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第413話
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永遠の毒薬 第418話
紗希は乃亜の背中を見つめ、深いため息をついた。双子を妊娠していたのに、一人を失った。この数年間、乃亜がどんな日々を送ってきたのか、考えただけで胸が痛む。本当に、心が痛い。乃亜は上の階へ向かい、晴嵐の部屋のドアをそっと開けた。部屋のカーペットの上に小さな人物が座り、その前にはパソコンが置かれている。画面にはびっしりとコードが並んでいた。乃亜は部屋に入らず、軽くドアをノックした。ノックの音を聞いた晴嵐は、素早くパソコンを閉じ、振り返ってにっこりと笑った。「ママ、何か用？」乃亜は彼が少し慌てた様子を見て、指摘するのはやめた。「咲良おばさんがご飯に誘ってくれたから、準備して出かけよう」乃亜はパソコンの上をちらりと見た。この子、今何をしていたんだろう？晴嵐はすぐに立ち上がり、飛んで乃亜の元に駆け寄った。彼女の腕に飛び込むと、顔を上げて、キラキラと輝く大きな目を見つめて言った。「ママ、僕、ママのことすごく大好き！」乃亜は彼の頭を撫でながら、優しく微笑んだ。「ママが言ったでしょ？他の人を困らせることをしなければ、ママは怒らないよ」この小さな子は、いつもこんな風に甘えてきて、ついつい嬉しくなってしまう。「安心して、ママ。僕、絶対にそんなことしないよ！」晴嵐は胸を張って言った。顔も真剣だ。彼は時々、悪い人にはちょっとだけお仕置きするだけだ！「信じてるよ！」乃亜はにっこりと微笑んだ。「さあ、行こう！外でご飯を食べよう！」どんな時でも、乃亜は無条件に息子を信じている。「ママ、最高！」晴嵐は乃亜の足にしがみつき、小さな顔をくっつけて、愛おしく擦り寄った。その仕草はとても可愛らしい。乃亜の心はその愛らしさに溶けそうになり、彼を優しく抱き上げた。晴嵐はすぐに彼女の首に腕を回し、顔をぐっと近づけ、彼女の頬に軽くキスをした。「ママ、僕をママの息子にしてくれてありがとう！」彼の友達のママたちはすぐに怒ったり、叱ったりするけど、ママは一度もそんなことをしない。だから、彼は自分のママがこんなに優しくて幸せだと感じている。それは、神様からの贈り物だと彼は思っている。乃亜の目に涙が浮かび、強く抱きしめた。「こんなに愛してくれてありがとう！」もし、娘が生きていたら......どれだけよかっただろう。晴嵐
永遠の毒薬 第417話
「乃亜姉さん、さっき裁判が終わったから、急いで電話したの。もう家に帰った？」咲良の声は軽快だった。「うん、もう帰ったよ。昼食、一緒にどう？」乃亜は尋ねた。あの時、海に流されたという偽の死亡を作り上げた後、最初に連絡したのは咲良だった。美咲の案件では、乃亜は直接出廷できなかったから、咲良にお願いした。咲良は三年間、ずっと彼女をサポートしてくれた。乃亜は咲良の性格をよく知っているから、絶対に裏切ることはないと思っていた。その結果、咲良はその裁判で大きな成功を収め、桜華市で一躍有名になった。その後、乃亜と紗希が開いた法律事務所に咲良も参加し、彼女の努力で事務所は順調に成長した。今や咲良は彼女たちのパートナーとなり、年収は数千万に達している。「桜華市に新しく人気のレストランがオープンしたの。たくさんの人が行ってるし、デザートがすごく美味しいんだって。晴嵐、甘いもの好きじゃない？一緒に行ってみたらどう？」咲良は明るく言った。咲良は今や地位もお金も手に入れ、乃亜には感謝している。だからこそ、ずっと努力し続けている。乃亜が帰ってきたこと、本当に嬉しかった。「いいね！」乃亜は答えた。乃亜は食べ物にはこだわりがないけれど、晴嵐は食べ物にうるさく、特に甘いものが大好きだ。乃亜は昔、凌央も甘いものが好きだったことを思い出した。恥ずかしいのか、彼がこっそり食べていたのを乃亜は知っていた。でも、決してそれを言い出すことはなかった。晴嵐が凌央に似ていることは分かっていたけど、食べ物の好みまで似ているのは本当に驚きだ。「じゃあ、私は個室を予約するよ。準備ができたら来てね、急がなくていいから」「うん！」乃亜はそう言って電話を切った。紗希が彼女を見て言った。「咲良？」乃亜は頷いた。紗希は少し不満そうに鼻を鳴らした。「あの時、私に何も言わずに隠れて連絡していたのね。私、親友じゃなくなったってこと？」実は、この件について乃亜は以前、説明していた。彼女自身も分かっていた。もしその時、生きていることを教えてしまったら、絶対に凌央の前で演技できなかっただろう。それでも、今でも心の中で少し辛さを感じている。乃亜が追い詰められていた時、紗希は何もできなかったことを、どうしても悔いていた。「その時、私はあなたの演技で凌央
永遠の毒薬 第416話
「パパ、愛してるよ！」小さな女の子が口をとがらせ、ぷくぷくした小さな手を頭の上に上げて、ハートを作って見せる。その姿がとても可愛らしい。「パパも璃音を一番愛してるよ！」凌央は優しく微笑んで答えた。以前、乃亜は凌央を冷血だと非難し、どうやって愛すべきか分からないと言っていた。璃音が生まれてから、凌央は少しずつ愛し方を学んでいる。もし来世があるなら、必ず乃亜を大切に愛するつもりだ。乃亜を思い出すたび、胸が激しく痛む。その痛みで顔色が青ざめ、額に汗がにじんだ。璃音は彼の辛そうな様子を見て、心配そうに泣き出した。「パパ、病気なの？」山本は彼女の言葉を聞いてすぐに後ろのミラーを確認し、凌央の異変に気づいた。慌てて車のスピードを上げ、病院に向かう。雲間荘晴嵐はキッチンでコーヒーを入れていた。乃亜と紗希はリビングで話していた。普段からビデオ通話や電話でよく話しているが、実際に会うのは三年ぶり。話したいことがたくさんあった。晴嵐がコーヒーを作ってリビングに運ぶと、二人が話しているのを見て、軽く挨拶をしてから荷物を持って二階に向かう。二階の寝室は自分で選んだ部屋で、主寝室から少し離れた場所にある。秘密を隠すにはぴったりの場所だ。紗希は彼の後ろ姿を見送ると、乃亜に小声で尋ねた。「晴嵐、ほんとにプログラミングできるの？」普通の子どもは、三歳で自分の気持ちをうまく表現できるわけがない。でも、晴嵐は身の回りの事を自分でできるだけでなく、パソコンも上手に扱う。こんな天才を見るのは初めてだった。「啓太が教えてくれたんだ。今のハッカー技術はすごいから」乃亜は息子を話すとき、誇らしげな顔をして言った。「晴嵐はお金の管理も得意で、小さな金庫にたくさんお金が入ってるのよ」紗希は驚きのあまり、目を大きく見開いた。「そんなにすごいの？」乃亜が親友でなければ、信じられなかっただろう。こんなに優れた子どもがいるなんて！「晴嵐、ゲームの配信もしてるの。フォロワーが百万を超える、有名なゲーム配信者よ！」乃亜は、自分の息子がどれだけすごいかを改めて実感していた。晴嵐は凌央の知能をしっかりと受け継いでいる。「今、心配なのは、晴嵐が凌央みたいに冷たい性格にならないかってこと」「信じられない......まるでファンタジーみたい！」紗希は
永遠の毒薬 第415話
「社長みたいな人ですね！」山本は言った。「璃音様は社長とそっくりだ」凌央は眉をひそめた。みんなは璃音が自分に似ていると言うけれど、彼はどうしても璃音の目が乃亜に似ている気がしてならなかった。清らかで明るい目は、まるで空の星のようだ。「璃音はパパに似てるよね、きれい！」おもちゃで遊んでいる璃音が顔を上げ、凌央を見つめて花のように笑った。彼女の知っている形容詞は少なく、でも「きれい」が一番の褒め言葉だった。凌央は微笑みながら言った。「うん、君はパパに似ている」「何の話してたの？そんなに楽しそう」恵美が車のドアの前に立ち、優しく微笑んだ。「何でもない」凌央は微笑みを隠し、冷淡に言った。「母親が君に会いたがってる。運転手に送ってもらうから、私は璃音を会社に連れて行く」「私も一緒に行っていい？」恵美は心が急に焦り、慌てて言った。洗面所で璃音に手を挙げてしまったことを後悔していた。もし璃音が凌央に話したらどうしよう......。凌央は璃音を見て、低い声で言った。「運転手に母親のところに送らせて」恵美は歯を食いしばり、声をかけた。「璃音」璃音は顔を上げ、無邪気な大きな目で彼女を見つめた。「ママ、呼んだ？」彼女はママが嫌いだった。でもじいちゃんが言った。「嫌いな人とも顔を合わせずに済ませられるわけじゃない。表面では友達を演じ、裏では警戒し続ければいい」だから彼女はいつもママと友達でいるふりをしていた。「聞き間違えたんだよ、遊んでてね！」凌央は優しく言った。恵美は心の中で怒りが湧き上がった。凌央は彼女の最後の希望も断ち切った。「はい」璃音は横に置いてあった小さなウサギのぬいぐるみを抱きしめ、少し考えてから言った。「そのお兄ちゃん、名前なんて言ったっけ？」凌央は手を伸ばして車のドアを閉め、「会社に行こう」と指示した。恵美は仕方なく二歩後ろに下がり、車が遠くに行くのを見送った。「恵美さん、どうぞお乗りください」運転手の声が聞こえ、恵美は思考を戻し、車に乗り込んだ。「一度家に戻りたい」恵美は言った。「凌央様が必ず夫人のところに送れと言われました」運転手は冷静に答えた。恵美はそれが凌央の意図だと気づいた。彼女は監視されている。どこにも行けない。仕方なく、彼女は真子を訪ねることにした
永遠の毒薬 第414話
恵美は凌央の顔をじっと見つめた。心の中で、細かい針が刺されるような痛みを感じ、胸の中の不安がどんどん絡みついて、息が詰まるようだった。凌央の深い瞳の中に、少しでも感情の揺れを探そうとしたが、見えたのはただの静かな湖面。まるで波一つない平穏さで、彼が心の奥底で隠しているものを全く感じ取れなかった。恵美は心の中で不安を抱えつつも、その思いを口に出すことはできなかった。まさか......凌央、何か気づいてしまったのかしら？「パパ、どうして黙ってるの？」と、突然、娘の柔らかな声が二人の間に響いた。凌央は一瞬、娘の顔を見下ろした。その瞬間、なぜか娘の顔が乃亜に似ているような気がして、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。それは......錯覚だろうか？恵美の頭の中を、いくつもの疑念が交錯した。だが、恵美は何も言えなかった。「パパ、どうしてそんなに見てるの？」と、小さな体が凌央に抱かれながら、璃音は柔らかな声で言った。凌央は思考を切り替え、微笑みながら言った。「璃音は可愛いから、パパはつい見ちゃうんだ」璃音は大きな瞳をぱちぱちさせて、「ママも綺麗だよね。パパ、どうしてママを見ないの？」と問い返した。恵美は恥ずかしそうに凌央を見つめた。この三年、恵美はずっと凌央に一度でも自分を見てもらいたかった。だが、凌央の目はいつも璃音に向けられている。それが、嫉妬の感情を生んでいた。凌央は恵美の目を避けるようにし、璃音に微笑みかけて言った。「パパの目は小さいから、璃音しか見えないんだ」恵美は無意識に拳を握りしめた。それが分かっていても、やはり少し痛かった。「パパ、嘘だ！あなたの目は大きいよ！」と、璃音は手を伸ばして彼の目を覆った。凌央はその手を払うことなく、微笑んで心の中で幸せを感じていた。璃音は彼の救いだった。もし璃音がいなければ、今の凌央はこの世にいなかったかもしれない。「璃音、やめなさい。手を離して、パパが道を見えなくなって転ぶかもしれないよ」と、恵美は優しく注意した。璃音は慌てて手を引っ込め、怖がった様子で言った。「ママ、怒らないで。私、悪かったよ！」凌央はその様子を見て眉をひそめ、低い声で言った。「彼女はまだ子供だ。少しは自由にさせてやれ。過度に厳しくすることはない」その声には少
永遠の毒薬 第413話
拓海の心は一瞬、慌てて、すぐに口を開こうとした。しかし、別の声が先に聞こえてきた。「凌央、忙しいなら迎えに来なくていいって言ったでしょ？」拓海は視線を上げ、その声の主を見た。恵美だ。さっき、晴嵐に手を出した女性だ。まさか、晴嵐の身元を知っているから、手を出したのだろうか？もしそうなら、彼は晴嵐を守らなければならない。絶対に、あの女性に傷つけられてはならない。恵美も拓海に気づき、驚きの表情を浮かべた。彼女は以前、拓海が病気だと調べて知っていた。拓海が失踪してから三年、彼女は彼がすでに死んだと思っていた。こんな時に、突然目の前に現れるなんて、予想外だった。「おじさん、さっきの小さなウサギのぬいぐるみ、返してくれませんか？」璃音は拓海が持っているぬいぐるみが歪んでいるのを見て、心配そうに声をかけた。拓海はぬいぐるみを整えてから、璃音に返した。「好きなものは大切にしなきゃいけない。傷をつけないようにね、わかるか？」彼は凌央が晴嵐を調べるかもしれないと心配していたが、桜華市に戻ると決めたからには、いつかは会うことになる。落ち着いて、自然に受け入れるしかない。三年を経て、拓海は今日の幸せをどうにか掴む方法を学んだ。未来については、もう考えない。璃音はぬいぐるみを抱きしめてうなずき、「わかってるよ！」と答えた。拓海は手を振って別れを告げようとしたが、その瞬間、ふと恵美の方を見てしまった。恵美はその場に立っていて、精緻な化粧をした顔には何の感情も見えなかったが、その深い瞳の中には毒と計算が渦巻いているように見えた。その突然の視線の交差は、まるで二つの鋭い刃が空気の中で音もなくぶつかり合うような感覚を与え、目に見えない波紋を引き起こした。拓海は恵美の瞳と交わった瞬間、胸が一瞬で締め付けられるような感覚に襲われ、驚くべき考えが頭を駆け巡った。璃音という美しい少女が、果たして本当に恵美の実の娘なのか？その考えが浮かんだ瞬間、まるで野火が広がるように、抑えきれなくなった。そして、背中に寒気を感じ、周囲の空気が凝り固まったように感じた。しかし、すぐに拓海はその不適切な疑念を心の中に深くしまい込んだ。彼はよく知っている。確かな証拠がなければ、どんな無根拠な疑いも無実の者を傷つけることになる。
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