臨湾に帰るなら、俺は毎日決まった時間に家に帰って、お前と一緒に夕食を食べる。どうだ？もしお前がそれに同意するなら、拓海にあげていたネクタイのことはもう言わない。すべて水に流すよ」 凌央は乃亜の目を真剣に見つめながら言った。 彼は乃亜を手元に留めたかった。 たとえ少し卑屈になっても構わない。 目的が達成できればそれでいい。「凌央、あなた、脳外科に行ったほうがいいんじゃない？」乃亜は彼が真剣に冗談を言っているのを見て、思わず笑いそうになった。 愛人になればお金も手に入るし、好きな仕事もできる。 他の女性なら、きっと心が動くかもしれない。 でも、今の乃亜は凌央に対して全く感情がない。絶対に戻ることはない。 「乃亜！お前、いい加減にしろ！」 凌央は語気を強め、明らかに不満そうだった。 彼はあれだけ寛大に拓海に送ったネクタイのことも気にしなかったのに、乃亜に脳がおかしいとまで言われるなんて。 乃亜はうんざりした顔で彼を見つめた。「言っておくけど、私はもう二度とあんたとは一緒に住まない。もし美咲が満足できないなら、他の女性を探せばいいわ。きっと誰でも喜んであんたの生理的な要求を解決してくれるから」 そんなことは絶対にやらない。 凌央はあきれて笑った。「乃亜、よくやった！」 そう言って、彼は背を向けて歩き去った。 凌央が遠くに行ったのを確認した乃亜は、ようやく本当に去ったことを確信した。 その時、拓海が近づいてきた。「乃亜、送ろうか？」 乃亜は我に返り、拓海に向かって微笑んだ。「先に帰ってて、私は一人で上がるから。心配しないで、大丈夫！」 凌央を追い払ったのだから、もう何も問題ない。 拓海は乃亜の顔を見て、さっき凌央が言っていたことを思い出した。少し考えた後、彼は尋ねた。「乃亜、このネクタイ、俺に送ってくれたんだよね？」 拓海はそのネクタイをもらったときの喜びを今でも覚えている。 凌央が言うには乃亜が送ったことになっているが、乃亜はそれを否
永遠の毒薬 第311話
拓海は乃亜の顔色が良くなったのを確認すると、ようやく彼女を下ろした。「じゃあ、君たちで話して。俺はちょっと電話してくる」 乃亜はうなずき、手を振って彼に別れを告げた。 二人の様子を見ていた凌央は、心の中で怒りが湧き上がった。 まったく、乃亜はなぜこんなことができるんだ！ 拓海が離れていくと、乃亜は凌央の方に歩み寄った。 さっきの不快感はすっかり消え、気持ちが落ち着いて自然な状態になった。 乃亜は静かに顔を上げて凌央を見つめ、微笑んで言った。「もし、離婚して私の財産を分けられるのが嫌なら、美咲に送ったプレゼントや家、車、美容院の費用、全部返してもらってから、また財産を再分けしようかしら？」 これから弁護士を続けるつもりはないから、恥をかく心配もない。 ただ、凌央を少しでも苛立たせるためだけに言った。 凌央は乃亜の言葉を聞き、顔色が一瞬で変わった。「お前、ほんとにうまいこと言うな！俺が言ってるのはお前とあの男のことだろうが。なんで美咲の話を持ち出すんだ！」 以前は、乃亜は優しくて従順だと思っていた。それが、こんなに手強いとは思わなかった。 乃亜はその一言を聞いて、さらに強気に返した。「美咲との関係は、もう何年も前から桜華市中の人が知ってることよ。私は何も隠してないわ。あなたに何の資格で私に男がいるって言えるの？」 凌央は少し苛立ちながらも、「美咲とは何もない、誤解するな！」と反論した。その瞬間、電話が鳴った。 凌央は眉をひそめて携帯を取り出した。 乃亜は画面に表示された名前を見て、唇の端に冷やかな笑みを浮かべた。 電話の相手は美咲だと気づいた凌央は、すぐに電話を切った。 だが、すぐにまた電話がかかってきた。 乃亜はアーモンドアイで彼の顔をじっと見つめ、軽く笑った。「蓮見社長、もしお忙しいなら、私は先に失礼しますね。彼女とお話しする邪魔はしたくないので」 もう離婚したし、彼女としてはもう何も気にすることはない。彼に迷惑をかけたくない。 凌央は冷笑を浮かべながら、乃亜の手首をつかんだ。「乃亜、御臨湾に戻って住んでくれ」 離婚したが一緒に住んでも問題ないだろう、という意味だった。 乃亜はその言葉を聞いて、しばらく呆然とした。
永遠の毒薬 第310話
拓海は乃亜が倒れそうな様子を見て、心配になり、顔に冷たい表情を浮かべながら一歩前に出て乃亜を後ろにかばった。凌央と目を合わせて言った。「蓮見社長、あなたたちはもう離婚しました。元妻のことに、あなたが口を出す権利はありません」凌央が乃亜を厳しく責める姿は、どこか滑稽に見えた。凌央は冷笑を浮かべながら言った。「俺が使い捨てした女を、お前が拾うのか？田中家の血筋は、こういうものか？」拓海は乃亜が耐えきれなくなることを心配し、痛みを感じた。凌央の目には嵐が見え、普段は穏やかな顔に冷徹さが加わった。「そういう品性だからこそ、乃亜が離婚したんだろう」「ふん、離婚したからと言って、彼女はまだ俺のものだ。田中家の若者、お前が許可しなくても、乃亜とどうするかは俺が決める」凌央は嫉妬に燃え、言葉がさらに冷たくなった。乃亜は拓海の後ろに立ち、凌央の言葉が耳に残り、胸が痛んだ。結局、凌央にとって自分は「使い捨ての女」に過ぎなかったのだと思い知らされた。「乃亜が誰と一緒にいるかは、彼女の自由です。蓮見社長に何の権利があるのでしょうか？」拓海は冷ややかに微笑み、凌央を見つめながら言った。凌央が何も言わないうちに、拓海は乃亜の手を引いて歩き始めた。乃亜が凌央と一緒にいた時、彼は大切にしなかった。今、失ってしまったのだから、乃亜を取り戻すことはできない。乃亜は胸が締め付けられるような感覚に襲われ、目頭が熱く、足元も重く感じて、歩くのが非常に辛かった。拓海は彼女の異変に気づき、顔を傾けて見た。乃亜の顔色は青白く、目の奥には涙が溜まっていて、非常に辛そうだった。拓海はすぐに歩みを止め、低い声で言った。「辛いなら、俺が抱き上げよう」乃亜は静かにうなずいた。彼女は足を動かすことすらできなかった。拓海は乃亜をそっと抱き上げた。乃亜は深く息を吸い、顔を彼の胸に埋めた。「拓海、ありがとう」凌央に見られなくて良かった。もし見られていたら、きっと笑いものにされていたかもしれない。「目を閉じて、何も考えずに」拓海は優しく言った。凌央の言葉は、確かに乃亜の心を傷つけた。「乃亜！もし行くなら、離婚時に渡すはずの財産、一円も渡さないぞ！」凌央は拓海が乃亜を抱きかかえているのを見て、胸の中で怒りと嫉妬が渦巻
永遠の毒薬 第309話
乃亜は今まで、こんな風に彼に笑ったことはなかった！ 「愛してる」と言ってたはずなのに。 以前、凌央も彼女が自分を愛していると感じていた。 でも、この瞬間、凌央は感じた。彼女が愛しているのは目の前の男だと。 この女、三年間も騙していたのか......どうしてそんなことができるんだ！ その瞬間、凌央の心はまるで見えない手にぎゅっとつかまれたように痛み、息が詰まりそうだった。怒りに燃える一方で、かつてない無力感が押し寄せてきた。 自分がここにいることが信じられなかった。目の前でこんな一幕を目の当たりにするなんて。まるで世界が崩れ落ちたかのようだった。 凌央は必死で呼吸を整え、感情が制御できないように思えた。だが、再びその二人を見た瞬間、怒りは油をかけた炎のように一気に燃え上がり、理性を飲み込もうとした。 「乃亜！」 凌央はついに耐えられず、怒鳴った。その声には長く抑えていた感情と怒りが込められていた。その瞬間、凌央はもう冷静な凌央ではなく、感情に支配された普通の男になったかのようだった。運命の交差点に立ち、前に進むべき道を見失っていた。 乃亜はその怒鳴り声に驚き、耳が痛くなるほどだった。顔を上げると、怒りに満ちた彼の目が絡みつくように視線を交わした。 凌央がなぜこんなところに？ 乃亜は驚いた。 拓海もまた、凌央を見ていた。 なんだ、この男、何を怒ってるんだ？ しばらく沈黙が続いた。空気はまるで爆発寸前のように張り詰め、周りの雑音が一瞬で消えたように感じた。 凌央は一歩一歩大きな足音を立てて近づき、いきなり乃亜を引き寄せた。乃亜は彼の力に引かれるように数歩よろめき、彼の胸に激しくぶつかってしまった。 その胸は硬く、衝撃で頭がふらつき、涙がにじんできた。 「凌央、放して！」 彼女は我に返り、彼を押しのけようとしながら低く吠えた。 「なんでこんなに荒れているのよ！」 「離婚したばかりなのに、すぐにあの男の胸に飛び込むなんて！」 凌央は冷笑し、低い声で怒りをぶつけた。その言葉はまるで歯を食いしばりながら言うようなもので、容赦なく彼女を責めた。 彼の唇は固く結ばれており、その裏には翻弄される感情が渦巻いていた。かつて優しく乃亜の頬
永遠の毒薬 第308話
凌央はその言葉を聞いて、顔色が悪くなった。 「乃亜、あの女、一体何を考えているんだ？彼女は誰と一緒にいたんだ？」 こんな大胆なことをして。 「拓海様が車で迎えに来ていました」山本が答え、空気が一気に冷たくなった。無意識に服を引き寄せた。 「美咲は？」凌央は、このまま話を続けると自分が怒りで壊れてしまいそうだと思い、話題を変えた。 「もう家に送りました」山本は凌央の気持ちを測りかねて、あまり言いたくなかった。 「分かった、じゃあ出て行け」 山本は慌てて立ち上がり、部屋を出た。 山本が出た後、凌央は箱を開けた。 中にはダイヤモンドのネックレスが入っていた。創世グループ傘下の宝石店が今年新作として発表したものだ。 シンプルで美しいデザイン。 選ぶとき、乃亜の美しい首を思い浮かべ、これをつけたらきっと素敵だろうと思った。 だが、乃亜はそれをゴミ箱に捨てていた。 その時、携帯が鳴った。 凌央は一瞬思考を止め、携帯を手に取って開いた。 それは美咲からのメッセージだった。 写真には、拓海の顔が不快に目立っていた。 そのすぐ後に、一行の文字が表示された。 「乃亜もこんなネクタイを買ったことがあるわ」 その一言が心に激しい波を引き起こした。 凌央の頭に、過去の一瞬が浮かんだ。 乃亜からのプレゼントを待っていたことを思い出した。 しかし、そのことをすっかり忘れていた。 そして今、そのネクタイが拓海の首にかかっている。 想像してどれほどの怒りを感じているか。 オフィスの電話が鳴った。凌央は深呼吸をして、受話器を取った。 電話の向こうから、美咲が抑えきれない怒りと焦りを込めて言った。「凌央、さっき見たの......乃亜が拓海にネクタイをつけていたの。まるで恋人みたいに......すごく自然に」 凌央の顔色が瞬時に変わり、目を見開いた。瞳には、信じられないほどの怒りが宿っている。 彼はすぐに立ち上がり、デスクに拳を打ちつけた。書類が飛び散り、紙が舞い散る中、歯を噛みしめて音を立てた。 乃亜、あの女......だからあんなに急いで離婚したかったのか。 拓海に手を出すなんて、許せない！ ただ、拓海
永遠の毒薬 第307話
再び断られて、拓海は少し胸が痛んだが、それでも感情を表に出さないように心掛けた。 「じゃあ、赤ちゃんが生まれたら、啓明に来てくれるかい？」 拓海は心の中で、乃亜と一緒に啓明を大きくしていきたいと思っていた。乃亜は少し笑って言った。 「私、まだ数ヶ月後に赤ちゃんが生まれるのに、もう予約されちゃったわね。でも、もし赤ちゃんが生まれたら、弁護士なんて辞めるかもしれないわよ？」 拓海は微笑んだ。 「待ってるよ。どんなに時間がかかっても待ってるから」 拓海の言葉には、少し意味深なニュアンスが含まれていた。紗希は少し羨ましそうに乃亜を見た。 もし私の周りにこんなにも私を愛してくれる人がいたら、とうに結婚してるわ。 紗希は本気で言っていた。「まあ、将来のことはその時になったら考えよう！」 乃亜は軽く流しながら答えた。「そうだね、またその時に話そう！」 拓海は話題を変えるため、他のことを話し始めた。 「実は、子供の頃君がダンスをしているのを見て、俺は君はダンサーの道を選ぶと思ってたんだ。でも、結局弁護士になったんだね」 「子供の頃はお金を稼ぐことが最優先だったの。でも大人になって、社会の不公平に気づいて、正義を守りたくて弁護士になろうと思ったのよ。今考えると、もしダンスを選んでたら、美咲は無名になるわよね」 乃亜は自分で笑ってしまった。 「ちょっと自惚れすぎかもね！」 紗希は少し笑って言った。 「美咲って、もしバックにお金がなかったら、どうしてあんなに優れた舞者になれたのかしら？結局、彼女が成功したのは実力じゃなくて、男を引き寄せる力だと思う。 結局、彼女は男を利用して最高の舞台に立ったってこと」 紗希は少し挑発的に言った。 拓海は乃亜の顔を見て、彼女の表情が少し暗くなるのを感じた。 彼女がまだ凌央を忘れられていないことが分かった。 でも、三年間夫婦だったから、忘れられないのも当然だろう。「美咲のことを思い出したら、突然思い出したことがあるんだけど」 乃亜は冷静に言った。 「何？」 拓海が聞くと、乃亜は真剣な顔で答えた。「以前、あなたが調べてくれた美咲が私を陥れた証拠を使って、美咲を訴えたいんだけど、それでいい？
永遠の毒薬 第306話
山本は首飾りの箱を見て、少し緊張しながら言った。 「これは、蓮見社長が蓮見夫人の誕生日に選んだプレゼントです。このところ、桜華市の件で忙しくて渡し損ねました。今日はお持ちしました。蓮見社長からもお詫びの言葉をお伝えするよう言われています」 乃亜は首飾りの箱を受け取ると、静かに山本に渡した。 「離婚届は受け取るけれど、このプレゼントは蓮見社長に返して。それに、伝えてください。私はもう彼とは関係がないと。お互いに誰も責めることはないわ」 山本は首飾りの箱を手に持ちながら、戸惑いの表情を浮かべた。 「蓮見夫人、しかし......」 山本は内心、もしこの箱を蓮見社長に戻したら、給料が減らされるかもしれないと感じていた。 蓮見社長の近くで働く者として、小さなことができなければクビになるのではないかと不安になっていた。「わざわざ届けてくれてありがとう。もう行かなきゃ。じゃあ、またね」 乃亜はそう言い、紗希と一緒に車に向かって歩き始めた。山本はしばらくその場で立ちすくんでいたが、急いで追いかけることに決めた。 駐車場に着くと、乃亜はすでに車に乗り込んでいた。 山本は急いで駆け寄り、車の窓を叩いた。 乃亜は振り向き、窓を下げた。 「山本さん、何か？」 乃亜は礼儀正しく尋ねた。 「蓮見夫人、もしよければ、このプレゼントを自分で蓮見社長に返してもらえませんか？俺が返すと、蓮見社長に『こんな簡単なこともできないのか』と言われそうで」 山本は仕方なく低姿勢でお願いした。 乃亜は箱を受け取ると、手を振ってそのままゴミ箱に投げ入れた。 「これで、もう返したわ。あとは自分で報告してちょうだい」 山本は驚き、言葉を失った。 離婚後の乃亜は、まるで別人のようだ。 でも、彼は今の乃亜が好きだと思った。 少なくとも、もう蓮見社長に合わせることなく、自分の考えを持っている。 それがいい。「拓海兄さん、行きましょう」 乃亜は車の窓を閉め、前に座っている拓海に向かって言った。 拓海は振り向き、乃亜の美しいアーモンドアイを見つめながら軽く笑った。 「もし凌央が、お前が誕生日プレゼントを捨てたことを知ったら、きっと怒るだろうね」 乃亜は手に持っ
