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第400話
Pinakabagong kabanata
永遠の毒薬 第644話
小林は胸がギュッと締めつけられるような感覚に襲われた。まずい......また晴嵐様が......怒っているのは明らかだった。でも、凌央様も引かない。本当に、親子って似るものね......凌央に襟元をぐいっと掴まれた晴嵐は、首がきつく絞められ、息がだんだん苦しくなっていった。顔が青紫に変わり、目の焦点も合わなくなってくる。......息、できない......このまま死ぬのかもしれない。そんな思いが頭の片隅にちらつく。助けてって言いたい。けど、お願いしても、どうせムダだよね......それでも、頭の中にはママの顔が浮かんでいた。ママ、泣いちゃう......そう思うと、ちょっとだけ苦しさが和らいだ気がした。小林はすぐ後ろで、一部始終を見ていた。お願い......晴嵐様を......殺さないで......でも、自分が口を挟んだら、もっと怒らせてしまう。それだけは避けたい。だから言えない。ただ、祈ることしか、できなかった。幸いにも、目的地まではそれほど遠くなかった。凌央は無言のまま晴嵐をソファに放り投げた。「......ゲホッ、ゲホッゲホッ！」息を取り戻そうと、晴嵐は必死に咳き込みながらも、顔を真っ赤にして身体を丸めていた。小林は慌てて台所へ向かい、コップに水を注いだ。そして、彼のそばにしゃがみ込んで、そっと水を差し出した。「晴嵐様......ちょっとだけでも、お水飲んで......」だけど、晴嵐は顔をそむけた。「いらない......持ってってよ......」声はかすれていたけれど、拒絶の意思ははっきりと感じられた。目の縁が真っ赤になっていて、今にも泣き出しそうだった。それでも、必死にこらえていた。凌央はそんな様子に目をくれることなく、璃音の手を引いてダイニングへと向かった。頑固なやつだな......ここまでされても、なお謝る素振りも見せないとは。どこまで耐えられるのか、見ものだな。しばらくして凌央の姿が見えなくなると、小林はそっとコップをテーブルに置いた。そして、晴嵐の小さな身体をやさしく抱きしめながら、静かに語りかける。「......晴嵐様、泣かないで......凌央様だって......あなたを傷つけたくてしてるわけじゃないと思い
永遠の毒薬 第643話
凌央は、眉をひそめた。目元がぴくりと動いて、その顔にはあからさまな不快感が滲み出る。......チッ、このガキ......反抗する気か。その一瞬、小林の心がヒヤリと凍った。やばい、怒ってる。あの顔は間違いない。晴嵐様、大丈夫かしら......また怒鳴られるかも。璃音も、パパの周りから漂う冷気に気づいたのか、そっとお兄ちゃんの手を握った。ぷにっとした手で、遠慮がちに。「お兄ちゃんの手......ぎゅってしたいの......」その声に、晴嵐は一瞬だけ戸惑ったような目を向ける。璃音の顔がふにゃっと笑っていて、胸が少しだけ痛くなる。......けど、ダメだ。そんな優しさ、信じたらまた裏切られるだけだ。彼は小さな手をそっと振り払って、きっぱりと言い放った。「僕、あんたたちと仲良くなんてないから。勝手にさわらないで」そして、そのまま凌央を見上げる。小さな顔は、ぐっと強張っていた。「凌央、あなたって、ほんとずるい。ママと僕の優しさを、都合よく利用してるだけじゃないか。もう、璃音にも優しくなんてしない。僕も、ママも」......夢みたいな毎日は、全部嘘だった。今まで見てきた優しさは、ぜんぶ作りものだったんだ。やっと気づいた。だから、悔しくてたまらなかった。信じてたぶん、裏切られたことが許せない。「お兄ちゃん、やだぁぁ！」璃音がわっと泣き出した。その場に座り込んで、肩を震わせながら泣いた。その姿を見て、晴嵐も胸が苦しくなった。目の奥が熱くて、思わず泣きそうになる。......でも、泣くわけにはいかない。ママが言ってた。外では、強くいなさい。じゃないと、弱さに漬け込まれる。凌央は、娘の泣き声に顔をしかめた。胸の奥が、ぎゅっと締めつけられるように痛む。璃音は、自分が守ってきた娘だ。しかも、病弱で。このまま泣き続けて体調が崩れたら、どうすんだ？「......晴嵐、お前......ふざけたこと言うんじゃねえ！璃音に謝れ！今すぐ！」声が響いた瞬間、場の空気が張りつめた。けれど、晴嵐は動じない。背筋をまっすぐに伸ばして、にっこり笑った。「僕、間違ったこと言ってないよ？なんで謝んなきゃいけないの？」その無邪気な笑顔に、凌央の血管がピクン
永遠の毒薬 第642話
乃亜は、山本の言葉にどこか曖昧な気配を感じた。胸の奥がざわつき、不安がじわじわと広がっていく。凌央が晴嵐を連れて行った。何のつもりなの？「あなた、凌央の秘書でしょ？行き先も知らないなんて、ふざけてるの？」声が自然と強くなっていた。心配と苛立ちが混ざって、喉を締め付ける。電話の向こうで、山本は数秒間沈黙した。そのまま、ため息一つだけ残して通話を切った。「......っ」突然の切断音に、乃亜の指先が震えた。社長の判断には、もう口を挟めない。あの人はきっと、久遠さんを取り戻したいんだろうけど......こんなやり方、逆効果にしかならないのに。四年経っても、あの人の頑固さは相変わらずだ。無音の空間に、乃亜の心はざわつく。沈黙が重くのしかかり、胸の奥が押しつぶされそうになる。彼女は空を見上げた。まぶたの裏に、晴嵐と過ごした日々が浮かんでは消えていく。絶対に、連れて行かせない。私の手で育てた子なのに！その場で携帯を取り出し、すぐに通報。さらに別の番号にかける。「至急、晴嵐の位置を特定して。データが揃い次第すぐ送って」「了解っす！姉さん、ちょっと待ってて！」通話を終えると同時に、乃亜は車に乗り込んだ。キーを回し、すぐにエンジンがかかる。怒りに満ちているのに、不思議と表情は静かだった。だが、走り出して間もなく携帯が鳴る。「姉さん、やばいです！晴嵐の位置、追えません！相手側、電波完全に遮断してきました！」乃亜の瞳が鋭く細められた。「......そう。わかった」今回の凌央、本気で消えるつもりだ。私の息子を、なんで勝手に連れて行くのよ。そんなの、許せるわけがない。「姉さん、自分でアクセスしてみる？」「やってみる」短く答え、アクセルを一気に踏み込んだ。タイヤのきしむ音が、怒りのように路面を切り裂く。乃亜の視線は、冷えた刃のように鋭く光っていた。やるならやってみなさいよ、凌央。私を壊すつもりなら、あなたもタダでは済まないから。その頃。ある孤島の庭。夕暮れの空の下、満開の桜が風に揺れている。まるで命を宿したように、花びらがそっと囁いていた。美しくて静かな、夢のような時間。けれど、晴嵐の表情は暗いままだ。項垂れたま
永遠の毒薬 第641話
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永遠の毒薬 第640話
彼女のうつ病はもう治っているはずなのに、どうして毎回、凌央と対峙する度に再発してしまうのだろう？彼女は、凌央とまた何度も接触すれば、命さえも危ないのではないかと恐れていた。凌央は唇をわずかに引き上げ、ゆっくりと言った。「俺たちには息子がいる。お前が会わないと言っても、そう簡単にはいかないんだ。乃亜、さっさと拓海と離婚して、早く俺の元に戻ってこい。さもなくば、拓海は今後一歩も動けなくなるぞ」その冷たい声には嘲笑が混じっていた。笑ってはいたが、その笑顔は目に届いていなかった。乃亜は冷徹な表情で言い返した。「そんなこと、あなたが裏でこっそりやってるのを男らしいと思ってるの？」彼女は以前から拓海の会社に対して、凌央が裏で手を回していたことを予想していた。今、彼が口にしたことを聞いて、怒りが込み上げてきた。凌央は、自分がすべてを支配しているとでも思っているのか、あまりにも傲慢だ！「俺が男かどうか、お前はもう分かってるだろう？」凌央は腹立たしさを感じ、乃亜に言った。「俺に触れるな、今すぐにでもお前に手を出すぞ！」彼が言ったその言葉には、乃亜が従わなければ、どんな手段を使うつもりなのかが感じ取れた。乃亜はじっと凌央を見つめてから、冷笑を浮かべ、「やってみなさい、凌央。あなたが本当に私をどうにかできるか、見ものだわ！」彼女は破産しても構わない。その後、彼女は背を向けて、エレベーターに乗り込んだ。凌央は乃亜の背中を見送りながら、その顔に浮かぶ怒りがだんだんと増していった。乃亜が車に乗り込み、すぐに携帯を取り出し、拓海に電話をかけた。「乃亜、どうした？」拓海の温かい声の中に、少しの疲れが滲んでいた。乃亜は少し心配そうに言った。「拓海、そっちの状況はどうなってる？」「大丈夫、心配ないよ」拓海は今、オフィスの窓から外を見ていた。門の前には、霊堂が設置され、家族が供養のために紙を燃やしていた。彼はすでに遺族と話をし、賠償金を払うことで話がついていた。しかし、遺族はそのお金を受け取らず、犯人を刑務所に送るべきだと言ってきた。ここまで来て、最初からすべてが誰かの仕組んだことだと、気づかないわけがなかった。これ以上は進展しないため、別の方法を考えなければならなかった。拓海は乃亜と結婚する約束をしていたが
永遠の毒薬 第639話
「先生！」叫び声が響いた後、乃亜は何も考えず、そのまま男の前に駆け寄った。「私は乃亜です。先生、覚えていますか？」声はわずかに震えていた。先生が生きている！信じられない。でも、目の前の顔は間違いなく先生だ。彼女は絶対に間違えない。男は冷たい視線を乃亜に向け、きつい声で言った。「妻が意識不明なんだ。邪魔をするな、万が一何かあったら、責任取れるのか？」乃亜は再び「先生......」と呼びかけた。心臓が激しく鼓動し、目の前の男の顔をじっと見つめる。その顔を、心の中に刻み込むかのように。彼女は確信していた。この男の顔、深い目元、その輪郭のはっきりとした顔は、間違いなくかつて彼女が最も尊敬していた先生、加藤悠だ。記憶が一気に蘇る。あの日、空は灰色で、まるで神様もその悲劇を悼んでいるようだった。人々の間に立ちながら、先生の体が高層ビルから落ちるのを見た。糸が切れた風船のように、力なく地面に落ちたその姿。救急車の音、群衆のざわめき、そして自分の泣き声が重なり合い、胸が痛む交響曲を奏でた。あの日......彼女は先生の遺体が白布で覆われ、葬儀車に運ばれるのを見た。二度と会えないと思った。あの高さから落ちたら、生きているはずがない。でも、目の前にいるこの男は、間違いなく先生だ。乃亜の頭の中で、疑問が次々と浮かび、ひとつひとつが鋭い刃となって思考を切り裂いていく。彼女は目眩を覚え、世界が色を失っていくように感じた。目の前の男......その顔、気配、目の輝き、どれも先生そのものだ。もし先生が死んでいたなら、目の前の男は一体誰なのか？これは偶然か、それとも何か不思議なことが起きているのか？もしこの男が本当に先生だとしたら、あの日死んだのは誰だったのか？考えれば考えるほど、頭の中が混乱し、彼女はその答えを見つけられなかった。乃亜は男に近づこうとしたが、男は急ぎ足で彼女の前を通り過ぎ、急いで何かをしている様子だった。乃亜はその背中を見送りながら、頭の中にますます疑問が渦巻いていった。その男はICUに入っていった。乃亜はその姿を追い、心の中で解けない疑問を感じていた。凌央は乃亜の声を耳にし、すぐに電話を切って振り向いた。廊下を越えて、彼女の姿が目に入る。灯りの下で、彼
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