ラビリンス

ラビリンス

last updateHuling Na-update : 2025-10-15
By:  空蝉ゆあんOngoing
Language: Japanese
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礼儀作法も姫としての立ち振舞もしないーー お転婆姫と呼ばれるラビリンスは一人の王子と出会っていく。 男性に抗体がない彼女からしたら彼の存在は型破りだった。 二人の課せられた契約の先には何が待っているのかーー

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Kabanata 1

第一話 出会い

私はこの国が好きだ。宮殿の中からその光景を見つめながら、そう思った。空からは三日月が顔を出し、黒い海を照らしている。現実離れした空間の中に沢山の想いが隠れている。私は瞼を閉じ、自然の音に耳を傾けながら、全ての感覚を楽しみ続けた。

2つの視線が同じ光景を見続けている。それは運命が引き起こす小さな物語だったのかもしれない。ミハエルは白い制服に身を包み、敵国の中に隠れている。2つの国は手を取り合い、彼らの想いを組んでいく。裏で動いている共鳴に気付く事なく、真っ直ぐと見つめている。

その先にいる私に言葉を投げかけるようにーー

第一話 出会い

バタバタと走る私は父から呼び出されて、周囲の瞳にどんなふうに見られているかを忘れてドアを突き破っていく。怒号にも似た音はその場にいた人達の興味を攫い、思った以上に目立つ結果となっていく。

「ラビリンス……お客人が来ているのだぞ? あれほど落ち着けと……」

私を呼ぶ父はいつもよりも緊張感を纏っている。いつもの父ならここまで怒る事はないのだが、今日に限っては違っていた。客人が来ていると言った父の顔色は真っ青になっている。もしかしてとんでもないタイミングで激突してしまったのかもしれない。

父は普段とは違い余所行きの服に着替えていた。小さな国と言っても一刻の王である。この国は西洋と呼ばれている文化が発達している。私達の中でその名称は全ての歴史を繋ぎ、未来を作る光の名称ーー貴族達は自分の存在価値を示すように、自分の立ち位置と作法を熟知していた。そんな周囲と比べると私は逆の方向性を突き進んでいる。最初は異国のサムライに憧れて剣を振り回したり、沢山の行動で父は頭を抱える結果となってきた。

私の父であり、国王でもあるゲリア・メルゲル。長い髪を一括りにしているがその風貌は力強さと優しさを併せ持っている。その父がここまで顔色を変えるなんて、相当の人物が来訪しているのだろう。ヒョコッと興味本位で父の後ろに姿を隠した来客に視線を注いでいくーー

私が揺れると反対方向に揺れる人物は「くくくっ」と笑いを堪えながら楽しんでいる様子。十回くらい繰り返している私達に気づいた父は、ため息を吐いた。

「ラリア王子……私の娘をからかうのは止めていただきたい」

「ああ。悪い、悪い。このお転婆姫が面白くて、つい」

王子と呼ばれる人は父の背中から顔を出し、私の前へと歩いてくる。その姿は周囲を圧倒させる美貌を持っている。呆気を取られた私の顔を見るたびに、笑いが堪えて仕方ないらしい。その様子をぼんやり見ていた私は、彼の笑い声に引き戻された。

どれだけ美男子でも、やっていい事と悪い事があるーー

本当は口にしてしまいたい。言いたい放題言ってすっきりしたい気持ちが膨れ上がっていく。それだけラリアは私にとって腹立つ相手だった。内心に抱えている感情が表情に浮き上がると、機嫌がよさそうに私の前に跪くと、宙ぶらりんな右手に手を添え、キスを落とした。

ちゅっと手の甲に広がる甘い香りを受け入れる事が出来ない。私は初めての経験にフリーズしながら全てを手放していった。男性に対しての抗体を持たない私にとって、これは刺激が強すぎる。姉達はこういう空間に慣れているのだが、私には無理だった。

「ラビリンス!!」

遠くから父の叫び声が聞こえてくる。目の前で微笑むラリアの姿が歪んで見えるのだが、気のせいだろうか。揺れる脳を庇うように思考がシャットダウンしていくとパタリと倒れてしまった。

「ラビリンス、君には刺激が強すぎたのかな?」

「……やりすぎですよ、ラリア様」

「ん? 私は挨拶をしただけだ。何がやりすぎなのだ? ミハエル」

「貴方って人は」

ラリアはいつも以上の怪しさを纏いながらミハエルとの会話を楽しんでいる。その腕には私がすっぽりと守られるように彼に抱かれていた。苦しそうな表情を浮かべながら、ブツブツと何かを言っている事に気づいたラリアは、聞き取りやすいように私の口元に耳を忍ばせていく。

「……あり、え」

「ん?」

「だーかーら……」

「ほう」

「ありえない、あの王子、ありえない」

「……」

拒絶された事実を突きつけられると、作っていた表情が一気に崩れていく。彼にとって今まで出会った事のないタイプのお転婆姫に興味を惹かれた瞬間だったーー

「面白い姫だな」

ゲリアが見ている事も忘れて、いつもの彼へと変化していく。その姿は王子と呼ぶには程遠い。美しい顔から溢れたのは悪魔の微笑みだった。彼の背中しか見ていないゲリアは気付く事なく、ラビリンスを受け止めた姿に逞しさを覚えた。彼になら娘を預ける事が出来ると確信を得る事が出来たのだから。

口調が変わっているラリアに忠告をするように咳を一つ出していくミハエルがいる。二人の間で決められている暗号はすぐにラリアに伝わると、何事もなかったように元の表情へと切り替えていった。くるりと振り向くとゲリアに救護室の場所を聞き、ラビリンスを運んでいく。

どんな事があっても側から離れる事のないミハエルをその場へ留まらせ、城の内部を観察するきっかけを掴めた事に安堵していた。ふと見下ろすと子供のように眠りこくるラビリンスの姿が視界に満ちていく。今まで感じた事のない感情と噂通りの姿に笑みが溢れてしまう。

「眠り姫みたいだなーー今だけは」

起きている時と眠っている時のギャップは天と地の差。自分の立場を目的に近づいてくる女性は沢山存在した。しかしラビリンスは彼女達とは違う生物。日常に飽きていたラリアはこの出会いを心の中で噛み締めながら、歩いていく。

風が悪戯をするーーふんわり香るのははちみつの匂いだった。

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第一話 出会い
私はこの国が好きだ。宮殿の中からその光景を見つめながら、そう思った。空からは三日月が顔を出し、黒い海を照らしている。現実離れした空間の中に沢山の想いが隠れている。私は瞼を閉じ、自然の音に耳を傾けながら、全ての感覚を楽しみ続けた。 2つの視線が同じ光景を見続けている。それは運命が引き起こす小さな物語だったのかもしれない。ミハエルは白い制服に身を包み、敵国の中に隠れている。2つの国は手を取り合い、彼らの想いを組んでいく。裏で動いている共鳴に気付く事なく、真っ直ぐと見つめている。 その先にいる私に言葉を投げかけるようにーー 第一話 出会い バタバタと走る私は父から呼び出されて、周囲の瞳にどんなふうに見られているかを忘れてドアを突き破っていく。怒号にも似た音はその場にいた人達の興味を攫い、思った以上に目立つ結果となっていく。 「ラビリンス……お客人が来ているのだぞ? あれほど落ち着けと……」 私を呼ぶ父はいつもよりも緊張感を纏っている。いつもの父ならここまで怒る事はないのだが、今日に限っては違っていた。客人が来ていると言った父の顔色は真っ青になっている。もしかしてとんでもないタイミングで激突してしまったのかもしれない。 父は普段とは違い余所行きの服に着替えていた。小さな国と言っても一刻の王である。この国は西洋と呼ばれている文化が発達している。私達の中でその名称は全ての歴史を繋ぎ、未来を作る光の名称ーー貴族達は自分の存在価値を示すように、自分の立ち位置と作法を熟知していた。そんな周囲と比べると私は逆の方向性を突き進んでいる。最初は異国のサムライに憧れて剣を振り回したり、沢山の行動で父は頭を抱える結果となってきた。 私の父であり、国王でもあるゲリア・メルゲル。長い髪を一括りにしているがその風貌は力強さと優しさを併せ持っている。その父がここまで顔色を変えるなんて、相当の人物が来訪しているのだろう。ヒョコッと興味本位で父の後ろに姿を隠した来客に視線を注いでいくーー 私が揺れると反対方向に揺れる人物は「くくくっ」と笑いを堪えながら楽しんでいる様子。十回くらい繰り返している私達に気づいた父は、ため息を吐いた。 「ラリア王子……私の娘をからかうのは止めていただきたい」 「ああ。悪い、悪い。このお転婆姫が面白くて、つい」 王子と呼ばれる
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第二話 相好の戦乙女
ソッと体を労るようにラビリンスをベッドへと沈ませていく。この場所は他と違って洗礼されている雰囲気があった。救護室といってもそれは周囲がそう言っているだけに過ぎない。通常なら宮殿の中に救護室がある事は珍しかった。ここに運ばれてくる患者達の看護を行っている人々は修道院が排出している。その役目を全うする為に慈善活動の一つとして宮殿に救護室なるものを作ったのだ。専門的な医者はここにはいない。ラビリンスは第四王女だ。その立場に見合った医者でしか診察出来ないのは当たり前だった。王族には王族専属の医者がいる。何かある時は王からの呼び出しでこの宮殿に入るのが殆どだった。しかし今回は少し特殊。ラリアからしたら挨拶をした程度の事なのだが、ラビリンスからしたら意識を飛ばす程の衝撃を受けてしまった。その様子を見ていたゲリアは医者を呼ぶまでもないと判断し、救護室へ連れていく事を了承してくれた経緯がある。「ラビリンス様……一体どうされたのですか」眠り続けているラビリンスを見た修道女のミミコットは声を荒げ、顔を苦痛に歪ませる。王女がここに来る事は滅多としてない。彼女からしたらいつも通りの日常を過ごしていた所にポンと王女が運び込まれたのだ。当然と言えば当然だろう。「彼女は戦陣として出る事が多いですからね。疲れが溜まっていたのでしょう」ラリアは咄嗟に思いついた言い訳を事実のように話していく。彼の口から適当な事が出ている事に気付けないミミコットは「成る程」と納得した姿を見せる。ラビリンスがこうなった本当の経緯を知られるのはあまり良くないと感じたようだった。寝顔を見ているラリアの姿を見て、少し安心したように視線を向けた。二人の姿はミミコットから見ると夫婦のように見えて仕方ない。16の年の二人を見守りながら、自分の今出来る事を淡々とこなしていく。洗面ボウルを手にラビリンスの元へとやってきたミミコットはラリアに気を使わせないように頬笑みで語る。その姿はまるで聖母のように輝いていた。どんな立場の相手にも同じように微笑みを零す事で安心感と安定感を作り出していく。窓から溢れる太陽の光も相まって、彼女の背中に天使がいるように見えた気がした。濡れた布をラビリンスの額に当てながらゆっくりと顔を拭いていく。ミミコットはどんな場面でも対処出来るように丁寧に作られている絹糸で出来た布を使用した。肌を傷つけな
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