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第207話

Author: 雨の若君
そちらに手があるというのなら、こちらにも打つ手はある。

素羽の通報によって警察署へと連行された司野だったが、彼はすぐさま報復に出た。警察を素羽の許へと向かわせたのだ。

ドアスコープを覗き込んだ素羽の目に、管理人の背後に続く二人の制服警官の姿が映った。

てっきり、連行された司野の処遇について報告に来たのだと素羽は思った。だが、まさか自分が逮捕される側になろうとは。窃盗容疑――それが、彼女に突きつけられた罪状だった。

あの司野が、家宝のアクセサリーを盗んだなどという偽りの罪で自分を警察に突き出すとは、素羽には想像もつかないことだった。

司野は自らの身分を明かすことで、その訴えに重みを持たせた。彼が名門・須藤家の人間であると知るや、警察の動きは俄かに素早くなった。

司野はドアの陰から姿を現すと、臆面もなく素羽の領域へと足を踏み入れた。そして振り返り、玄関前に立つ警察たちへ申し訳なさそうな表情を向ける。

「夫婦喧嘩ごときで、お時間を取らせてしまい申し訳ありません」

夫婦間のいざこざと判断した警察は、形式的な聴取でその場を収めると、早々に引き上げていった。

素羽は両の拳を固く握りしめ、煮え繰り返る思いで男を睨みつけた。

「司野……なんて恥知らずな人なの!」

だが司野は、彼女の怒りなどまるで意に介さず、氷のような声で言い放つ。「荷物をまとめろ。俺と家に帰るんだ」

素羽はくるりと背を向けて部屋へ戻ると、やがてスーツケースを一つ手に提げて現れた。そして、それを司野の眼前に突きつける。

「あなたの物はこれで全てよ。さあ、それを持って私の家から出て行って!」

スーツケースに詰め込まれていたのは、かつて景苑の別荘から素羽が持ち出した宝飾品のすべてだった。換金すら叶わぬのであれば、持っていても意味がない。

司野はスーツケースから素羽へと視線を移し、言った。「お前が妙な気を起こさなければ、これらはすべてお前のものだ」

素羽は唇の端を歪め、嘲るように言い返す。「司野、私は物乞いじゃないのよ」

彼の気まぐれな施しなど、こちらから願い下げだ。たとえ本物の物乞いであっても、矜持というものはある。

まるで仇敵にでも向かうかのような素羽の剣幕に、司野は心底うんざりしたように深くため息をついた。「いい加減、駄々をこねるのはやめてくれないか」

この男は、いつもこうだった
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